遭難事故:低い山でも注意 登山ブームで昨年過去最多
毎日新聞 2014年11月03日 17時13分(最終更新 11月03日 19時09分)
紅葉シーズンを迎え各地の山が行楽客でにぎわっているが、気をつけなければいけないのが遭難事故だ。中高年や若い女性の登山ブームを背景に増えており警察庁の統計では、昨年は過去最多だった。実際に登ってみると標高が低い山でも危険が潜んでいることが分かる。【石井尚】
9月9日、福岡県みやま市の男性(74)が福岡、佐賀両県境にある九千部(くせんぶ)山(847メートル)で行方不明になった。九千部山は展望台やベンチのある山頂まで車で行ける。男性も車で妻と訪れて山頂に向かい、付近を散策中に行方が分からなくなった。現在も安否は確認されていない。
標高1000メートルに満たない山で何があったのか。登って確かめることにした。ほぼ初心者のため、佐賀市で登山教室などを開く環境省委嘱自然公園指導員の池田浩伸さん(59)に助言を受けた。男性と同様、車で向かって山頂に登ることにし、その後、標高約400メートル付近の登山口まで下りて別の山に登る計画を立てた。
装備は雨具、食料、水、ヘッドランプ、地図など。雨具は遭難した際、体温を保つ役目も果たす。水は「体重×行動時間×5ミリリットル」が必要な分量とされる。万一に備え、1リットル多めにして3リットル持参した。
駐車場から展望台まではほぼ一本道だが、山頂一帯は広く下りるルートは複数あり、落ち葉が積もって見えにくい。下山途中、分岐点に案内板があったが、表示されていない道もあり少し戸惑った。沢が数カ所あり地図に記された谷がどれか分からず、自分の位置を確認しづらい場所もあった。
それでも登山客が多いためか登山道は判別しやすく、事前の計画でルートを確認していたこともあり、順調に登山口にたどり着いた。ところが、別の山へのルートは同じような道が何本もあって見つけられず、結局、山頂に引き返した。
山頂で会った福岡県筑前町の60代の女性は登山歴約10年だが「落石で道が変わっていることもあり、迂回(うかい)路を進んだら道がなくなったこともある」と話していた。
警察庁によると、昨年の山岳遭難は2172件(前年比184件増)、遭難者が2713人(前年比248人増)で、統計が残る1961年以降で最多となった。中高年の登山者の増加が一因とみられ、60歳以上が遭難者の1258人で半数近くを占めた。