訪日中国人旅行客:ニーズ多様 人気は「個人旅行」

毎日新聞 2014年11月03日 11時04分(最終更新 11月03日 11時35分)

博多港に入港したクルーズ船から日本に降り立つ中国人旅行者たち=2014年9月21日、隅俊之撮影
博多港に入港したクルーズ船から日本に降り立つ中国人旅行者たち=2014年9月21日、隅俊之撮影
在上海日本総領事館が発給した観光ビザ
在上海日本総領事館が発給した観光ビザ

 中国人の訪日旅行客数がV字回復した。中国からの大型クルーズ船の寄港の増加が背景にある。乗客は団体観光客が多いが、最近人気が高まっているのが自由な旅程が組める「個人観光」だ。こうした客をいかに取り込むかは日本の「地域再生」の鍵にもなりそうだ。【隅俊之】

 ◇大型船で免税店へ 7万〜8万円購入

 日中関係の悪化で、クルーズ船の寄港は一時ぱったりと途絶えた。だが、昨年夏ごろから復活し、今年7月は1カ月で17便が寄港した。こうしたクルーズ船の一つ「コスタ・ビクトリア」が福岡・博多港に寄港した日の夕方、ショッピング施設「キャナルシティ博多」の大型免税店「ラオックス」には中国語が飛び交った。炊飯器の品定めをする老夫婦に中国語ができるスタッフが売り込む。日本製の紙オムツや粉ミルクも人気だ。6カ月の息子を持つ広東省の李亜娟(り・あえん)さんは粉ミルク1箱を買い、「息子には良いものを与えたい」と笑顔を見せた。

 クルーズ船は航空便に比べて重量制限が緩いこともあり、買い物目的の客に人気だ。ラオックス西日本事業部の飯野信和部長は「1人で7万〜8万円分は買うので、(クルーズ船入港の日は)売り上げが通常の10倍以上」と話した。

 ◇がん検査と温泉のセット1泊14万円

 「日本3大美肌の湯」の一つに選ばれる佐賀県・嬉野温泉。温泉街の老舗旅館「和多屋別荘」を訪ねると、山東省から来た会社オーナーの張徳忠さん(50)ら男性3人組が、畳の個室で佐賀牛のしゃぶしゃぶや温泉湯豆腐に舌鼓を打っていた。「今回は健康診断も受けようと思って。日本は医師のレベルも高いし、信頼できる」

 和多屋別荘は今年、長崎県内の病院と提携し、中国の富裕層を狙った宿泊と健康診断をセットにしたプランを売り出した。梅木一也営業部長は「富裕層をリピート客にしたい」と話す。全身のがん検査ができるPET(陽電子放射断層撮影)−CT(コンピューター断層撮影)検査は、宿泊費を合わせると最低でも1泊で約14万円。だが、張さんは「必要なものなら、いくらでもお金は出す」と笑った。

 ◇個人ビザ発給 うなぎ登り

最新写真特集