脱「バーバリー」依存、浮沈かかる三陽商会
東洋経済オンライン 11月3日(月)6時0分配信
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| 発表会ではホテル「ザ・リッツ・カールトン・東京」の中に”売場”をつくった |
10月中旬に三陽商会が行った「マッキントッシュロンドン」の発表会は異例づくしだった。同社としては初のホテル開催。全国の百貨店から通常の2倍以上の900人が詰めかけ、売り場担当者に加え、各店の店長や社長までもが足を運んだ。
バーバリーを失う三陽商会の向こう5年の収益計画はこちら
それもそのはず。マッキントッシュは、「『バーバリー』の売り場に取って代わるブランド」(杉浦昌彦社長)で、三陽の命運を握る新ブランドだからだ。
■ 16年度は20億円の営業赤字
1970年からライセンス展開してきた「バーバリーロンドン」は、全国の百貨店に300の売り場を持つ屋台骨のブランドだった。だが今年5月、2015年6月末でのライセンス契約終了が決まった。これを受けた向こう5年間の業績見通しによると、バーバリーの秋冬商品販売がなくなる15年度に営業利益は急減。春夏商品もなくなる16年度は20億円の営業赤字に転落する見込みだ。
その後はV字回復を想定しており、18年度には今期と同レベルの利益水準を描く。復活の立役者と位置づけるのが、マッキントッシュ。バーバリー売り場の7割をこのブランドで継承し、15年半ばから3年半で年商200億円と、同社最大のブランドに育成する方針だ。
マッキントッシュは防水性に優れたゴム引きコートで著名な英国ブランド。三陽は07年から価格を抑えたセカンドライン(普及版)「マッキントッシュフィロソフィー」をライセンス展開してきた。ここに高価格帯の「マッキントッシュロンドン」を加える。
コートをメインとしたブランドのため、バーバリーコートで使用してきた縫製工場など既存設備も活用できる。マッキントッシュの商標権を持つ八木通商は「(三陽は)全国の客層を広く知っており、ものづくりへの信用がある」と期待を寄せる。
三陽は「今までにない規模の投資をする」(佐久間睦専務執行役員)と広告宣伝や店舗投資を積極的に行う構えだ。今回のライセンス期間は19年末までの5年間。アパレルのライセンス期間としては標準的だが、バーバリーの15年間、基幹ブランドの一つ「ポール・スチュアート」の10年間と比べると、長いと言えない。長期的な関係を築くうえでも、予定する200店の売り場確保と売り上げの拡大は、当然必要になる。
■ 二兎を追う難しい舵取り
ただ、バーバリーの抜けた穴をマッキントッシュだけで補うのは難しく、ほかのブランド育成も重要になる。基幹の一つに位置づけるオリジナルブランドの「エポカ」は、イタリア人デザイナーを招き、世界ブランド化へ舵を切った。セカンドラインでファッションビルなど百貨店外での展開にも力を入れている。
そこで問われるのが各ブランドのバランスの取れた育成だ。三陽にとって「店舗内装などこれまでバーバリーに優先的に投資を回してきた。その分、他ブランドの育成が遅れた面は否めない」(同社幹部)という反省もある。マッキントッシュを主軸に回復を図り、独自ブランドを強化する。この二兎を追う難しい舵取りを今後迫られる。
(「週刊東洋経済」2014年10月25日号<10月20日発売>掲載の「核心リポート04」を転載)
鈴木 良英
最終更新:11月3日(月)10時30分
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