女性の活躍推進法案が、衆院で審議入りした。「すべての女性が輝く」とうたう安倍内閣、肝いりの法案だが、この程度の施策で女性全体の生活の底上げにつながるとは思えない。
世界百四十二カ国中、日本は百四位−。世界経済フォーラム(WEF)が先月末、公表した男女格差の少なさを指標化し、ランキングした報告による日本の順位には驚くべきものがある。
企業の管理職に占める女性の割合が低いことや、女性国会議員が少ないことが主な要因だ。
女性活躍推進法案は、大企業(従業員三百人超)に、女性の採用比率や管理職に占める割合などの数値目標と、行動計画の策定、公表を義務付けた。だが、企業が実情に応じて目標を設定できるほか、何を公表するかも自由だ。
管理職に占める女性の割合は11%(二〇一三年)と、米国の43%、フランスの39%といった欧米諸国に比べて極端に低い。ノルウェーは、大企業の役員の女性比率を40%以上にするよう法律で定め、厳しい罰則を設けている。
罰則もない同法で「指導的地位にある女性を二〇年までに三割に増やす」という政府目標が達成できるとは到底、思えない。
女性を経済成長のための労働力とみる視点にも違和感があるが、働くという面からは、長時間労働が社会参加を阻む最大の要因だ。
週五十時間以上働いている労働者の割合は日本は30%を超え、諸外国の中で突出して高い。フランスやノルウェーはわずか数%だ。
このため、女性の約六割が第一子出産を機に退職している。子育てとの両立が困難なためだ。企業側が降格や退職勧奨するなどの「マタニティーハラスメント」で辞める人もいるだろう。そして再就職の多くが、パートなどの非正規雇用となる。働く女性の半数以上が非正規労働者だ。
にもかかわらず、安倍内閣は、「働き過ぎ」を助長すると懸念される「残業代ゼロ」制度を導入する方針だ。雇用が不安定な派遣労働者を増やしかねない労働者派遣法改正案の今国会での成立も目指す。労働者を守る規制を次々と緩和するのは、女性の活躍推進と矛盾していないか。
女性にとって働きやすい職場は、男性にとっても働きやすいはずだ。そして男性も、育児や家事にもっと参加しやすい環境をつくるべきだ。現状のままでは「輝く」どころか、女性も男性も皆、疲れ果ててしまう。
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