▼第2位 『Benu』(ソマ地区)
『Benu』はサンフランシスコのソマ地区にある瀟洒な、ミシュラン二つ星のフレンチレストランだ。ビルが建ち並ぶ一角に入ると、すぐ右手に大きな窓があり、窓越しにキッチンが見えてくる。ステキな演出だ。窓を通りすぎると、その奥に蔦と草で囲まれたアーチがあり、駐車場から入り口へと向かう。
天井の高い店内は、壁の絵を極力少なくし、白、黒、四角に統一したモダンなインテリア。客席数は、およそ80席以上。客単価は300ドルから400ドルという高級店だが、一晩に2回転半以上する人気店だ。好景気のおかげなのか、それとも外食に費やす感覚がちがうのか。ここまでのビジネスを展開できるレストランは東京にはない。服装はスーツにタイやドレスの客が多いが、なかにはネルシャツとジーパンにスニーカーといった格好の客もいて、こういったあたりが実にサンフランシスコらしい。
18皿(!)で構成されるメニューは195ドル。それにお酒のペアリングは160ドルだ。
シェフのコーリー・リー(Corey Lee)氏は、ソウルからニューヨークに移住して料理の道に入った。その後、フランスで修行したのち、世界でもっとも予約が取れないという店である、ナパバレーの三ツ星レストラン『フレンチランドリー』で働いた。その後サンフランシスコへ移り住んだ。
なによりも驚いたのは、フレンチに韓国料理の要素を持ち込んだことである。
たとえば、2皿目の料理は、シュウマイ大の一口サイズに揚げた、パートブリックという薄皮で包んだ料理だったが、なかには豚肉とベリー、牡蠣とキムチが入れこんであったのだ。そのキムチの量が絶妙に考えられていて、でしゃばらずにほかの食材と共鳴するのである。
また別の前菜では、パルミット(やしの新芽)が出された。食べてみると、ほのかに酸っぱく発酵したような味わいがある。調理場のコーリーシェフを訪ねた際に「あれは水キムチを使っているのですか?」と聞くと、彼は途端に顔を輝かせて「その通り!ムルキムチ!」と子どものような顔を浮かべた。
フランス料理に日本料理や中国料理のテイストを加えたものは、いまでは珍しくないが、韓国料理のテイストを加えたものは、私の知る限りない。考えてみれば、その発酵食文化は味覚の宝庫である。野菜を多用した、淡い優しい味が本来の基本なので、十分にフランス料理に応用できるのだ。自国の食文化に敬意を払い、こういった形で取り入れる彼のエスプリは素晴らしい。
それは地球の自然な姿を目指したものであり、こうした料理は間違いなく、明日の料理界を席巻するだろう。・・・・・・この続きは『現代ビジネスブレイブ イノベーションマガジン』vol097(2014年10月15日配信)に収録しています。
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