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ひらめきの月曜日 2014年11月3日
 

 キスアンドクライで結果を待つ

 あのスペースで結果を待ちたい
あのスペースで結果を待ちたい
フィギュアスケートの選手が演技後、採点の結果を待つ場所があるだろう。あのスペースは「キスアンドクライ」と呼ばれているらしい。

不安と緊張、さまざまなドラマが起きるあの小部屋。スケートはしないけど、あそこには入ってみたい。そして何かしらの結果を待ってみたい。

そういうわけで、作ってみました。
小野法師丸 小野法師丸(おのほうしまる)
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」
> 個人サイト テーマパーク4096 小さく息切れ

自作自演でキスアンドクライ

フィギュアスケートの演技を終えた選手が、祈るように結果を待つあの小部屋。「キスアンドクライ」というしゃれた名前がつけられているそうだ。
ここのことです
ここのことです
歓喜のキス、あるいは失意の涙。それらの舞台としてのネーミングだろう。まさに悲喜こもごもだ。

テレビで見ていても独特の雰囲気が漂うのがよくわかる。あの感じ、自分も体験してみたい。スケートではなくても、あそこで結果を待ってみたい。
 キスアンドクライin埼玉
キスアンドクライin埼玉
 何のワールドシリーズかは不明
何のワールドシリーズかは不明
壁にそれらしい柄の布を張り、それっぽいイスとテーブルに花を飾れば、簡易キスアンドクライの完成だ。

なんとなく「WORLD SERIES」と書いてはみたが、内容については自分でもわからない。早速へぼい予感がするかもしれないが、この後まあまあのところまでがんばるから、もう少し見守ってほしい。
 少しそれっぽくなってきたか
少しそれっぽくなってきたか
バックが模様だけになるようにして撮ると、あのスペースの雰囲気が少し出てきただろうか。
 別にスケートすることなく座る
別にスケートすることなく座る
ピタッとした服を着て座ってみると、ほんの一歩だけだがあの場所に近づけただろうか。
 水分補給しながら得点表示を気にする
水分補給しながら得点表示を気にする
 余裕があるパターンもあり
余裕があるパターンもあり
体を冷さないようにベストを羽織り、水を飲んだりぬいぐるみを抱いたり。本物のあの場所でこういうシーンを見た覚えがある。
 女子選手をまねてはみたものの
女子選手をまねてはみたものの
かわいらしく手を振る女子選手、というパターンも見たことがある。いずれにしても、スケートをしてないというバックストーリーがにじんでいて、そこにドラマ性がない。

そんな私にも、日常生活の中で自分なりに期待をもって結果を待っているものはある。例えばそれは、夕食のメニューだ。
 「今日の晩ごはん、何かな…」
「今日の晩ごはん、何かな…」
これは結構切実。毎日おなかを空かせて帰宅して、楽しみにしているのは何よりも夕食だ。

今日はこの自作キスアンドクライで、献立の発表を待ってみよう。いよいよ表情にも真剣味が出てきた。
 「肉が出ますように…」
「肉が出ますように…」
テレビでよく見る表示を加えると、だんだん本物らしくなっていく気がする。そして、心の中で祈るのは肉。

妻がときどき「今日は健康的なメニューにしたわ」と告げてくることがあるのだが、それは鬼門の合図だ。誰かが入れ知恵してるのか、やたらと凝った野菜ばっかりの食事が出てくるからだ。
「肉…」
「肉…」
もちろん体にいいのはわかるが、それでも僕は大体毎日肉が食べたい。先ほどの画像をテレビに映すと、祈りの中身が肉であるにも関わらず、いよいよキスアンドクライになってきた。

さあ、発表の時が近づいてきた。気持ちを集中させ、祈りを捧げよう。
 出ました、ハンバーグ!
出ました、ハンバーグ!
夕食献立委員からの発表は……ハンバーグです!

来ました、肉料理。大豆のことを「畑のお肉なんだよね」と言い聞かせられながら食べるのは嫌だったんだ。そんな例え聞けば聞くほど、本物の肉が恋しくなる。
 「納得のいく結果が出たと思います!」
「納得のいく結果が出たと思います!」
今回は紛うことなくハンバーグ。オフィシャルの追加説明でも、豆腐ハンバーグではなく普通のハンバーグであることが確定。安心の結果だ。

やってることは茶番劇だが、日常のドラマ性を盛り上げる効果がキスアンドクライにはあると思う。
 しかし、漂う虚しさも無視できない
しかし、漂う虚しさも無視できない
 何かが足りない
何かが足りない
いろんな感情を想定して喜んだり落ち込んだりしてみた。なんとなく虚しい気持ちになるのは何故だろうか。

もともと虚しいことをしているのはわかってる。それを踏まえた上での寂しさがあるのだ。その原因は、喜びや悲しみを分かち合う誰かがいないからではないか。


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