室矢英樹、大谷聡
2014年11月3日11時12分
原発停止で経営が悪化した日本原子力発電(東京)は、敦賀原発のある福井県敦賀市に対し、2009年度から続けてきた寄付を15年度以降中断すると通告した。市への取材で分かった。市は同社の寄付金で市道建設を進めてきたが、市費で穴埋めすることもかなわず、市道は当初計画の3分の1程度しか完成しないまま宙に浮くことになる。原発マネーを活用してきた街が岐路に立っている。
原発6基が立ち並ぶ敦賀半島の東部。市道の建設工事現場で、うなりを上げるブルドーザーを見ながら、近くに住む漁師の中村一彦さん(78)はつぶやいた。「途中で止まっちまうのか。全部つくってほしいんだが、カネがないというんなら仕方がない」
この市道は西浦1、2号線。敦賀原発がある敦賀半島先端部と市中心部を結ぶ県道のバイパスとして計画され、08年度に建設が始まった。当初計画の総延長は3・8キロ。トンネル部分が761メートルある。
県道は曲がりくねっており、原発関連車両も通るため、特に朝晩に渋滞しやすい。勾配も急で、冬季は凍結することもある。バイパスやトンネルは半島先端部付近で暮らす人々の長年の悲願だ。そこに敦賀原発3、4号機の増設計画が持ち上がり、曲折の末、市は02年に同意した。
一方で、市道路河川課によるとこの頃、市が日本原電に依頼し、全額同社負担による西浦1、2号線の整備に両者が合意。地元県議は「3、4号機受け入れの見返りだった」と明かす。
同課によると、全額負担の合意文書は作らなかった。担当者は「お互いの信頼関係で、年ごとに工事費を協議する決まりだった」と言う。総事業費は60億円規模を見込んでいた。
ところが、11年3月の東京電力福島第一原発事故が状況を変えた。所有する原発全3基が止まった日本原電は発電できなくなり、経営が悪化。市に寄付を続けることに批判も出た。
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