後悔しない療法をアドバイス
 東京医科大学病院 星野泰三産婦人科星野 泰三 医局長・講師

現代西洋医学と代替医学の掛け橋に――。95年に留学先であるNIH(米国衛生研究所)で米国の医療実態に触れた星野泰三医師は、科学に基づいた代替医療を取り入れ、患者本位のより実践的な医療を目指している。西洋医学に基本を置き、それと同時に個々の自覚を尊重することが信条だ。患者の状態に合わせて治療法を選択し、時にはアロマセラピーの指導も行っている。東京医科大学病院産婦人科医局長の星野医師に診療方針を伺った。


 科学的根拠と人格尊重に基づくがん治療

米国成人の4割が何らかの代替医療を利用している――。93年に発表されたハーバード大学のアイゼンバーグ博士の調査報告は、西洋現代医学の医師に大きな衝撃を与えた。

米国で代替医療への関心が高まるなか、星野泰三医師は95年から2年間、NIH(米国衛生研究所)に留学し、代替医療の広がりを目の当たりにした。米国での経験は、「科学を基本とし、これと並列に人格を重んじる」とする星野医師の診療方針に多分な影響を与えたようだ。星野医師は帰国した97年から、東京医科大学病院の産婦人科で「免疫療法外来」を掲げ、がん患者を中心とした婦人病の治療にあたっている。産婦人科医として診察するがん患者は、ほとんどが卵巣がん、子宮がんだ。しかし、特定のがんだけでなく、院内・院外の医師から胃がん患者の診療依頼や免疫療法の依頼を受けることも多い。免疫療法外来を掲げているため、診療予約も全国から寄せられているが、そのほとんどが「三大療法の治療をさまざまな病院で受け、それに失望した患者だ」(星野医師)。

星野医師の診療方法は、科学療法、免疫療法、代替療法の中から患者の症状に最も効果的な療法を選択するか、あるいは組み合わせるというものだ。常に現代西洋医学を基本としながらも、がん患者に対しては、患者の希望を聞いた上で、特異的免疫療法やサイトカイン療法、LAK療法などの免疫療法、漢方薬の処方、プロポリスやアガリックス・ブラゼイなどを利用した代替療法を検討する。漢方薬は患者の精神的なサポートとしても有効な手段だが、さらに希望があればアロマセラピー(オイルマッサージ)の指導を患者家族に行うこともある。がん治療で目指すところは、科学的根拠に基づく医療と人格尊重との両面から、腫瘍を縮小させ、QOLを向上させる点にある。

 じっくり聞き、しっかり調べる

「少しでも望みがあれば…という患者さんに対しては科学的に考えうる全ての治療を施す」という星野医師は、初診患者の問診に大病院では考えられないほどの時間を割く。問診は平均30分以上に及び、1時間を越えることも少なくない。

初診での充分な情報収集は、医師にとって科学に基づく適切な治療を行う重要な判断材料であると同じに、患者に安心感を与えることにもつながる。「何を考え、何を希望しているのかをじっくり聞くことが重要です。患者へのヒアリングは、社会的な立場や家庭内の問題に及ぶこともありますが、話を良く聞くことで患者は安心し、精神的なサポートにもつながります」という。初診で得た情報は専門領域外に及ぶことがあるため、次回の診療までに準備を怠ることはできない。事前情報をしっかりと調べて、的確な治療を行うという姿勢が、評判を呼ぶ鍵になっているようだ。

 プロポリスによる代替医療に手応え

代替療法は多種多様だが、星野医師はプロポリスに最大の信頼を寄せている。「いろいろな健康食品があり学術報告も豊富ですが、科学者の目から見て、納得のできる論文はほとんどない。患者さんはご自身でいろいろと挑戦していますが、私の見る限りでは、プロポリスとアガリクスが有望でした」というのがその理由だ。特にプロポリスには、これまでの臨床試験から、がんの進行抑制や治療に伴う副作用の軽減、和痛効果、食欲改善に手応えを感じている。

さまざまな代替療法を経験した患者が多く、結果が出なければやめてしまうのも当然のこと。あくまでも患者の希望を効いた上でプロポリスを紹介することになるが、星野医師はまずプロポリスに関する本を読むことを勧めている。その結果、受持ちのがん患者のうち80%以上がプロポリスを使用している。

医療に対する患者の意識が変化しつつある今、現代西洋医学と代替医療の掛け橋となる医療従事者が求められている。「後悔しない療法を助言する」とし、ホームドクター的な医療コーディネーターを目指す星野医師のように、科学的根拠に基づく代替医療を実践する医師はまだまだ少ない。

プロフィール
星野 泰三 (ほしの たいぞう)
昭和35年生。東京都出身。昭和63年東京医科大学卒、医師国家試験合格。東京医科大学大学院入学、婦人科専攻。平成4年東京医科大学産婦人科助手。平成6年甲種医学博士「癌科学療法による骨髄抑制の克服」。平成7年米国衛生研究所(NIH)フェローシップ獲得、がん遺伝子治療、再生不良性貧血の原因解明に関する研究。平成9年帰国、「免疫外来」設立。東京医科大学講師。平成10年同病医棟医長。平成11年同医局長。
 
●東京医科大学病院 東京都新宿区西新宿6-7-1
 TEL:03-3342-6111

(Medical Nutrition 8号より)


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