安堵と笑顔で1年目を総括した田中将大
来季、最高の結果への序章となるか?
痛恨の右肘故障、そして離脱
7月8日のインディアンス戦後に右肘の靭帯(じんたい)部分断裂が発覚し、以降の約2カ月を休養。シーズン終了間際に復帰してファン、関係者を再び驚かせたが、そのころにはヤンキースのプレーオフ出場はすでに絶望的になっていた。
「先発ローテーションを守ることの難しさを感じました。こういう世界で黒田(博樹)さんがずっと(シーズン200回を)投げているのはあらためてすごい。来シーズンは自分が投げられるようにしたいと思います」
本人の言葉からも、来季の目標が早くも分かりやすい形で見えてきている。
“魔球”スプリッターと若さに似ぬ落ち着き、粘り強さを駆使し、完調時にはメジャーの打者たちを抑え込めることは今季に証明された。最強の武器であるスプリッターを軸にし続けるか、より緩急をつけるかの答えは今後に見えてくるが、その適応能力を考えれば、来季以降も一定以上の結果は出せるのではないか。ただ、そのためには、常に健康体でマウンドに立ち続けなければならない。
「それはすごく大事になってくると思いますね。僕はいつも、毎回、こういう故障があるときは長引いてしまうので、一歩前で言えないといけないかなと思いますし、そこらへんは勉強になりましたね」
自分の体調を知ることの大切さを会見中に聞かれた際、田中が素直にそう答えていたのも印象に残る。
“爆弾を抱えた右肘”で投げ続けるために、今後はより細心のケアと対応が必要になってくる。時には“引く勇気”も必要。マウンド上でピンチを迎えたときと同じように、自身のコンディションに関しても、大人の対応ができるかどうかが来季以降の課題になってくるのだろう。
復帰のA・ロッドと並ぶ注目株になる
「自分自身はシーズンの半分くらいしか働けてませんし、チームとしてもプレーオフを逃しているので、悔しいシーズンだったと思います」
冒頭で述べた通りに笑顔の多かった会見の中でも、そう語った際の田中は表情を力強く引き締めた。波乱のルーキーシーズンはプロローグに過ぎず、1年を通じた活躍、チームの勝利という“収穫”を手にするのは来季以降。まずはゆっくりと休み、オフを楽しみ、その後に迎える15年、今度はどんな新チャプターを見せてくれるのかが今から興味深い。
今から1年後―――。田中がさらに晴れやかな笑顔を見せてくれることになれば、それはニューヨーカーにとっても最高のシナリオであるに違いあるまい。