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商店配置 合意は遠く/立ちすくむ中心街(4)完/かすむ復興

一時期より客数は減ったが、立地条件が良い仮設の福幸きらり商店街

<入居希望なし>
 岩手県大槌町は東日本大震災の津波で町中心部のほとんどを失った。一から造り直す街の中心商店街をどこに配置するか。商店主と行政の思いは揺れ、定まらない。
 「歴史的意義の深い御社地(おしゃち)近辺が、『まちの顔』を求める多くの意見に応える」
 町の第三セクター「復興まちづくり大槌」は7月、市街地再生基本計画案を町に報告した。旧役場庁舎に近い同町末広町の御社地に、公園や図書館などの公共施設と被災商業者が入る複合施設の整備を盛り込んだ。
 御社地は江戸時代から社があり、震災前は公園として町民に親しまれた地だ。
 計画案は昨年4月、大槌商工会が町に提出した官設共同テナント案に沿った内容だが、現時点で入居希望者はほとんどいない。

<現在地を提案>
 「街の将来像がまだ見えない。再建を決断できない商業者が多い」。御社地から約600メートル西の沢山地区にある福幸きらり商店街。旧大槌北小跡地に40店舗が集まる町最大の仮設商店街の山崎繁会長(66)は悩む。
 御社地を含む町方地区は、土地区画整理事業で1800人の居住を計画する。本当にそれだけの人が戻るのか。家賃は払える額なのか。借金し入居しても高齢化、後継者難などの不安がのしかかり、前へ踏み出せない。
 「仮設の延長を含め沢山での再建も一つの手法。立地は良い」。国道45号沿線で三陸道インターチェンジが近くに整備される。広い駐車場を持つきらり周辺は住宅再建が始まり、学校もある。
 山崎会長ら商店街有志は昨年6月、現在地を含む沢山地区でスーパーを核にした共同店舗建設を町に提案した。

<いまだ流動的>
 町から色良い返事はない。民間で用地取得も試みたが困難だった。きらりで鮮魚店を営み、沢山案を練った河合秀保さん(38)は「商業のにぎわいは消費者がつくる。集客に必要なのは利用頻度が高いスーパーだ」と言う。公共施設を核にした町計画の甘さを憂える。
 町も「このままでは入居者がいなくなる」と危機感を強める。再生基本計画案を基に複合施設の2017年度完成を目指し、国の補助金が付くまちなか再生計画を本年度策定する方針。10月には仮設商店街に出向き、商店主の意向を再度聞き始めた。時間がない中、原点に返った。
 「中心部再建は商店街なしにあり得ない」(町総合政策課)。「町の案に反対ではない。入居しやすい条件を早く示してほしい」(山崎会長)。両者が一致点を見いだせるか、いまだ流動的だ。


2014年11月03日月曜日

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