2014-11-02
3年越しに振り返る 『THE IDOLM@STER』 ‐‐ 第6話 「先に進むという選択」
「先に進むという選択は、先に進まれてしまうという感覚へ」 この挿話はまさしくそんな言葉を体現したような物語を描いてくれた上に、そうした焦りや不安といった感情を垣間見せることで “彼女たち” と “彼” の足並みを今一度揃え、「共に駆け抜ける」 という本作の幹なる主題を丁寧に描いてくれていたように思います。
それこそこの第6話に至るまでの全ての物語においても、やはり “765プロはそうであった” ように。プロデューサーだからとか、アイドルだからとか。そういう境界を引くのではなく、みんなで一緒に乗り越えていけばいいのだということを語る、むしろこれはそのためのスタートラインそのものでもあったのではないでしょうか。
それも今回の件だってプロデューサーにとっては 「みんなのために」 と奔走した結果でもあったのでしょうし、その全てを失敗だと切り捨ててしまうのは些か酷なことではあったと思うんですよね。
同業である律子が順風満帆な船出を見せる中で、自分はいったい何をしてるんだっていう劣等感というか。それも彼はアイドルたちの命運を任されている立場でもあるのだから、仕事が上手く取れない、なんてことになれば焦るのだって当たり前で、むしろあれだけ多くの人の下を駆け回りなんとか彼女たちを輝くための舞台に立たせようとしたその姿は一人のプロデューサーとしてとても立派なものであったように見受けられました。
けれど彼は “目先の結果” に囚われてしまったがために、きっと彼女たちと “向き合う” ことを忘れてしまっていたのでしょう。アイドルの宣材と携帯電話を片手に、遂には彼女たちを置き去りにしながらただただ頭を下げ奔走する実りのない毎日。ようはその場所に、一体どれだけの意味があるのかっていうことなんですよね。それは相対しながら自らのプロモートを組み立て上げてきた竜宮小町がその反語にもなっているように、やっぱりアイドルが居ない場所でのプロデュースってきっと誰の背をも押すことのないただの空回りに過ぎないんじゃないかって。
むしろこの作品って、そうして誰かを独り突き放すことを決して良しとしなければ、だからこそ 「向き合うこと」 「共に並び立つこと」 を全力で肯定してくれるし、そうして歩む物語の先にこそ輝く未来はあるのだということを彼女たちは教えてくれる。
それこそ、それまで頭を抱え一人俯いていたプロデューサーを映していたその画面に少しずつ彼女たちの存在が浮き彫りになることで得られるこの心強さは、やはり765プロが765プロである所以そのものでもあったのだと私は思います。
誰一人として置き去りにしなければ、誰か一人に頼ることだって決してしない。みんなで前へ。みんなと前へ。そうした軌跡の積み重ねが 「今までの全部」 になっていく辺りにきっと 『アイドルマスター』 の強さってつまっているのでしょうし、その強靭なまでの信頼関係があるからこそ 「きっと彼女たちなら大丈夫」 なんていうこの感覚も、本作を観ている時には常に近しく感じていられるのでしょう。
それこそ 「みんなで一緒に」 の精神は今までの物語の中においても幾度となく語られてきた云わば765プロの社訓みたいなものでもあったわけですが、その成長の物語は何もアイドルに限った話ではないのだということをも示してくれた辺りに、改めてこの挿話の希少さを感じることが出来たように思います。
また、プロデューサーの視点・主観の多さは “向き合う” ことの大切さを語る想いとの対峙そのもの。「あなたを見守っている人は必ずいるから」 と云わんばかりの映像の数々からはアニメ 『アイドルマスター』 の “らしさ” を十分に感じられたのではないかと思います。
それも、この6話のエンディングに 『THE IDOLM@STER』 を添えたことの意味合いも含め、本当にアイマスらしい挿話だったなぁと、今は強く、そうした感慨に耽るばかりです。
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