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QQE2はPLO:日銀には逆らうな

2013年4月の量的・質的緩和(QQE)開始から1年半が経過した昨日、日本銀行が追加緩和(QQE2?)に踏み切りました。


焦点:黒田日銀がQQE限界説に実力行使、期待転換へ本気度示す | Reuters

主な内容は、資産・負債の年間増加額(概数)を

に増額するものです。

同日には、年金積立金管理運用独立行政法人が、国内株式比率を倍増させることを公表しました。

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日銀とGPIFによる「ハロウィーンの奇跡」だそうです。

伊藤教授は31日夜のインタビューで、GPIFと黒田東彦総裁が率いる日銀は「美しき調和」を果たしたと評価。両者は「以心伝心の間柄だ。意図するとせざるとに関わらず、見事に示し合せた政策対応だった」と述べ、「私はこれをハロウィーンの奇跡と呼びたい」と続けた。

政府・日銀が株価の維持・上昇(PKOPLO)に動くのではないか、という大方の予想通りの展開です。


焦点:株価PKOは今後本格化も、カギはGPIF改革の時間軸 | Reuters

日銀がQQE2に踏み切ったのは、当初想定されていた「当座預金残高を激増させる→予想インフレ率&資産価格上昇・円安→投資・消費・輸出増加」が期待を下回っているためだと推測されます。円安はインフレ率上昇には貢献していますが、輸出数量増加には結びついていないため、貿易赤字を拡大させるにとどまっています。マネーストックの伸びも、大部分は政府向け信用≒国債残高の増加によるものです。

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そもそも量的緩和の中心は、銀行が保有する国債を日銀当座預金と交換することなので、企業や家計に直接的影響は及びません(金利はほとんど下がらない)。

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Unconventional monetary policies: an appraisal

…, an expansion of reserves in excess of any requirement does not give banks more resources to expand lending. It only changes the composition of liquid assets of the banking system. Given the very high substitutability between bank reserves and other government assets held for liquidity purposes, the impact can be marginal at best.

そこで円安や株高などの別経路と、財政支出拡大(←国債の順調な消化)が重要になってくるわけですが、QQE2はそれらに明確に焦点を合わせたものと言えそうです。

その実体経済への効果は定かではありませんが、株や国債等に売りを仕掛けることが難しくなったとは言えるでしょう。

 

[追記]

  1. 日銀がマネタリーベースを増やす→銀行貸出(とマネーストック)が増える→停滞脱却
  2. 日銀が国債を大量購入して当座預金残高を激増させる→将来の物価の予想水準が上昇する=予想インフレ率上昇→投資・消費・純輸出が増加→停滞脱却
  3. 日銀の買い入れによって資産価格(長期国債、株式、不動産)を釣り上げる(&円安)→投資・消費・純輸出が増加→停滞脱却

ストーリーがどんどん変遷してきましたが、最後は株価頼みに落ち着いたということでしょうか。

下のグラフは、アメリカの予想インフレ率との超過準備残高の関係です。

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アメリカのQE担当者の懺悔 - Think outside the box