産業用ロボット大手の川崎重工業が新分野に挑んでいる。2013年8月、医療機器のシスメックスと折半出資で、医療ロボットを開発するメディカロイド(神戸市)を設立した。社長の橋本康彦(57)はロボット一筋30年、これまでも新たな領域をひらいてきた第一人者だ。
■残りの人生をかける
「川重さん、本気ですか?」――。シスメックスとの協業を発表して以来、多くの人に橋本がかけられた言葉だ。医療現場で使うロボットは安全性の確保や認証取得など多くの障壁が予想され、参入に踏み切れない企業も多い。投げかけられた問いに対し、橋本はこう返してきた。「私の残りの人生をかけます」
数多くのロボットを開発してきた橋本が医療用にこだわる理由は父と兄にある。父親は精神神経科の医者で脳波診断のプロだった。子供のころ、脳波の画像を見て物理に興味を持ち、技術者の道へ進んだ。その後、兄が小児科医となり、橋本はいつか自分も技術で人の命を救う仕事がしたいとの思いを秘めてきた。
ただ、医療ロボットに参入するには社内の経営資源だけでは限界があるとも感じていた。そこで旧知の仲だったシスメックスの浅野薫(現メディカロイド副社長)と組み、12年に研究会を起こした。昨年設立した新会社は14年度いっぱい市場調査を進め、15年度から開発へ移行する計画だ。
■激動期に世界へ
世界の医療・福祉ロボット市場は12年に約5000億円で、20年までに3倍程度に増えると予想される。だが日本は出遅れている。需要が見込まれる手術用ロボットでは米インテュイティブサージカルが開発したダヴィンチが普及で先行。日本では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが試作機を開発した段階だ。
メディカロイドが製品化を構想しているのは、例えば内視鏡などの手術支援ロボットや患者の姿勢を変えるといったリハビリ用。川重が強みを持つ多関節ロボットなど、産業用で培った動作の精密性や耐久性を武器に追い上げる考えだ。
「入り口でしっかりニーズをつかむ。ロボットの製品企画は、ぶれないところまで入り込むことが大切。ただしスピード感を失ってはならない」と強調する。ニーズの見極めとスピードという相反する要素の両立こそ、橋本が顧客の信頼を勝ち得てきた要因だ。
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