TK MUSIC CLAMP
CLAMP TALK :泉谷しげる
- 中居:
- へえー。いつでも戦闘体制みたいなのが?
- 泉谷:
- そういうわけでもねえんだけど、なんかこの恐い親父っ
つうのが好きなんだろうな。あの、だからその、親父の世代だろうが何だろう
が、どいつもこいつも近所でもみんな恐かったじゃない、うん。
- 中居:
- 頑固親父とかそんなんですね。
- 泉谷:
- そう、頑固。一軒は必ず頑固親父がいた、みたいな。今
なんか「親父?どこいんだ?」みたいな状態で気の毒なんだけど。だいたい、夜の
七時とか八時くらいになるとテーブルがひっくり返るわな、ガーンと。
- 中居:
- はあ……。
- 泉谷:
- すっと「ん?あの家やってるなぁ、おい。うちも負けず
にやろうぞ!」みたいな、その。
- 中居:
- でもそういう、僕ね、反発心ていうのかな?例えば、自
分を持ってないとできない、人に流されちゃ絶対できないことですよね。
- 泉谷:
- そうそうそうそう。いや恐いですよだから。だから先
輩、フォークだろうがロックだろうが、その、普通、ロックとか自由な音楽とか
ぬかしてはいるけど、すごい徒弟制度がうるさくて、誰がトリ取るとか決めてモ
メてんだよ。喧嘩してんだよな。
- 中居:
- ええ、ええ。
- 泉谷:
- 俺たちなんかトリなんか取りたくねえから、終わったら
さっさと帰りてぇじゃねぇ。だから、「裕也さん、どうぞ」とかね。まあ、
「やって下さい」みたいな。
- 中居:
- へぇー。
- 泉谷:
- 「最後までいって下さい、やって下さい」みたいな。
- 中居:
- でも、それはでも、自分のその、ね、いわゆる突っ張っ
た気持ちじゃないですけども、そういう気持ちをね、突き通すっていうのは、あ
る意味では周りを敵に回すようなことってのももちろんそういう。
- 泉谷:
- うん、まあ、敵に回すだろうねえ。回すんだろう。だけ
どその、あの、気に入ってる奴は、まあ、ある意味で逆にいえば大親友も手に入
るわな。
- 中居:
- うん。
- 泉谷:
- そうそう、そうそう。だから、全員に好かれようなんて
気はさらさらねえし、第一、気持ち悪いわな。
- 中居:
- うんうん。
- 泉谷:
- そうそう、それは。
- 中居:
- あ、それはあるでしょうね。
- 泉谷:
- そんなん、嫌だよ。女だっていろいろ好みがあるわけ
で、「この女には好かれたくねえな」ってのはいるだろうよ、そりゃ。
- 中居:
- ああ、なるほどね。
- 泉谷:
- ああ。馬鹿馬鹿しいよ。ほんで、「こんな大人とは付き
合いたくねぇなぁ」とか、俺、思うもんよ。で、それは同じミュージシャンでも
自分が正直に「こいつ嫌いだな」とか思ってんのに、なんかテレビ上しょうがな
く仲良くしなきゃなんないことなんか、たまにあるじゃん。
- 中居:
- ええ。そうせざるを得ない時ありますよね。
- 泉谷:
- あるだろ?
- 中居:
- ええ。
- 泉谷:
- すっと、やっぱ終わったとき「てめえこの野郎!!」とか
後ろでよくやってたりとかな。「これ本番は我慢したけどな!この野郎!!」みたい
な。
- 中居:
- すんごい嫌だ、そういうの。
- 泉谷:
- 逆にその、その逆もあったよ。取り囲まれたりとかな。
テレビ局の後ろで。
- 中居:
- 「おまえなんなんだよ!?今のはよう!」みたいな?
- 泉谷:
- ようみたいな。「おまえ何突っ張ってんだよ!?」みたい
なさ。
- 中居:
- でも変な話、今の、僕らがやってるその、まあ音楽に限
らずその活動っていうのは、そういうなんか突っ張った同士の肩のぶつかり合い
みたいなっちゅうのは、ないですよね。
- 泉谷:
- ないよね。だから、そういう意味ではやりやすいっちゃ
あ、やりやすいんだけど、ある意味では。その、遅くまで飲んだりとか、食った
りとか、そういう事しなくなっちゃったな。すごい喧嘩してんだけど、飲むと非
常に意気投合しちゃったりなんかするようなことはよくあってさ。お互いに嫌い
なんだけど。だけど、ついつい飲んじゃって「馬鹿野郎!てめぇの音楽はよぅ!!」
とこう、ガンガンガンガンとこういいながら、「なんか結構いい奴じゃん、こい
つは」みたいな。そういう仲良くのなり方を俺たちは常にしてて、好きな相手で
もそうなわけよ。
- 中居:
- どういう人ですか?
- 泉谷:
- 吉田拓郎とかそういうのも好きだったんだけど、「てめ
えアイドルじゃねえか!この野郎!!」みたいな。「スカすんじゃねえぞ!!」みたい
な。その、なんつうの?ワザと突っ張るわけよ。
- 中居:
- ええ、ええ。
- 泉谷:
- ほんで、嫌なこと言うわけよ。
- 中居:
- 刺激を与えるんですね。
- 泉谷:
- そうそうそう。だから、向こうは向こうで、蔑んでもの
を見ているみたいな。その、腹ん中では好きなんだけど。
- 中居:
- うん、そうですね。僕なんかね、だからそういうのは、
もしかしてなんつうの?闘争心というのかな?いわゆる刺激し合ったり、張り合い
みたいなのはもしかしてないかも知れないですね。
- 泉谷:
- ああ、そう。
- 中居:
- 「こいつを押しのけてまで俺がいってやろう」ってい
う。
- 泉谷:
- うーん?いや、例えば、だからね、それはおめぇ、しん
どいことでさ。いや、そうしないと負けちゃうわけよ。
- 中居:
- うんうん、うん。
- 泉谷:
- だから本当に、そのうえ力があったから、みんなが。そ
の、それぞれが。
- 中居:
- ええ、ええ。ええ、ええ。
- 泉谷:
- だからその、つまり、よく一緒にこうほら、あの、イベ
ントに出るはめになるじゃない。すっと、前の人間がもうメチャクチャうけ
ちゃったりなんかすると、あと通して俺が次に出る時なんかだいたい俺の悪口最
初に言われちゃうわけ、「ガンガンガンガン」て。「あいつはロクなもんじゃね
え」だの「歌はヘタ」だの「最低な奴だ」みたいな。
- 中居:
- うんうん、へへっ。
- 泉谷:
- で、そのあと出ていくから笑い者になるわけよ。
- 中居:
- 「ああっ、こいつだこいつだ」みたいな?
- 泉谷:
- 「ああっ、こいつだ」みたいなさあ。で、それをぶちの
めしていくのにはねぇ、やはり相当な覚悟いる。
- 中居:
- うん。
- 泉谷:
- だから、いつもその、イベントでその、順番決めるとき
に「いちばん最初に出たほうが勝ち」とか、「トリとる奴は馬鹿」だとかいっ
て。
- 中居:
- へぇー。
- 泉谷:
- それで、「おまえは暴れるからいちばん最後」っていつ
も後回しされちゃうわけよ。すっと、この世界ではその、いちばん最後ってのは
こう、キメでなんか大物だっていう意識はあるんだろうけど「おまえはうるさい
からいちばん最後」というその。「何なんだこれは?」みたいな。
- 中居:
- でも、そういうのってすごい好き。あの、この前もあ
の、去年でしたっけね?神戸かなんかでチャリティライヴ、いろんなアーティスト
の方が集まってやったじゃないですか。僕、ああいうの本当、好き。
- 泉谷:
- でしょう?
- 中居:
- なんか、アドリブ的なところっていうのかな?なんかし
らやっぱり音楽の世界でブラウン管を通せばある意味では、人はよくてもライヴ
は悪かったりするわけですよね。
- 泉谷:
- そうそう、そうそう。
- 中居:
- 好きでもライヴ悪かったり、うん。
- 泉谷:
- そうそう、そうそう。
- 中居:
- でもそう、いわゆるそのライバル達が、いつも敵対心を
持ってる人たちが、まあ持ってないかも知れませんけど。
- 泉谷:
- 昔はあったわな。今はわりとそうでもなくなったけど。
- 中居:
- んで、そういうのはまあ、少なくなってきましたけど
ね。そういう人達がみんなで集まって、一つの音楽じゃないですけども、同じ目
的でひとつの目的を。
- 泉谷:
- そうだなあ。
- 中居:
- そういう姿勢が、みんなが同じ姿勢を。
- 泉谷:
- だけどねえ、やっぱりそれぞれの親分やってるような奴
等じゃない。なんだかんだいっても、やっぱりいくら目的がその震災の救済だと
言ってもよぉ、やっぱわがままだぜ、みんな。本当に。
- 中居:
- え?どういう事ですか?
- 泉谷:
- やっぱり「あの歌うたうんだったら、俺はやんねえ」と
か言い出すわさぁ、「あいつがギター弾くんだったら、俺はやんねえぞ!」とか
さ。「こいつが入ってくるわけ?じゃあ、俺やんねえよ」とか。ま、必ず始まっ
ちゃうからね、それは。だから面白いんだけどさ。ほんで、「俺は天然水じゃな
いと飲まないから。いい水用意しといてくんないと困るよ」とか言うわけだよ。
「なんだ!?その水道の水でも飲ましとけ。そんなもん、わかりゃしねえんだか
ら」とかさ。だから、多少、だから全員が仲良くなるなんてことはあり得ないわ
けですよ。それはもう、わかってるわけよ。
- 中居:
- それはやっぱ不可能なことなんですか?
- 泉谷:
- 不可能だよ、そんなもん。そんな気もないよ、こっち
も。だから、わざと楽屋も全部分けないの。もう、一個。全部、一個。
- 中居:
- うわぁ、嫌な空気だな。
- 泉谷:
- いやいや、いいんですよ、それで。
- 中居:
- 喋らざるを。
- 泉谷:
- 喋らざるを得ないから。
- 中居:
- それ楽しんでんの?
- 泉谷:
- それ、すごい楽しいわけ。うん、楽しんでんだ。
- 中居:
- へぇー。それ楽しんでんだ。
- 泉谷:
- 大変ですよ。
- 中居:
- 気ぃ遣うんですね。
- 泉谷:
- 機微もんだよ、これはもう。こう見えてっけど、俺は世
界で一番気ぃ遣う男だよ、おまえ。
- 中居:
- ………………。
- 泉谷:
- なんだその眼その顔は!この野郎!!
- 中居:
- いやいや。
- 泉谷:
- だけど、恐らく俺、こういうのが向いてると思うんだ
よ。向いてるっつうのがさ、それは表面を、人のこういう画面に出てるこの「恐
いオッサン」という固まりのイメージとは別にね。これは、結果こうなっちゃっ
ただけであって、本人はべつに表に出る気はなかったし。どちらかといえば、そ
うやってタレント集めてっていうか、ミュージシャン集めて売りたかった人なの
ね。
- 中居:
- ああ、裏側の人。
- 泉谷:
- うん。裏側の。
- 中居:
- 作る人だ。
- 泉谷:
- うん。実際そういう事務所を二十歳ぐらいの時に作った
んだ。
- 中居:
- ええ、ええ。
- 泉谷:
- そいで、どうしても売りたい奴がいたわけだ。
- 中居:
- うんうん。
- 泉谷:
- で、こうやって押し出してってレコード会社いったりな
んかして、あるいはコンテストとかなんかにも連れてって。で、あるレコード会
社がみんなの音を聞きたいっていうから、「よし!じゃあテープ入れとこう」っ
て、要するに一番売りたい奴をメインに入れといて。で、余ったからカセットに
俺の声入れといたわけね。
- 中居:
- ええ。
- 泉谷:
- そしたら、俺が受かっちゃったんだよな。その、余っ
ちゃったやつで。
- 中居:
- うんうん。
- 泉谷:
- 「えっ?俺かよ?参ったなぁ、おい」みたいな。
- 中居:
- それがきっかけなんですね。
さっきも泉谷さん言ってたように、例えば、番組で嫌いな人っていうか、自分が
苦手な人と話を合わせなきゃいけない状況っていう。
- 泉谷:
- とりあえずな。
- 中居:
- うん。そういうのあるじゃないですか。
- 泉谷:
- うん。ムカムカしてっけど。
- 中居:
- ええ。でもそれ以上ムカムカした顔、絶対出さないです
よね。
- 泉谷:
- 出しますよ、けっこう。
- 中居:
- それは汚いですよね。
- 泉谷:
- 何でだよ!?おまえ。
- 中居:
- 僕らなんか絶対できないよ。出来ないっていうか。
- 泉谷:
- だって、俺、キャラクターなんだもん。
- 中居:
- それ、汚ねぇなぁ。
- 泉谷:
- 俺は、怒っていいんだもん。「なんだおまえ!?嫌い
だ!!」とかって言っていいんだもん。
- 中居:
- それっ、それ。
- 泉谷:
- それ、「泉谷しげる」が言わせるんだもん。
- 中居:
- それ、僕、出来ないですもん。
- 泉谷:
- だろ?だからそれは好感度をおまえ、どっかに喜んでる
んところがあんだよ。おまえの中に。
- 中居:
- でもそれはだけど、その人が不愉快じゃないですか。
- 泉谷:
- 不愉快だっておまえ、不愉快にさしてやんねえとさ、1
回はさ。その、「こいつ嫌い」なんだから。
- 中居:
- そんなこと言えないじゃないですか。
- 泉谷:
- だから、言ってやんねえとさ、気付かねえんだから、×
×××。
- 中居:
- だからその、いわゆる自分の嘘の姿があるわけですよ。
- 泉谷:
- あ、そうか。
- 中居:
- 自分の嫌なね、「これについてどう思いますか」「い
やぁ」。
- 泉谷:
- だから、それはキャラクターだと言うえるっつうの。だ
から、多少の事で、素だったらなかなか言えないだろ?それ。素で言ったら、本
当、マジじゃねえか、俺。
- 中居:
- 本当にになっちゃいますもんね。
- 泉谷:
- 本当だろ。たけしだってあれだけのことみんなに言っ
て、嫌われてるか?
- 中居:
- うん、そうですよね。
- 泉谷:
- だろ?
- 中居:
- いわゆる人間性ですよね、本質的に。
- 泉谷:
- だから、でも、けっこう彼は非常に気にし屋さんで。
やっぱりほら、人に批判っつうか、悪口いう人間っつうのは、他人の悪口に弱
いってところがあって一言いわれちゃうと。
- 中居:
- ガクンときちゃうんですね。
- 泉谷:
- ガクンときちゃったりする奴が多いんだよな。でも俺は
「だいたい嫌ってるぞ」と思って常にいくから、人はあんまし。
- 中居:
- でも、多分、泉谷さんはあれですよ。嫌いな人少ないと
思いますよ。
- 泉谷:
- そうなんだよ、以外と少ないんだよ。嫌んなっちゃった
よ。
- 中居:
- そうですよね。
- 泉谷:
- で、思ったより殴ってんだけど、「俺おまえ好きなんだ
けど」って殴られてんだよ、みんな。
「頼むよ泉谷、お、俺、おまえのこと…」
「うるせえ!俺は嫌いなんだ!おまえが!!」とかって殴ってんだよ。
「だーい好きなんだからよぅ!」って泣いてんの、そいつ。
「なんだよ、だったら最初から言え、この野郎!」とかさ。
- 中居:
- 勇気ありますねぇ、それ。
- 泉谷:
- とんでもないよな。
- 中居:
- だから、人に対する姿勢ってのが、僕、どんな人でも多
分、泉谷さんは変わんないと思うんですよ。
- 泉谷:
- うん。
- 中居:
- 僕に対しても。そんで、今ね、一緒にやってる慎吾君に
対しても。その人に対する接し方っていうのが変わらないと思うんですよ。
- 泉谷:
- その、綺麗なネェちゃんの時はちょっと態度変わるけど
ね。
- 中居:
- それはね、ぼくも一緒なんだけどね。
- 泉谷:
- さすがにね、好みのネェちゃんは。でもまあ、あんまり
我慢できないな、やはり。
- 中居:
- 我慢しちゃいけないですよね。
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