インターネットバンキングの機能を悪用し、他人の口座から不正に送金する犯罪が増えている。犯人側の手口は巧妙になっているが、適切な対策を取れば、被害を防いだり、最小限にとどめたりすることができる。逆に対策を怠ると、万一のときに被害が補償されないケースもあるので気をつけたい。
「あれ、お金が少ない」。都内に住む60代の男性は先月、ATMで現金を引き出したところ、残高の異変に気がついた。通帳で取引履歴を確認すると、知らない口座に50万円を振り込んでいた。銀行に問い合わせると、数日前にネットバンキングを利用した際にパスワードなどを盗まれ、不正送金の被害に遭った可能性があるという。
ネットバンキングはATMに比べ振込手数料が安い場合が多く、好きな時に手続きできるのが魅力だ。不正送金は犯人がパスワードを盗むなどして、他人の預金口座から自分の口座にお金を振り込む。振り込まれたお金はすぐに引き出され、後から取り戻すのは難しい。
■3カ月で4億円超
全国銀行協会の調べではネットバンキングによる個人の不正送金被害は2014年4~6月に413件と前年同期の3.4倍に急増した。被害額も4億4900万円と4.3倍だ。1月から6月までの被害件数は既に783件と昨年1年間(647件)を上回る。
犯人が盗むのはネットバンキングのログインに必要なIDとパスワード、送金をする際に別途必要となる第2パスワード。これらを入手すれば他人の口座が使えるようになる。逆に言えば、こうした情報を守ることが被害を防ぐカギとなる。