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日米のPOオンエア時間の違いについて

本当に久しぶりの投稿になってしまいました。この春先から多忙を極めていて、このブログや日経ビジネスオンラインへの寄稿など、どうしても執筆活動に費やす時間を減らさざるを得ない状況になっていました。

ここにきて、ようやく仕事量も落ち着いてきたので、執筆活動も再開しようと思っています。今回は、日米野球界のプレーオフフォーマットの違いについて書いてみようと思います。

日米の野球界では決勝シリーズ真っ盛りですね。ちょうど数週間前に日本からクライアントが米国視察に来ていたのですが、運よくMLBのプレーオフを観戦する機会に恵まれました。観戦したのは、10月3日のサンフランシスコ・ジャイアンツ@ワシントン・ナショナルズ戦。



もともとワシントンDCを訪問する予定が先にあり、その後ナショナルズがPO進出を決めたので、急遽チケットを手配したのですが、購入時(約1週間前)には試合開始時間が「TBA」(To Be Announced)となっていて、まだ決まっていませんでした。

で、試合時間が決まったのがいつだったかというと、何と試合前日でした(苦笑)。しかも、午後3時開始という時間を知って二度びっくり。10月3日は金曜日だったのですが、平日の午後3時から開始するというアナウンスを前日に決めたわけです。

なぜこんなことが起こるかと言うと、テレビ放映の時間を調整するためなんです。実は10月3日には、ナショナルズの試合も含めて4試合のPOがあったのですが、以下のように全ての放映時間が重複しないように調整されています(時間は全て米国東部標準時)。

午後12時~    タイガース@オリオールズ 
午後3時~     ジャイアンツ@ナショナルズ 
午後6時半~    カージナルス@ドジャース 
午後9時半~    ロイヤルズ@エンゼルス

試合開始時間の発表が試合前日までずれ込んだのは、テレビ放映局との調整に時間がかかったものだと思われます。まあ、前日に試合時間が決まっても、それが平日の日中帯でも、観客席は超満員なんですけどね(笑)。

日本で同じことをやっても、きっと空席が目立つことでしょう。それ以上に、ファンからの苦情が殺到するに違いありません。「試合時間を前日に決めるなんて非常識だ!」と。以前、「スポーツと民主主義の成熟度は比例する?」などでも書きましたが、この辺りは、スポーツに対する文化的な受容度の差なんだと思います。

で、実は先々週は日本への出張が入っていて、日本でクライマックス・シリーズ(ファイナルステージ)をテレビで観る機会があったのですが、米国での感覚にすっかり馴染んでしまった自分としては、セ・パのCSが同じ日の同じ時間に開催していることに大きな違和感を覚えずにはいられませんでした。

そもそも米国スポーツ界では、異なるスポーツ間ですら、プレーオフのようなプレミアコンテンツの放映時間が重複することは余程の事情がない限りありません。視聴率を喰い合うのが目に見えているからです。

これはひとえに、権利の所在の問題です。MLBでは、PO(WSを含む)のテレビ放映権はリーグ機構が保有しているのに対して、日本のプロ野球界では球団が保有しています(ただし、日本シリーズはNPBが保有)。

リーグが保有していれば、当然オンエアの時間帯はリーグ全体のマーケティングメリットを勘案して露出を最大にするために時間をずらすという形になりますが、球団が保有していれば、一球団にとって最大のメリットとなる時間帯=ゴールデンタイムが選択されるため、結果的にオンエア時間が重複することになります。

しかし、これは本当にもったいないことです(ランチとディナーを一緒に食べろを言われているようなものです)。よりによって、シーズンの中で最も価値のある試合の1つなのに、その価値を落とす方向で自らが首を絞めてしまうからです。

ここは、米国のようにPO全試合の開始時間をずらせとまでは言いませんが、せめて例えばシリーズ勝者が決まる第4戦以降だけでも重複をさけて別の日、もしくは時間差開催するなどはできないものでしょうかね??

ただでさえファンの野球離れが叫ばれて久しい野球界です。テレビ放送は最大のマーケティングツールですから、球界全体の利益を考えるなら、合計露出が最大になるようにオンエア時間に配慮があってしかるべきだと思います。

今年のCSも白熱した試合が目白押しでした。こうした最高の野球コンテンツを、一人でも多くのファンに見てもらうことこそが、今の日本球界にとって必要とされていることではないでしょうか。普段野球に接点の少ない人に「あ、野球って結構面白いんだね」と思ってもらい、顧客基盤を広げるまたとないチャンスですから。

もったいないついでに言うと、リーグ優勝した球団にファイナルステージで1勝のアドバンテージを与えるというのも、再考の余地があるのではないかと思います。以前、MLB関係者とこの話をした時に、「あれは金をドブに捨てるようなものだ」と言っていました。一番高く売れるコンテンツを1試合分減らすという判断は、MLBの感覚では信じられなかったようです。

これは、「公式シーズンの重み」をどう考えるかという議論になると思います。この点については、以前「プレーオフ方式は必要か?」でも書きましたが、米国でも同じような議論がないわけではありませんでした。ただ、最近はあまり聞かなくなったように思います。

米国では、公式シーズンはマラソン、プレーオフは短距離走で、チャンピオンは長距離も短距離も強くなければならないというコンセンサスがあるように思います。ルールで決めた以上、敗者が「公式シーズンの重み」を持ち出すのは言い訳ですし、文句があるならルールを決める時に言うべき、というのが米国流です。

奇しくも、今年日本シリーズに出場した阪神タイガースと、ワールドシリーズに出場したカンザスシティ・ロイヤルズは、いずれもワイルドカードから29年ぶりの優勝を狙っています。アップセットはスポーツ最大の醍醐味とも言いますし、今年も日米の野球界から目が離せません。

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