日本の防衛は大丈夫か

アパッチ攻撃ヘリの調達、なぜ頓挫?

問われる陸自の当事者能力

米同盟国の間で配備が進むアパッチ

台湾は米国から導入した米陸軍も採用している最新型攻撃ヘリ、AH-64E(愛称:アパッチ・ガーディアン)、30機の調達を本年10月に完了した。はじめの機体が納入されたのが、2013年11月であり、わずか1年ほどですべての調達を完了したことになる。

調達価格は30機で約2000億円である。1機あたり67億円だ。韓国もこのAH-64E、36機を2016年から2018年までに1兆8000億ウォン(約1577億円)導入決定することを決定している。

対して、陸上自衛隊は2005年からE型の前の型であるAH-64D(アパッチ・ロングボウ)の導入を開始した。ライセンス生産により、当初62機が調達される予定だったが2013年度まで9年をかけて、わずか13機調達したところで中止。調達は実質的に失敗だった。

英国はアパッチをどのように配備したか

AH-64D(アパッチ・ロングボウ)

陸自の調達手法の問題を指摘する前に、同じくライセンス生産をした英国の例を見てみよう。

英国防省は1995年にAH-64Dの採用を決定し、日本とほぼ同じ67機のAH-64Dのライセンス生産を契約、約7年で生産を終えている。英国防省の調達単価は約60億円であり、平均単価が約80億円の陸自のAH-64Dよりも安い。

英軍のAH-64Dは独自仕様が多い。ロールス・ロイス社製のエンジンなど自国製のコンポーネントが多く使用され、内製化されたパーツも多かった。その分、コストは高いはずだ。対して我が国のAH-64Dはコンポーネントの多くが輸入でライセンス国産というよりも実質、組み立て生産に近いものだった。

また陸自のネットワーク化の根幹と位置づけられていながら、コスト削減のためか、NATO や海自の護衛艦や空自のAWACSなどで使用されている戦術データリング・システム、リンク16が搭載されていない。

つまりAH-64Dの最大のセールスポイントであるネットワーク機能が極め低く、米軍とまともな共同作戦が取れない「モンキーモデル」である。この点を加えれば英国製のAH-64Dとの実質的な調達単価の差は、さらに開くことになる。

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