2015年秋に山手線の中吊り広告消滅 電車広告の未来図を予測
NEWS ポストセブン 11月2日(日)7時6分配信
|
山手線の中吊り広告消滅の影響について分析する品田英雄さん |
2015年秋以降、山手線の車内から消える予定の電車の中吊り広告。導入される新型車両には、窓上に13〜20面の液晶画面が配置されるという。中吊り広告は「情緒があった」と消滅を惜しむ声や『AERA』の中吊りの名物だったダジャレキャッチコピーのファンらが残念がる一方、「下品」「うるさい」と賛成の声も。実際、電車の中吊り広告が消滅することによる影響とは? トレンドウォッチャーで『日経エンタテインメント!』編集委員の品田英雄さんに分析してもらった。
「中吊り広告の面白さは、雑誌にありました。特に週刊誌のタイトルは、テレビで“中吊り大賞”として取り上げられるほど、乗客の気を惹いて読ませるキャッチコピーは秀逸でしたし、大きな情報源でもありました。また、ビジネス誌の硬い中吊りの隣に『週刊SPA!』が並んだりする雑多な面白さがあり、世の中で何が起きていて何が面白いのか、いろんな角度から教えてくれましたね」(品田さん、以下「」内同)
それが2000年代に入って雑誌広告が減少し、さらにスマホの普及により乗客側の風景は一変。品田さんは「車内でスマホや携帯を見ている人は肌感覚で6〜7割」とし、雑誌の中吊りが衰退した時点で乗客の行動が変わったことは大きな契機だったと語る。
「車内吊りがデジタル広告に変わったら、おじさんたちが若い子のファッション用語を知る機会はますます減りますし、男性週刊誌のHな特集の話題もなかなかできなくなります。それに中吊り文化は、世界的に見ても日本特有でしたので残念ですね」
デジタル化によって制作コストや時間を低減できるほか、スペースが決まっている中吊り広告と違い、1か所に多くのクライアントを入れられ媒体料金も安くなる。さらに、より細かなターゲットに向けて路線ごと、または時間帯や天気によって変えられるなどのメリットもあるという。
「車内の風景は一変しますし、可能性が大きく広がるのは間違いありません。電車の中にも“ネット革命”が起きている。作り手側から見ると、いろんな可能性があり面白い広告が作れる。もっと言うと、スマホと連動して車内で商品を購入できるようになるなど、物の売り方も変わるのではと盛り上がっています」
とはいえ、そこにはスマホに対抗できるようなアイデアが求められると品田さん。
「せっかく電車という閉じられた空間で人の関心を掴むチャンスがあっても、自分の好きなものだけを見たり聞いたり楽しめるスマホよりも興味を引くものでないと、あっという間に飽きられます。こんなに時間奪い合い戦争になっている中でスマホに負けないためには、お金をかけてアイデアを出して画期的なことをやらなくては。一方、それによる経済効果も期待できると思います」
スウェーデンでは、駅のホームに電車が入ってくると柱のデジタルサイネージの映像に映る女性の髪が風になびく広告が話題に。女性ファッション誌『CanCam』は、電車が入ってくると専属モデル・山本美月の髪とスカートが風にふんわりとなびくPRを行った。またエルメスは、映像の女性が息を吹きかけると隣にディスプレイされたスカーフがふわりとする仕掛けが話題を呼んだ。
「風景と連動する感動をデジタルサイネージは演出できることに気づいた時には、すごい!と思いました。電車内全体でそんな風にできたら、ディズニーランドのアトラクションみたいになりそうですね。例えば、京葉線に乗っていて、海が見えたら海とマッチするような動画になるなど、さまざまな車内風景を演出できると思います。
ニュースと天気予報の配信だけではつまらない。例えばソフトバンクのCMのようにみんなを面白がらせることができたら、商品のターゲット層以外の本来、商品に興味を持っていなかった人もキャッチできるはず。今までとは違う枠組みを作り手側は考えるべき」
しかし、良い面だけではなく「沿線格差」という弊害が起きる可能性があるとの分析も。
「ローカル線には現状、広告が全然入っていないし、都営の地下鉄の広告も丸ノ内線や銀座線など主要の路線に比べると安っぽさがあります。僕は田園都市線に乗った時の広告の高級さに腹が立ちますね(笑い)。まさに、沿線格差が生まれています。山手線でも区間によっては、駅格差が起きますし、西半分と東半分とでは流れる広告が全く違うなんてことになる可能性もあると思います。
しかし、スマホを使ってツイッターとも車内連動できたら面白いですし、駅ごとに謎を仕込んで謎解きをするイベント列車とか、乗客を巻き込む参加型のものがあったらまた乗りたくなりますよね。ポイントがたまるとか、この駅で見つけた○○を出したら10%引きとか、ドリンク1杯サービスとか…、人を動かすような仕掛けをたくさん作って、さびれがちな線でもあえて乗りたくなるような企画で盛り上げていってほしいですね」
最終更新:11月2日(日)17時29分
読み込み中…