世界自然遺産に登録されている小笠原諸島(東京都)の周辺海域で、中国のサンゴ密漁船とみられる外国船が急増している。密漁の対象となっているのは中国などを中心に高値で取引されているアカサンゴ。地元漁業者の漁具が壊されるなどの被害も出ており、海上保安庁は取り締まりの強化に乗り出した。
海上保安庁によると、小笠原諸島の周辺海域では9月から中国船とみられる外国漁船が急増し、9月23日に25隻、10月13日に46隻を確認した。大挙して現れる外国漁船は200トン級などの大型船が多く、日中から堂々と航行しているという。
今月5日には横浜海上保安部が、父島近くの領海で操業していた中国のサンゴ密漁船を摘発。外国人漁業規制法違反(領海内操業)容疑で中国人船長(39)を逮捕した。
小笠原諸島の漁業関係者によると、密漁の対象は磨くと美しい光沢を放つアカサンゴ。同諸島や高知、長崎、鹿児島、沖縄各県周辺の沖合、水深100~200メートルの海底に自生している。
アカサンゴは装飾品として中国や台湾の富裕層に人気で、小笠原産の原木は1キロ当たり150万円前後の高値で取引されているという。
中国近海での採取が禁止されていることが日本近海での密漁につながっているとみられる。海上保安庁は「沖縄周辺で活動していた船が小笠原諸島に移動してきた」とみて、大型巡視船や航空機を集中的に投入して取り締まりを強化する。
アカサンゴが自生する場所にはハマダイやハタといった高級魚も生息しており、地元漁師にとって重要な漁場だ。しかし、多数の密漁船が重りを付けた網を海底に垂らし海流でサンゴが引っかかるのを待つため、漁具が壊されるなどの被害が出ているという。
東京都によると、周辺海域では約30年前にも密漁船にサンゴが乱獲された。都が小笠原諸島でのサンゴ漁を許可しているのは地元の4業者だけだ。都の担当者は「海底の環境が回復してアカサンゴが成長し、ようやく地元のサンゴ漁が復活してきたところだったのに」と話している。〔共同〕
サンゴ密漁船、取り締まり