バイク便ライダーのAさん(39)は今年2月、ソウル・東大門市場近くの空き地で集団暴行を受けた。屈強な男20人以上に囲まれてほおをたたかれたり、胸をけられたりした。後で分かったことだが、東大門市場のバイク便業者は、この辺りを縄張りとする暴力団員に定期的にみかじめ料を払わなければ仕事ができないのだという。Aさんを最も多く殴った2人はみかじめ料を取る地元の暴力団員で、その周りを囲んで脅したのは地元の暴力団員が仕切っている市場の配達業者たちだった。Aさんはそれ以降、東大門市場に近寄らなくなった。
「韓国のファッション1番地」と呼ばれている東大門市場で、バイク便ライダーたちはヤクザ映画にでも出てきそうな暴力団員の横暴にさいなまれてきたことが警察の調べで明らかになった。
ソウル中部警察署は「東大門のバイク便ライダーから毎月みかじめ料を取り、ほかのバイク便ライダーの立ち入りを暴力で阻止してきた貞陵東組の構成員の男(38)や踏十里組の構成員の男(30)ら地元暴力団員5人を書類送検した」と10月31日発表した。
38歳の男と30歳の男は2007年から6年7カ月にわたり、東大門市場でバイク便・配達業をしているY社やS社など4業者所属のライダーからみかじめ料として毎月300万ウォン(約30万円)ずつ、合計1億7000万ウォン(約1700万円)を上納させた疑いが持たれている。2人は市場を歩き回り、顔見知りでないバイク便ライダーを見つけては脅迫したり、集団暴行を加えたりしていた。東大門市場にこうした上納システムがあることを知らず配達に来たバイク便ライダーは、訳も分からず災難に遭っていた。
2人と共に立件された56歳の男と54歳の男も、バイク便ライダーが集まる待機場所に来ては暴力で脅した。いい場所を占領し「オレは昔からここを仕切っていた」と脅迫、自分たちにみかじめ料を払っていないバイク便ライダーを追い返した。 2人合わせて前科36犯で「東大門組の元祖、イ・ジョンジェ兄貴の系譜を受け継いでいる」と触れ回っていたという。
暴力団員たちが同地域で6-7年間も同様の行為を繰り返しながらこれまで摘発されなかったのは、みかじめ料を払っているバイク便ライダーや配送業者らが暴力団員たちとグルになり、通じていたためと警察では説明した。警察関係者は「市場のバイク便ライダーや配達業者たちは、それぞれいい場所を取ろうとして暴力団に上納していた。その構造が定着してしまっていた」と話している。