あすは文化の日。

 ひとの精神の営みが生み出す文化、その成果が集う場・博物館について考えてみたい。

 京都国立博物館に、この秋、「平成知新館」が開場した。

 16日までの記念展「京(みやこ)へのいざない」には、〈ズラリ国宝、ずらり重文。〉のキャッチフレーズ通り、絵画、彫刻、工芸などの名品が並ぶ。ぜいたくな内容だが、これは平常展。一般520円、高校生以下や70歳以上は無料で見ることができる。

 博物館での催しというと、例えば「国宝 阿修羅展」のような特別展が注目されがちだ。貴重な美術品や文化財を、テーマに沿って鑑賞できる特別展は意義深いし、博物館にとっても集客の柱である。

 だが近年、東京、京都、奈良、九州(福岡県太宰府市)と全国に四つある国立博物館が平常展示に力を入れていることにも注目したい。

 国立4館にある13万点を超える文化財を活用して展示を工夫し、見学者を増やすのが狙いだ。東京では正月や花見に合わせた企画を恒例にし、九州では子供が楽しめる体験ゾーンに力を入れるなど、親しみやすさも重視している。

 2001年に独立行政法人化し、経営努力が求められる中での動きだが、多くの利用者にとっても好ましい変化だ。博物館ならではの語り口で、文化財の美や価値がより広く、分かりやすく紹介されるといい。

 日本美術の素材は紙や絹など弱いものが多いため、国宝の博物館での展示は、原則年60日以内などの制限がある。そのため博物館では、頻繁に展示替えをしている。名高い文物をいつも見ることはできないが、次々と新鮮なものと出あえるともいえる。平常展示という「素顔」と、その表情が多彩に変わることを楽しむ博物館との付き合い方が広がってほしい。

 博物館のサービス向上はいいことだが、公開・活用に手を取られすぎて、保存や研究が手薄になり、将来に問題を残すことになっては元も子もない。各館が得た収入の使い方の自由度を上げるなどやり方を考えて、人材を充実させる道をさぐるべきだろう。

 情報発信も十分ではない。

 ホームページや音声ガイドなどで、詳しい解説を多くの言語で提供することも必要だ。遠来のお客さんの期待に応えたり、教育に活用したりするために、名品の精巧な複製の利用も広がるといい。こうした点には、観光予算などからの支援があってもよいのではないだろうか。