拉致問題などの調査の現状を聞くため、北朝鮮を訪れていた日本政府代表団が…
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拉致問題などの調査の現状を聞くため、北朝鮮を訪れていた日本政府代表団が帰国した。
北朝鮮側は「過去の調査結果にこだわらず、新しい角度から調査を深める」との方針を明らかにしたという。
日本政府が拉致を認定しているのは17人。北朝鮮はかねて、すでに帰国した5人を除くと「8人は死亡、4人は入国していない」としてきた。
「新しい角度からの調査」とは、その主張が変わることを示唆しているのか。拉致問題を「解決済み」としてきた従来の姿勢を変える考えがあるのか。
そこはまだ見通せない。何とももどかしい情勢が続く。
代表団によると、拉致被害者らの具体的な安否情報は一切、示されなかったという。
北朝鮮側は代表団を迎える前から、「(調査は)初期段階であり、具体的な結果を報告できる段階にはない」としていた。だが、徹底した情報管理下にある国で具体的な情報がまったくないとは考えにくい。
代表団から説明を受けた被害者の家族から、不安や失望の声が漏れるのは当然だ。
ただ今回、北朝鮮が日本との対話を続ける意思をもっていることは確認できた。秘密警察機関の幹部を兼ねる特別調査委員会の委員長を公の席にさらすという異例の措置もみせた。
日本が拉致問題を最重要課題として掲げ続けている決意を直接示したことも併せ、代表団の派遣に一定の意義はあったと言えるのではないか。
肝心なのはこれからである。
日朝は互いに根強い不信感を抱いたままだ。日本政府は、新たな対話のパイプも駆使して粘り強く説得を重ね、この深刻な人道問題を解決へ向けて少しでも前進させねばならない。
ことし5月の日朝合意では、日本人の遺骨やいわゆる日本人配偶者問題などの調査を北朝鮮が「包括的かつ全面的」に実施することが盛り込まれた。そうした懸案も重大な人道問題であり、一刻も早い具体的な情報開示が望まれる。
大切なのは「行動対行動」の原則を忘れないことである。
北朝鮮が時間稼ぎをしたり、拉致問題以外の問題だけを小出しにしたりする場合、期待通りの見返りは与えられないということを認識させ、誠実な対応を迫る必要がある。
被害者や家族の年齢などを考えれば、拉致問題は時間との戦いでもある。政府は今回の協議の内容をしっかりと分析し、次回対話のできるだけ早い開催をめざすべきだ。
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