安倍政権の女性登用政策を毎日新聞が批判している件で
山本 一郎 | 個人投資家
山本一郎です。ちょうどドル資産を積み直したところで日銀さまが異次元砲撃をしてくださりいろいろ助かりました。ありがとうございました。
ところで、毎日新聞が突然「安倍晋三内閣に女性活躍担当相が置かれ、「女性活躍推進法案」が閣議決定されても、「女性活躍」という言葉に違和感を感じてしまうのはなぜ?」とかいう問いかけで安倍政権批判の座談会をやったというので話題になっておりまして、もちろん興味がありましたので読みにいきました。
特集ワイド:続報真相 座談会 「女性活躍」の違和感 なぜ?(毎日新聞 14/10/31)
確かに首肯する部分もありますし、興味深い記述もあります。女性進出をわざわざ政治の中核のスローガンに掲げるのはどういう理由か、というのは、左翼ならずとも気になる部分であります。海外に比べて日本は女性の社会進出が出遅れているという指摘がかねてからあるので、それを踏まえての女性活躍推進法案であるならば、むしろ批判するよりもこれに乗じて女性の後押しをするのも手なんじゃないのとは思いましたが、一方で他ならぬ女性閣僚のスキャンダル辞任で打撃を喰らった安倍政権に対する槍玉という点では面白い鼎談でした。意見が異なる人でも「まあそうだな」ぐらいには読めるいい記事じゃないでしょうか。
ただ、そういう紙面で安倍政権に対する批判を加えている当の毎日新聞を含む新聞業界というのはオトコ社会でありまして、むしろちゃんと女性を活躍させる新聞社にしていかないと単なるブーメランになりかねません。
メディアへの女性進出が進む米国 編集トップ3に「女性が1人以上」の新聞社は63%(キャリコネニュース 14/11/1)
ある意味、新聞記者というのは知力と体力を兼ね備えてないと成立しない職種でもあり、その前線に立つ記者の仕事は男性がメインになる業界構造は仕方がないとは思います。それは割り引いた上で、然るべき世界で女性の進出を促すにあたっては、単なる同権意識だけでなくどのような方法論があるのかも考えなければ駄目なのでしょう。そもそも入社の時点で男性の数が多い新聞社が、女性進出を促す政権の方針を論難するよりは、日本の社会構造全体の問題として共に考えて改革の道筋をつけるぐらいの勢いでないと意味を持たないのではないかと思ってしまいます。
新聞業界も政治の世界も上を目指そうとすると男性優位の社会構造を打破しなければならないし、女性は出産や男性に比べて体力的に劣るケースが多いというハンディもある以上、その能力をどのように見極め活かしていくのか社会全体で考えていかないといけません。むしろ、毎日新聞が女性の登用を強力に推し進め、政治の世界以上に女性進出が果たせていれば、おのずから本件に関する発言も説得力を増すのではないかと思うのですが、如何でしょうか。
この辺とか、政治姿勢の右左を問わず「そうですよね」と思うような議論もきちんとされており、もう少し広く問題意識が伝わるような一工夫が欲しいなあと思った次第です。やはり、平等と正義は違うんだって話から、女性進出の話は整理するべきだと感じます。
ここで貧困の話をメインに持ってくると「じゃあ、力量の乏しい女性を数合わせの末に管理職や指導者のところに政治的に就けることがいいですか?」という話になるわけですよ。これだと、むしろ力のある女性からすれば女性内格差で能力を発揮しなくても昇進できるという別の問題を起こしてしまいます。
要はバランスであり、能力のある女性は社会的に昇進を平等にきちんとでき、能力のない女性でも社会進出の希望があればその機会が与えられる、という政策を志向しろ、という話なんじゃないかと理解するわけですけれども、これらを行政や政策に落とし込むと極論になりがちで、有識者の言いっぱなしになって終わるケースも多いと思います。そこを何とかして欲しい、と思うわけですね。
女性の社会進出に反対する人は少数だと思います。ただ、それを奨励するにあたっては、国民全体が納得できる仕組みにするべきで、それはなんなのかをしっかり模索できるような議論ができることを期待してやみません。