終戦記念日対談
金子兜太さんといとうせいこうさんが「俳句」から戦争と平和を語り合います
【放送芸能】社長と女性社員が異色のタッグ 南海放送ラジオドラマ「風の男 BUZAEMON」江戸時代に起きた農民一揆をモデルにしたラジオドラマが、本年度の日本民間放送連盟賞のラジオエンターテインメント番組最優秀に輝いた。ラジオ番組の制作に力を入れている南海放送(本社・松山市)の社長が脚本を書き、報道記者出身の女性社員が劇中音楽を作詞、作曲した「風の男 BUZAEMON」。異色のコンビはなぜ実現したのか。番組誕生の舞台裏を探った。 (安田信博) 全社員が参加した昨年暮れの納会で、一人の女性社員が余興でラップミュージックを披露した。権力の横暴、偽りの正義を自作のラップで糾弾する、鮮烈なパフォーマンス。叫びの主は、報道記者出身で、今はディレクターの津野紗也佳(さやか)さん(27)だった。 「体がゾクゾクするような感動を覚えた」と田中和彦社長(60)=当時常務。ラップには漠然と不良の音楽というイメージを抱いていたが、「目を見開かされる思いだった」。 田中社長は一九七七年に入社以来、深夜番組のDJを約二十年も務めるなど、ラジオとのかかわりが深い。八二年からは「ふるさと再発見」と銘打ち、地元の史実に基づくラジオドラマの脚本、制作も手掛けてきた。「松山ロシア人捕虜収容所外伝『ソローキンの見た桜』」は、二〇〇五年の第一回日本放送文化大賞で全国グランプリに輝いている。 その田中社長が何年も前から温めていたテーマが「武左衛門(ぶざえもん)一揆」。江戸後期の寛政五(一七九三)年、現在の愛媛県西南部にあたる吉田藩で起きた一揆で、農民が勝利した極めてまれな例として知られる。「ちょんがり」という独特の節回しの“世直し歌”が、勝利の原動力だったと伝えられている。 「ちょんがり」の精神をラップで表現したら、斬新で面白いドラマができるのではないか。津野さんの叫びを耳にした瞬間、ひらめいた。閉塞(へいそく)感漂う現代にもぴったりくるはず−。「農民の悲哀、一揆の心意気をラップにしてくれないか」と声をかけた。 江戸時代のドラマと聞いて初めは戸惑った津野さんだが、大まかな脚本を知って「ぜひやらせてください」。一晩でラップの歌詞を書き上げ、二週間かけて音楽をつけた。 ♪強い力がすべて制す いつの時代も変わらないなら 僕らは立ち上がる力を携えて Let’s go to the World… 韻を踏んで語るように歌うラップミュージックが、脚本と絶妙に調和。民放連盟賞の審査員をうならせた。作品は年内にも再放送予定。 ◆記者の経験が財産 津野紗也佳さん南海放送の津野さんは入社五年目。慶応大在学中はラップをつくり、三人組ユニットでライブ活動も行った。卒業後、故郷に戻って就職。報道記者としてさまざまな事件に遭遇し、いろいろな人々に出会った。「報道での経験が大きな財産になりました」と話す。 昨春、ディレクターに。ラジオの音楽番組でDJも務め、ゲストとのトークも披露。「社会で声を上げられない人が、自分の思いをのせて伝えられる有効なツールがラップ。リスナーからも好意的な反応が寄せられています」 「Cha−ka(チャーカ)」の芸名でライブも行う。権力の横暴や、世の不条理に異を唱える“社会派ラッパー”が理想。ラップ系の四人組・ケツメイシによる「三代目ケツメイシオーディション」に挑み、千五百人の中から最終メンバー九人に選ばれた。来春までにメジャーデビューの予定。「社員との両立目指して頑張ります」 ◆語りは良薬のよう 田中和彦社長南海放送は、テレビのドキュメンタリーを中心に数多くの国内外の賞を受賞し、ドキュメンタリー映画も独自製作するなど、地方局の中でも、制作力の高さで一頭地を抜くテレビ・ラジオ兼営局だ。多くの兼営局がラジオをお荷物扱いにするなか、自社制作比率は60%近い。田中社長は「ラジオの語りには、漢方薬のように人の体にじわっとしみ込む力がある。その良さをテレビに生かすためにも、ラジオには手を抜かない」。 十二月一日には民放のトップを切って「FM補完中継局」を開局し、番組をFM波でも同時に流す予定。難聴、災害対策として総務省が推進する施策にいち早く応じた。ネット経由でラジオを聴く「ラジコ」が若年層を中心に普及していることも意識しての意欲的な試み。「音質の良さなど、FMの特性に合った番組作りを進める。改編ごとに大きく変わる南海放送のラジオ番組に注目してほしい」 <「風の男 BUZAEMON」> 伊予国吉田藩で一揆が起こる。首謀者の武左衛門が世直し歌「ちょんがり」を歌いながら、村々を回ると、9600人の農民が立ち上がった。藩はいったん一揆の要求をのんだが、逆襲をかける。武左衛門は捕らえられ惨殺される。 PR情報
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