視聴率に見る日本シリーズとワールドシリーズの熱狂度(第787回)
ワールドシリーズが最終第7戦までもつれこんだのとは対照的に、日本シリーズは第5戦で決着がついた。観客動員面は収容人員を越える観衆を飲み込んだメジャー2球場に対し、日本プロ野球では有料入場者として、シーズン中より1000人程度少なくなるのが通例。甲子園は約1000人ほど少ない4万5000人超を飲み込んだが、クライマックスシリーズから空席が目についた福岡ソフトバンクホークスの本拠地ヤフオクドームは、チケット完売だった第5戦でも、3万6068人がやっと。人気の高い阪神タイガースが相手で、個人的には2000年第5戦の同球場のシリーズ最多3万6787人を抜くかと期待したが、シーズン中よりも2500人以上少なかったのにはちょっとがっかりさせられた。
それ以上に伸び悩んだのがビデオリサーチ社の伝えている視聴率ではないだろうか(視聴率のカウント方法がすべて現状を表しているかは難しい問題だが、今回はその視聴率をベースに書いていく)。同じ対戦だった2003年はタイガースが18年ぶりの出場ということもあって関東地区でも第2戦を除きすべて20%越えだった。しかし、あれから11年。野球離れが進んでいるということもあり、関東地区が盛り上がらないのはシリーズ前から予測されていた。最高視聴率はNHK―BS1が5試合中唯一中継しなかった第1戦の11・8%。第3、第4戦が10%割れとは放送関係者、球界関係者にとってショックだったのではないだろうか(ちなみに最近20年間の最低は千葉ロッテマリーンズ対中日ドラゴンズが戦った第3戦の6・8%)。
関東だけでなく、両チームの本拠地のある関西、北部九州両地区でも数字が伸びなかった。2003年の関西地区は完敗した第7戦が月曜日に当たって16・7%と落ち込んだものの、7試合で40%超え1度、30%超え計5試合。北部九州は7試合中6試合が30%超え(第6戦は44・6%)だった。タイガースが2005年にマリーンズに4連敗した2005年も関西地区では2試合が30%超え、ホークスが直近で出場しドラゴンズと戦った2011年の北部九州地区は、第1戦こそ25・8%だったが、以降すべて30%超えで第7戦は44・4%を刻んでいた。プロ野球は地方の時代と言われ、根付いているはずの人気両チームの地元で予想外の視聴率の伸び悩みだった。
一方、メジャーリーグも全米視聴率の落ち込みが激しいことが知られている。かつては30%台を超えたこともある平均視聴率は1993年以降は20%割れ、2008年に初めて1けたに落ち込むと、2010年以降1ケタ台が続いている。サンフランシスコ・ジャイアンツとカンザスシティー・ロイヤルズで戦った今回も第6戦で終わっていれば、2年前のジャイアンツがデトロイト・タイガースを4連勝で破った平均7・6%を下回っていた。しかし、第7戦が1点差の接戦となって13・7%と2011年第7戦以来となる視聴率をはじき出して7戦平均は8・2%に戻したのだった。
それでは日本より低いではないか、と思われるが前回のブログでも書いたように両チームの地元では違う。最終戦はカンザスシティー地区が58・3%。サンフランシスコでも38・8%と急上昇したのだった。ちなみに昨年ワールドチャンピオンとなったボストン・レッドソックスでも優勝を決めた第6戦のボストン地区は55・2%。29年ぶりにシリーズに進出したカンザスシティーのファンがいかに熱狂していたかは、この数字を見ただけでもうかがえる。
タイガース、ホークスと読売ジャイアンツに次ぐ観客動員2位、3位のチーム同士での対決でこの数字になった現実を、プロ野球界関係者は真摯に受け止めなくてはいけないのではなかろうか。
コメント