山陽日日新聞ロゴ 2003年7月12日(土)
1953年当時の本紙記事から(4)
見物客で駅は大混乱に
 女優原節子、東山千栄子は後入り
小津安二郎監督生誕100年記念の会見
 映画『東京物語』の尾道ロケーションは、1953(昭和28)
年8月のお盆から一週間ほど行われた。当時の紙面からは、市民
の熱烈な歓迎振りがうかがえる。国民的な人気女優だった原節子
は、一陣より遅れて尾道入りしたが、降車する予定だった尾道駅
には一目姿を見ようとする見物客が殺到、あまりの混乱ぶりに急
きょ西隣の糸崎駅までやり過ごし、タクシーで尾道へ、その足で
旅館竹村家に入り込んだ、という逸話が残っている。

 8月15日(土)付け2面−
[見出し]押しかけたファン五千 ロケ当日の混雑思いやらる
 「東京物語」俳優陣来る
[本文]
 松竹映画大船撮影所が秋の超大作として待望のファンに贈る
「東京物語」の俳優陣は既報のとおり、十四日午後零時四十五分
尾道着の広島行き急行「安藝」で尾道に乗り込んできた。
 この日は約一時間前から駅前を埋めつくしたファンの波でごっ
たがえして、春の港まつりを思い出させる雑踏ぶり。笠智衆、香
川京子らは一般インテリ層にまで支持を持っているだけに、手に
手に下げたカメラの包囲をうけ、女性はサインを求めようと手に
手にサインブックを持って押し寄せ、遂に下りホームにまで詰め
掛けた。午前十一時から尾道駅で発売した入場券は約二十分で全
部売切の盛況で、両人の姿を見んものとするファンの混雑のため、
あちこちで迷子が続出、その泣声で尾道市警から臨時に繰り出さ
れたお巡りさん達は、交通整理と共に迷子の處置に大童となって
汗ダクに。
 笠、香川を中心とした俳優陣は原節子、東山千栄子の両人を除
き、これで一応全員が来尾したことになり、きょう十五日の日の
出と共にロケーションが始められる。なお来尾した両人は次のご
とく語った。
◇笠智衆氏談話「観光尾道の美しいことは兼ねてより聞いていた
が、今度きて一層そう思った。ロケの合間を見て、風光明媚な尾
道をじっくり見たい。阪妻さんは惜しいことをしました。同氏は
日本の映画史上最大の異彩ある俳優だった」。
◇香川京子さん談話「とても疲れましたし、たくさんのファンに
迎えられて大変嬉しく思っております。この映画は今年の傑作の
一つに数えられると思いますので、御期待下さい」。
 (=写真は松竹提供。小津監督の生誕100年記念イベントに
ついて同社が昨年、会見した時の記念写真。右から3人目が香川
京子さん)。

感謝:当ホームページは松竹広報様より生誕100年記念ロゴの使用を
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