首相「現在解散は全く考えていない」10月30日 19時11分
安倍総理大臣は、衆議院予算委員会の集中審議で、国際社会ではエボラ出血熱や「イスラム国」への対応などが大きな議論になっていると指摘して、政策課題への対応を優先する姿勢を示したうえで、「現在、衆議院の解散・総選挙は全く考えていない」と述べました。
国会は30日、衆議院予算委員会で、経済と財政などをテーマに集中審議が行われました。
この中で、安倍内閣の閣僚の政治資金を巡る問題について、▽民主党の枝野幹事長は「小渕前経済産業大臣の辞任には、安倍総理大臣自身が任命責任を感じていると言っている。
総理大臣として、そのほかに指摘されていることを、もっと誠実に早くきちんと説明すべきだという指示はしてきたのか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「しっかりと説明すべきだと指示しており、各大臣もそのように説明していると承知している。
その中で十分に説明が理解できないという指摘があれば、誠実に答えていくのは当然の責務だ」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は、国会審議では経済政策をはじめ政策論議により時間を割くべきだという考えを示しました。
▽維新の党の今井政務調査会長代理は、大塚国土交通政務官が代表を務める自民党の支部が、在日外国人の男性から献金を受けていた問題を指摘し、「過去に民主党の前原元外務大臣が辞任したケースと同じだ。
当時、自民党は『大臣を辞任すべき』と要求していたが、基本的には同じ考えか」と質問しました。これに対し、安倍総理大臣は「よく整理していく必要がある。
外国人と認識して献金を受けたということであれば明確に違反する」と述べ、大塚氏は、外国人とは認識していなかったとして、政務官としての適性に問題はないという考えを示しました。
また安倍総理大臣は、宮沢経済産業大臣が代表を務めていた自民党の支部が、外国人が株式の過半数を持つ企業から政治献金を受けていたことについて、「宮沢大臣は当該の人物をほとんど知らず、法人名から外国人が過半数の株式を保有することは分からない。
経営者は日本名を使っていたこともあり、そこからは類推できないということで、問題の本質はずいぶん違う」と述べました。
そして安倍総理大臣は、安倍内閣の閣僚の政治資金を巡る問題を受けて、衆議院の解散・総選挙も念頭に置いているのではないかと質問されたのに対し、「国際社会ではエボラ出血熱やイスラム過激派組織『イスラム国』の問題、世界経済にどう協力して対応していくかが大きな議論だ。
そういうなかで、現在、解散は全く考えていない」と述べました。一方、来年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げを巡って、▽公明党の伊佐進一衆議院議員は「今の景気動向を見ると、デフレ脱却を今後、確実にしていくという観点からすれば、今年度の補正予算案を編成すべきではないか」と指摘しました。
また▽みんなの党の佐藤選挙対策委員長は、「デフレ脱却には、安倍総理大臣が言われる『気』がものすごく大事で、その『気』に水をかけてはならない。
実質賃金と物価上昇率に差がある間は増税すべきではない」と指摘しました。
さらに▽生活の党の畑政策審議会長は「増税は税収をしっかりアップさせることを目的としており、経済がダメになって、税収が思ったほど上がらなければ、上げた意味が無い。
どのような条件が満たされれば、10%に上げるという判断をするのか」とただしました。
こうした指摘や質問に対し、安倍総理大臣は、「消費増税の判断については、マクロ経済の専門家などにお集まり頂いて、ご議論頂きたいと思う。
その中の分析では、7月から9月のGDP=国内総生産が成長軌道に戻っているかどうかも重要だ。個人消費の状況や経営者のマインドがどうなっているのか、設備投資がどうなっているのかなどもよく分析していきたい」と述べました。
北朝鮮による拉致被害者らの調査を巡る北朝鮮の特別調査委員会と日本政府の代表団との協議について、▽自民党の河村元官房長官は「北朝鮮では拉致問題の協議が行われたが、今の状況や思いを述べてほしい」と質問しました。
また▽次世代の党の中田国会対策委員長は「今回、日本政府の代表団がピョンヤンを訪問した最大の目的は、わが国は北朝鮮との関係で拉致問題が最優先だとしっかり伝えることだ。
安倍総理大臣は代表団に明確に指示したのか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「残念ながら『誰かが生存している』とか、『この人は帰す』といった回答を得ることは今回は不可能だと承知しているが、特別調査委員会の責任者に拉致問題が最優先であることなどを直接、伝えることに意味があると考えた。
同時に、かつて北朝鮮が伝えてきた『8人死亡』の資料には疑問があり、たくさんの疑問点を北朝鮮にぶつけてきている」と述べました。
鹿児島県にある川内原子力発電所の再稼働について、▽共産党の笠井政策副委員長は「川内原発周辺には巨大噴火の可能性がある5つのカルデラがある。
九州電力はみずから巨大噴火を予知して、予知された時点で原子炉を止めて核燃料を運び出すとしているが、この予知にどういう科学的知見があるのか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「九州全域に壊滅的な被害をもたらすような破局的な噴火は、原子力規制委員会が地下マグマの状況や過去の噴火履歴などを総合的に検討した結果、川内原発の運転期間中に起こる可能性は、十分、小さいと判断している。
現在の状況に変化がないことを継続的に確認するため、火山活動のモニタリングを実施することにしている」と述べました。
また安倍総理大臣は、2015年度に「基礎的財政収支」の赤字を2010年度と比べて半減させるとした政府の財政健全化目標について、「いわゆる国際公約とは違う。
経済なので何が何でも絶対にという約束は果たせないが、国際的なコミットメントをしっかりと実現していくために、最大の努力を払わなければならない」と述べました。