〔BOJウオッチャー〕黒田日銀総裁の増税タカ派度、トーンダウン
[東京 31日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁の消費税をめぐる発言が変化した。昨年の夏以来、財務省よりタカ派と呼ばれるほどに消費増税による財政再建の重要性を繰り返し発言してきたが、31日の会見では「関与するところでない」とトーンダウンした。政府の増税判断をめぐる動きと関連した事象なのか注目される。
黒田総裁は今年4月の増税の是非が議論された昨年夏以来、「消費税引き上げを行った場合のリスクに対しては財政・金融政策で対応が可能だが、行わなかった場合のリスクが顕現化した場合、なかなか対応しがたい」と繰り返してきた。
今年9月の定例会見では、増税を見送る場合「確率は低くても、その影響は甚大なものになる可能性があるという意味では、リスクが大きい」と断言した。
増税判断は政府の専権事項で、日銀がみだりに口をはさめばリスクがあるとの見方が、政府・与党や日銀周辺にあったのも事実。そうした中で黒田総裁の発言は、目立つ存在でもあった。
一方、安倍晋三首相周辺では増税延期論がくすぶっており、首相の経済ブレーンである内閣官房参与の本田悦朗・静岡県立大教授は、黒田総裁の増税発言について「日銀総裁の矩(のり)を超えている」と痛烈に批判していた。
31日の会見では、政府が消費税率10%への再増税を決断する前に追加緩和に踏み切った経緯と、増税への見解を求められ、「再引き上げは、政府で経済動向を見極めて決定するということになっており、それはまさに政府で決定されることであり、わたくしどもの関与するところではまったくない」と発言。「従って、(政府の増税判断に)影響を与えようとか、どうこうしようと言うつもりもないし、そのようなことにもならない」と述べた。 (竹本能文 編集:田巻一彦)
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