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2014-11-01

薄氷の上のリフレ政策

00:15 | 薄氷の上のリフレ政策を含むブックマーク

10月31日(ブルームバーグ):日本銀行は31日の金融政策決定会合で、追加緩和に踏み切ることを5対4で決めた。長期国債の買い入れを「保有残高が年間約80兆円に相当するペース」に増やすほか、指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J−REIT)の買い入れも「それぞれ年間約3兆円、年間約900億円に相当するペース」に拡大する。

マネタリーベース目標額は「年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」として、従来の「年間約60兆−70兆円」から引き上げた。今会合まで長期国債は「保有残高が年間約50兆円に相当するペース」で、ETFとJ−REITはそれぞれ年間約1兆円、同約300億円に相当するペースで買い入れを行っていた。

この決定に対し、木内登英審議委員、佐藤健裕審議委員、森本宜久審議委員、石田浩二審議委員が反対票を投じた。エコノミスト32人に対するブルームバーグ・ニュースの事前調査では、3人が追加緩和を予想、29人が現状維持を見込んでいた。

日銀はまた、長期国債買い入れの平均残存年限を7−10年程度とし、最大3年程度延長する。さらにETFの買い入れ対象に新たにJPX日経400連動型ETFを加える。

黒田東彦総裁は28日の参院財政金融委員会で、日本経済は2%の物価目標の達成に向け順調に道筋をたどっていると言明。展望リポートも同様の内容になるとみられていたが、世界経済の減速懸念を背景とした原油価格急落から、2%の早期実現に黄信号が灯っており、日銀の強気な姿勢に対する不信感が高まりつつあった。


日銀会合:追加緩和決定、国債買い入れ年間30兆円追加 - Bloomberg 日銀会合:追加緩和決定、国債買い入れ年間30兆円追加 - Bloomberg 日銀会合:追加緩和決定、国債買い入れ年間30兆円追加 - Bloomberg

31日の東京株式市場は、日銀が追加の金融緩和に踏み切ることを決めたことで買い注文が一気に膨らみ、日経平均株価の終値は700円以上値上がりし、およそ7年ぶりの高値となりました。

31日の東京株式市場は、朝の取り引き開始直後からアメリカ経済が着実に回復しているという見方から、買い注文が先行しました。さらに、午後に入って日銀による追加の金融緩和の決定が発表されると同時に、買い注文が一気に膨らむ展開となりました。

日経平均株価は一時、前日と比べて800円以上上昇し、終値は前日と比べて755円56銭高い1万6413円76銭で、平成19年11月以来、およそ7年ぶりの高値となりました。


株価700円超上昇 約7年ぶり高値に NHKニュース 株価700円超上昇 約7年ぶり高値に NHKニュース 株価700円超上昇 約7年ぶり高値に NHKニュース

【ニューヨーク=越前谷知子】31日の米金融市場は、日本銀行が追加の金融緩和に踏み切ったことを受けて、大幅に円安・株高が進んだ。

 ニューヨーク外国為替市場の円相場は一時、1ドル=112円47銭まで下落し、約6年10か月ぶりに1ドル=112円台に値下がりした。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和の終了を29日に決めたばかりで、日米の金融政策の違いが鮮明になっている。米長期金利が上昇し、日米の金利差が拡大することを見込んで、円を売ってドルを買う動きが広がった。

 午後5時(日本時間11月1日午前6時)現在、前日(午後5時)比3円09銭円安・ドル高の1ドル=112円26〜36銭で大方の取引を終えた。

 為替市場について、「年末にかけて1ドル=115円まで下げる場面もある」(米為替ストラテジストのウィン・ティン氏)との見方が出ている。

 一方、ニューヨーク株式市場では、ダウ平均株価(30種)が前日終値比195・10ドル高の1万7390・52ドルと、9月19日以来、約1か月半ぶりにこれまでの最高値を更新して取引を終えた。

 日銀の追加緩和で、余剰資金が供給されることへの期待が米国市場でも高まり、ダウの上げ幅は一時、200ドルを超えた。日本の公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が、国内外の株式の比率を増やす方針を示したことも、上げ相場を支えた。

 ナスダック店頭市場の総合指数は、64・60ポイント高の4630・74と14年7か月ぶりの高値で取引を終えた。日銀の追加緩和については、「時期、規模ともに想定外。これをきっかけに年末に向けて買い基調が続く」(米アナリストのマット・キング氏)と好感する声が出ている。


日銀緩和受け米で大幅円安、NY株は最高値更新 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 日銀緩和受け米で大幅円安、NY株は最高値更新 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 日銀緩和受け米で大幅円安、NY株は最高値更新 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

31日のヨーロッパの主な株式市場は、日銀が追加の金融緩和を決めたことを受け、株価指数が大きく上昇しているほか、ロンドン外国為替市場では円を売る動きが強まり、およそ6年10か月ぶりの円安ドル高水準で取り引きされています。

31日のヨーロッパの主な株式市場は、日銀が追加の金融緩和を決め、東京市場をはじめアジアの市場で株価が上昇したことを受けて、幅広い銘柄で買い注文が増えています。この結果、各市場の株価指数は、日本時間の午後7時時点で、前の日の終値と比べ、パリ市場でおよそ2%上昇しているほか、フランクフルト市場でおよそ1.6%、ロンドン市場でおよそ1.2%、それぞれ上昇しています。また、31日のロンドン外国為替市場では、日銀の追加緩和を受けて円を売る動きが強まり、円相場はおよそ6年10か月ぶりの円安ドル高水準となる1ドル=111円台半ばまで値下がりしています。


欧州株 日銀追加金融緩和で上昇 NHKニュース 欧州株 日銀追加金融緩和で上昇 NHKニュース 欧州株 日銀追加金融緩和で上昇 NHKニュース


昨日10月31日、日銀は新たな金融緩和を決定しました。この金融緩和により日本のみならず欧米でも株価が上昇し、円ドル相場でも1ドル111〜112円台の円安になっています。

今回の追加緩和は誰もが予想していなかったサプライズであり、株式市場の動きを見ると、世界中が驚きとともに歓迎していると言って良いでしょう。

しかし、金融政策決定会合で採決する政策委員の賛否は5対4であり、中央銀行の採決としてはまれに見る僅差の採決でした。日銀執行部は辛うじてこの追加緩和を成立させたことになります。


今年4月の8%への消費税増税以降、景気は一向に回復せず、もはや景気が落ち込んだ原因が消費税増税にあることは明らかと言って良いでしょう。その結果、来年の2%のインフレ目標達成を疑問視する見方も広まっています。

このような状況を回復させるためにも、追加の金融緩和は必要でした。しかしこれまで日銀は動かず、僕も黒田総裁は前任の白川総裁のように「白く」なって*1、インフレ目標2%の達成をあきらめてしまったのではないかと疑っていました。黒田総裁が消費税の10%への増税を容認していることも、この疑いに拍車をかけていました。

ただ、今回の採決を見て考えを変えました。黒田総裁は追加緩和の必要性は分かっていたが、決定会合で過半数を取る見込みがなかったため、追加緩和を打ち出せず、現状維持を続けていたのではないでしょうか。


 日銀は31日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、物価見通しを下方修正した。消費者物価指数(CPI)の上昇率は2014年度1.2%、15年度1.7%と、7月時点の見通しより0.1〜0.2ポイント引き下げた。原油価格の下落が主因だ。14年度の実質成長率見通しも従来の1.0%から0.5%に下げた。

 日銀が半年ごとにまとめる展望リポートでは、正副総裁を含む9人の政策委員見通しの中央値が注目される。消費増税の影響を除く物価見通しが、日銀が目標とする2%にいつ届くかが焦点だ。


物価見通し1.7%に下げ 15年度 日銀展望リポート  :日本経済新聞 物価見通し1.7%に下げ 15年度 日銀展望リポート  :日本経済新聞 物価見通し1.7%に下げ 15年度 日銀展望リポート  :日本経済新聞


今回、決定会合と同時に日銀は「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を出しています。*2それによると、15年度のCPI上昇率の見通しは1.7%と、インフレ目標の2%を下回っています。

このことが明らかになったことで、これを材料にして黒田総裁は他の審議委員を説得し、何とか過半数を取り付けることができたのでしょう。これまで追加緩和が行われなかったのは、そのような材料がなかったのが理由だと思います。

マスコミでは10%の消費税増税決定が行われた後に追加緩和が行われるという観測も流れていましたが、この状況では黒田総裁にそんな取引をしている余裕はないと思います。


おそらく、僕自身も含めたリフレ支持者も、逆にリフレ政策に懐疑的・否定的な人たちも、これほどまでに黒田日銀のリフレ政策が脆弱だとは思っていなかったのではないでしょうか。だから黒田総裁のデフレ脱却への意志を疑ったり、黒田総裁が追加緩和を消費税増税の取引材料にするという見方が出ていたりするのでしょう。*3

ただ、決定会合ではではまだ白川総裁時代に任命された審議委員が多数派で、リフレ政策は彼ら多数派を切り崩しながら行わざるを得ません。言わばリフレ政策は薄氷を踏みながら行われているような状況であり、いつ頓挫してもおかしくない状況です。

この状況を変えるためには、審議委員の交代の際にリフレ政策を支持する人を任命しないといけませんが、審議委員を任命するのは総理大臣であり、国会の同意を得る必要もあります。そのため、(他の面では問題があるにせよ)リフレ政策を推進している安倍政権が続いていかなければ、いずれ黒田日銀のリフレ政策は頓挫し、インフレ目標の達成や維持も困難になっていくでしょう。

今のリフレ政策がこのような脆弱な基盤の上に成り立っているということを改めて認識させたのが、今回の追加緩和だったと思います。

*1:反リフレ政策の「白川」総裁からリフレ政策の「黒田」総裁に代わったため、「白」を反リフレ政策・デフレ容認、「黒」をリフレ政策・デフレ脱却の象徴とする、ジョーク的な表現です。

*2:展望レポートはこちらで公開されています。経済・物価情勢の展望(展望レポート) :日本銀行 Bank of Japan

*3:例えばこのような意見があります。追加緩和が実施された本当の理由?増税後押し、GPIFと連携 - Bloomberg