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邪悪なピエロが街々を徘徊、なぜフランスで

AFP=時事 10月31日(金)16時37分配信

【AFP=時事】都市から都市へと気味の悪い流行が広がっている──邪悪な武装ピエロが街々を恐怖に陥れているのだ。まるでハリウッドの最新ヒット映画のような話だが、フランスで、現実に起きている現象だ。

仏の村、ハロウィーンのピエロ仮装を禁止 悪質ないたずら流行で

 警察当局は過去数週間で、ピエロの仮装をして仏各地の街を混乱に陥れている十数人以上の若者たちの身柄を拘束した。ピエロは拳銃やナイフ、野球のバットで武装していることもあり、市民に危害を加えることもある。フランスではこの現象に対ピエロ自警団も発足するほどで、警察当局は市民の間でヒステリー状態が広がるのを抑止しようと介入に踏み切った。

 だが、なぜピエロなのだろうか。ハロウィーンの到来は関係があるのだろうか。

 米コミック「バットマン(Batman)」シリーズのジョーカー(Joker)から、米作家スティーブン・キング(Stephen King)氏の小説「IT」で子どもたちを殺す怪物まで、子どもを笑わせる存在であるはずのカラフルなピエロは、映画や小説を通じて純粋に邪悪な存在に変形した。

「もう30年以上も、邪悪なピエロというキャラクターは映画や書籍などの大衆文化に利用されてきた。その結果として、誰もが知るようなテーマが少しずつ形成されてきたのだ」と、うわさ・風説の専門家である人類学者のベロニク・カンピオンバンサン(Veronique Campion-Vincent)氏は説明する。

「都市伝説というものは、物事が見かけ通りではなく、本当の姿は違うという世界にわれわれがいるという考えに基づく。この事例の場合は、子どもたちを笑わせる陽気な存在とみなされているものの本当はとても意地が悪い存在、となる。さらにピエロは被害者とみなされることもある。ぶざまで、復讐を決意した存在として」

 これらの架空のキャラクターたちが「ピエロ恐怖症」に触発されたのか、あるいはその恐怖症によって生み出されたのかは、議論があるところだ。この恐怖症の原因はほとんど分かっていないが、過剰なメークと赤い鼻、色鮮やかな髪の毛の背後に、何が隠されているのか分からない、という点に由来すると考えられている。


■「殺人ピエロ」と呼ばれた男

 ピエロの恐怖をあおるのは、何も創作物だけではない。

「殺人ピエロ」の異名を持つ米国のジョン・ウェイン・ゲイシー(John Wayne Gacy)は1994年、33人を拷問・殺害した罪で死刑に処された。ゲイシーは子どものパーティーにピエロとして参加する趣味があった。

 フランスでは、祝う習慣が全くなかったハロウィーンが人気を獲得し始める中、今回の現象が、10月に北部で出現した。警察当局によると、市民によるピエロ目撃事例は「学校の外、そして公共の道路、茂み、広場」で増加している。

「(ピエロの)標的は主に幼い子どもたちや若者だが、成人を狙うこともある」とフランス北部の警察当局者はAFPに語った。

 また警察当局筋は28日、この現象がソーシャルネットワークで発生したことを確認していると述べ、「メディアで取り上げられる限り続くような、短期的な一時的な流行だと考えている」と影響は限定的だとの見解を示している。

 だが、ベルギーの都市伝説研究者オーロレ・ファンデウィンケル(Aurore Van de Winkel)氏は、昔からあるこういったホラー話が真実として広まる現象というのは「私たちの目の前で生み出されているものだ」と指摘する。同氏は、動画サイトのユーチューブ(YouTube)の動画による影響はさておき、ハロウィーン前というのは伝統的に都市伝説が生まれやすい時期なので、攻撃的なピエロの現象が広まった理由は説明することができると述べる。

 カンピオンバンサン氏は、特に空想と現実がひとつに融合するようなことがあれば、この「ゲーム」が暴走する危険性があると警告した。【翻訳編集】 AFPBB News

最終更新:10月31日(金)17時52分

AFP=時事

 

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