日本経済新聞社と日本経済研究センターが31日午後に開いた景気討論会では、2015年10月に予定されている消費税率10%への引き上げについて、財政状況を踏まえて予定通り実施すべきだとの意見が多かった。併せて、補正予算など景気を下支えする経済対策を打つべきだとの声が上がった。安倍晋三首相は税率引き上げの是非を12月に判断する。
木下智夫野村証券チーフエコノミストは、消費再増税を予定通りに実施すべきだとした。そのうえで「財政的な面でのサポートをしっかりするのは必要条件」と述べ、補正予算の編成を求めた。「全体として4.5兆円程度の経済対策があれば、増税に伴う悪影響を相殺できる」と語った。また再増税を延期するには新法を制定する必要があるため、政策遂行が停滞することを懸念し、「成長戦略を深めるなど、中長期でみて重要なところに政治的なエネルギーを使ってほしい」と注文を付けた。
岩田一政日本経済研究センター理事長は「(税率引き上げで)一時的にはマイナスの効果が出るが、消費税率は中長期的には上げていくしかない」との考えを示した。そのうえで「(再増税の)一時的なマイナスショックが強くなりすぎて、それが尾を引くことは回避すべきだ」と指摘し、「2年間かけて1%ずつ上げていくべきではないか」と提案した。補正予算の規模は3兆円程度が望ましいとした。
武田洋子三菱総合研究所チーフエコノミストは「増税で景気後退を招いたときのコストと、増税の見送りによって万が一日本の国債や財政に対する信認を失った場合のコストをてんびんにかけたとき、後者の方が前者をはるかに上回る」と述べ、再増税先送りのリスクを指摘した。財政や社会保障などの状況を勘案すると「おのずと結論は導かれる」とも語った。
志賀俊之日産自動車副会長は「景気対策を織り込んだうえで消費税を上げることを納得してもらうべきだ」との見方を示した。併せて「民間企業の活力で景気を下支えしたい」とも語った。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
木下智夫氏(きのした・ともお) 1987年京大卒、野村総合研究所入社。米国、シンガポール駐在などを経て、2004年野村証券転籍。05年アジア・チーフ・エコノミスト(野村シンガポール)、12年7月から金融経済研究所チーフエコノミスト。米ノースウエスタン大学経済学修士。
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