Updated: Tokyo  2014/11/01 00:42  |  New York  2014/10/31 11:42  |  London  2014/10/31 15:42
 

【コラム】「第4の矢」を放ちて6つの的を射抜け-ペセック

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【コラムニスト:Willie Pesek】  10月31日(ブルームバーグ・ビュー):日本をテーマにしたパネル討論会の司会をする際、私はいつも参加者に尋ねる。安倍晋三首相が今あなたの前に座っていたら、日本復活のスピードを上げるために何を行うよう提言するかと。

ほとんどのパネリストが言及するのは、安倍首相が約束している第3の矢、つまり規制緩和と一定の構造改革を柱とする成長戦略だ。第1の矢(大胆な金融政策)と第2の矢(機動的な財政政策)に続く、いわゆる「アベノミクス」で最も重要な部分だ。それから私は再び聞く。「では、その次の第4の矢は何」かと。大抵はぽかんとされるだけだ。

私はこれまでも言ってきたが、アベノミクスは新しいものでも想像力に富んだものでもない。日本が10年もしくは15年前に実施しておくべきだったものだ。仮に安倍首相の改革が全て実行されたとしても、日本経済の復活には恐らく十分ではないだろう。私はここで挙げるのはいずれも首相に第4の矢として放ってほしいことだ。まだ支持率の高い安倍首相はここ10年で日本経済を立て直す最善のチャンスを得ている。ためらっている時間はない。

①ベンチャー企業支援  円安はトヨタやホンダにとっては大助かりかもしれないが、日本は16歳の三上洋一郎氏ら若い起業家を応援することでより飛躍できるだろう。三上氏が始めたのはクラウドファンディングのベンチャー企業。サラリーマン以外の人生を目指す若者のための資金調達の手助けをしている。安倍政権が打ち出している国家戦略特区のような政策は成長を生むというより小細工に終わる傾向があり、首相はむしろベンチャー企業向けの優遇税制や規制緩和を進めるべきだ。

石原氏、小泉氏

②「天下り」の廃止  ニューヨークのウォール街で働いていたバンカーがワシントンで政府や政権の重要なポストに就き、その後再び金融界に戻ることに多くの人々が不信感を抱いている。こうした不健全な慣行は年功序列意識の強い日本では一般的だ。政府は数年ごとに公務員を異なる省庁に異動させるべきだ。

③賢明な移民政策  日本にとって移民は引き続き避けたい問題だ。だがシンガポールのように戦略的に人材の受け入れをなぜ増やさないのか。愛国的な言動で知られる石原慎太郎元東京都知事でさえこうした考えを支持している。

④エネルギー政策の見直し  地震の多いこの国は原子力に固執し過ぎている。安倍首相がかつて仕えた小泉純一郎元首相は新たなエネルギー源確保は日本の宿命であるだけでなく、次の成長産業を生む可能性があると主張している。化石燃料に代わるエネルギーの実現を促すため、政府は例えば100億ドル(約1兆円)の報奨金を用意してはどうか。

⑤ 環太平洋連携協定(TPP)  農業分野などの既得権益を混乱させるリスクを覚悟の上でTPP交渉をまとめようとしている安倍首相は的を射ている。政府は貿易相手への譲歩を過度に心配するのをやめ、市場を開放することで享受できる成長や効率・生産性の伸びに着目する必要がある。

⑥女性枠  一定規模を超える企業に対し女性の採用と幹部登用を求める安倍首相の計画は滑り出しとしては良いが、抜け穴も多い。ノルウェーのような拘束力を持つ正式な女性枠がより効果的だろう。政府はまず始めに少なくとも公的部門で女性の幹部登用を義務付け、そこから手を広げていくべきだ。(ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラムの内容は同氏自身の見解です。同氏のツイッターは@williampesek

原題:Six Ways to Give Abenomics a Second Wind in Japan: WilliamPesek(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 Willie Pesek wpesek@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Nisid Hajari nhajari@bloomberg.net笠原文彦

更新日時: 2014/10/31 09:44 JST

 
 
 
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