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総力特集! アニメ『ゆゆ式』(10)――かおり(監督)&田畑壽之(キャラクターデザイン・総作画監督)インタビュー「すぐ相談できる環境が『ゆゆ式』を支えた」(第4回)
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■キネマシトラス式
――アイキャッチも毎話印象深かったです。EDにはアイキャッチアニメーターがクレジットされていましたがコンテ等は監督が?
かおり:コンテと演出は12本全部私がやりました。アニメーターは各話違いますけど、担当してくださった12人はみんな、『ゆゆ式』にとってかけがえのないスタッフでしたね(第 1話から順に、かおり、まじろ、小嶋ケイ祐、松尾亜希子、菊池勉、(第6話は非公開)、清水空翔、古澤祐紀子、長谷部敦志、赤澤恵理、橘正紀/古澤祐紀子、秋谷有紀恵)。
田畑:みなさん社内ですよね。
かおり:そうですね。だからアイキャッチに限らず作画打ち合わせのときは、「出張」って言って、その人の机に行ってやってました(笑)。制作の福島くんが「監督、作打ちやりましょう」って言うと、私がコンテを持ってそのアニメーターさんの横に行くんです(笑)。あれは面白かったですね。
田畑:アイキャッチは当初入れる予定なかったですよね。
かおり:どうしても入れたくなって無理に(笑)。なので背景もなかったんですけど、いまむらさんがすごく可愛い色使いで素材を作ってくださって。お気に入りです。
――原作の扉絵から取られたものが多かったですが。
かおり:そうですね。扉絵を見たときに動きが頭の中にすぐ出てきたのでそれをコンテに落として。4秒に収めなきゃいけないので「あと1秒欲しいんだけど!」ってものもありましたけど(笑)。
――原作の細かなネタは、次回予告でも積極的に拾われていましたよね。
かおり:次回予告は本編に入れられなかったけどやりたかったネタを使う場所でしたね。クチで富士山を作るネタとか、本当は第1話に入れる予定だったんですけどどうしても入らなくて。
ただ予告も10秒しかないので、声優さんに早口で演じてもらって、さらに音響さんに詰めてもらったりしたのでかなりのマシンガントークになってしまいました。
――予告のシナリオはどなたが?
かおり:私と小倉さんで原作から拾ってきて、さらにそれを短く削りました。
最初はナツコさんにチェックしてもらってたんですけど、実際には無音も入れなきゃいけないから10秒もなくって、最後の方はチェックも回さずアフレコ現場で決めてました。小倉さんはアフレコにも来られるので、「予告のシナリオ作るから!」ってつかまえて、「この予告は何話にしましょうか」とか「このネタだったら10秒に入るよね」とか、その場でストップウォッチ片手に作る感じでしたね(笑)。
田畑:しかも普通、予告は次の話の絵だけを見せるところを、監督が急に「3人のデフォルメキャラがしゃべるのをやりたい!」と言い出して(笑)。
かおり:「私が原画やるから!」って(笑)。自分で口パク作ってタイムシート付けて撮影に出してっていうのを毎週やってました。
――もう一つ気になったのがエンドカードです。特に『攻殻機動隊ARISE』で総監督をされた黄瀬和哉さんが描かれていたことには驚かされたのですが。
かおり:エンドカードは、芳文社さん、EXIT TUNESさん、シトラスで担当枚数の割り振りがあったんです。黄瀬さんとは私が大昔から仲良くさせていただいていて、お仕事はご一緒したことなかったんですけど、今回『ゆゆ式』の監督をやることになったので何かお願いできないかなと、それでエンドカードの依頼を。そしたらすぐに引き受けてく ださったうえ、「原画もやるよ!」って言ってくださって。ありがたいですね。社内もみんなびっくりで、「恐れ多い!」みたいな感じに(笑)。
――第12話の原画にクレジットされていましたが、どちらのシーンになるのでしょう?
かおり:アバンからAパート頭の教室のシーン全部と、唯の家のトイレのシーンですね。
田畑:トイレはわかりやすいですよね。今までになかったアングル。
かおり:盗撮アングル(笑)。第12話のコンテは、前半が小島さんで後半が私なんですけど、トイレのシーンは小島さんが面白いアングルのコンテで作ってくださっていたんですね。それで黄瀬さんに「どこがいいですか?」って希望を伺ったらトイレのカットを指して「こういう狭いレイアウトが好きなんだよ!」って。こっちとしては「あんな難しいアングルのカットをありがとうございます!」という感じでした(笑)。
――第12話と言えばラストのオリジナル展開が注目ポイントと思います。あの展開というのは高橋ナツコさんが構想を?
かおり:あれは小倉さんですね。「こういう風に終わったらいいんじゃない?」っていう流れを小倉さんが一通り出してきて、ナツコさんがそれを文章に起こして、三上先生にチェックしていただく、という手順でした。「縁が『唯ちゃーん』って追いかけてきて、ポフッて顔を背中に埋めるんだよ!」みたいな妄想を小倉さんが熱く語られて、私たちは「お、おう...」みたいな(笑)。
第1話のアバンの展開に戻ろうという案はホン読みのときにはもうあったんですけど、そこまでの流れが難航して、結局最終話のシナリオは放送直前までかかりましたね。3人が海に行った後、ラストの絵をどうするかっていうところが。
――三上先生から何かコメント等は?
かおり:監修はお願いしましたけど特にはなかったですね。全体的にも「こんなに任せてもらっていいのか」ってくらい自由にやらせていただきました。
田畑:基本的に三上先生は褒めてくださいますよね。
かおり:制作陣は「早くしてください!」しか言ってくれなくてしょんぼりしてたんですけど、 三上先生はいつも元気の出るコメントをくださるんですよ。しかも、毎話コンテをお見せしてたんですけど「このカットが良かったです」みたいな細かいところまで感想を書いてくださって、 それを見る度に感涙にむせびました(笑)。
田畑:「本当にこれが正解なんだろうか......」っていう迷いの連続だったので、余計に救われましたよね。
かおり:他の人は誰も何も言ってくれないし(笑)。
田畑:第1話のとき僕が言いましたよ(笑)。コンテでやりたいことがちゃんと示されていたので、「これで大丈夫です」って。監督は作品の道を示すのが仕事なので、「こうやりたいんです」っていうのが第1話のコンテから伝わってきたので「これで大丈夫です」と。
かおり:その節はありがとうございます(笑)。まあ色々言っちゃいましたけど、現場は本当に楽しかったですね。和気あいあいとしてて。
――今日のお話からはキネマシトラスさんのアットホームな雰囲気がすごく伝わってきました。
かおり:小笠原さんのやり方なんですよ。スタジオはコンパクトにした方がいいっていう。作品に参加していただく以上は社内に入っていただいて、連携をコンパクトにまとめる。いつでも相談できる状態にして、疑問に思ったことはすぐに潰していく。そういう環境があったからこそここまでクオリティを上げられたのかなと。私と田畑さんも席がすぐ側で、何かあれば逐一相談するってスタイルでした。
田畑:物理的に近いっていうのは私もすごくやりやすかったです。
かおり:撮影はT2studioさんにお願いしてますけど、そこでも最後のリテイクの作業のときには、こちらからT2さんに乗り込んでやっていました(笑)。
田畑:キネマシトラスはアニメが集団作業だってことを強く意識してますよね。
かおり:ラッシュチェックも普通は演出さんだけに任せちゃったりするらしいんですけど、キネマシトラスでは監督と演出と総作監と作監と、動検さん、色指定さん、撮監さんが全員一堂に集まってやるんですよ。
田畑:ポイントはタイムラグと温度差のなさですね。そしてそれらを少なくするには同一フロアにいるのが一番早いんです。理想を言えば本来どこもそうあるべきなんですけどね。
かおり:やっぱりみんなで相談しながら一丸となって『ゆゆ式』に取り組めたところが良かったんだと思います。フィルムって、そういうところまで出ちゃうものなんですよね。(了)
(2013年7月11日、キネマシトラスにて収録)
【『ゆゆ式』特集の導入コラムはこちら】
【『ゆゆ式』シリーズ構成・高橋ナツコさんインタビューはこちらから】
【『ゆゆ式』キネマシトラスさん取材記事の前編はこちら】
【『ゆゆ式』キネマシトラスさん取材記事の後編はこちら】
【『ゆゆ式』プロデューサー・小倉充俊さんインタビューはこちらから】
©三上小又・芳文社/ゆゆ式情報処理部
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