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総力特集! アニメ『ゆゆ式』(9)――かおり(監督)&田畑壽之(キャラクターデザイン・総作画監督)インタビュー「すぐ相談できる環境が『ゆゆ式』を支えた」(第3回)
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■作画の嘘
――芝居の良さを引き立てる要素の一つに、テンポの良さが挙げられるのではと思います。
かおり:テンポに関しては、とにかくシナリオがぎゅうぎゅうに詰まってたんですよ。あれも入れたいこれも入れたいって言ってたら、普通の作品のシナリオより一話当たり2、3ページも多くなってしまって(笑)。でも4コママンガってギャグマンガでもあるので、結果的にテンポが速くて正解でしたね。
――スピード感がありつつも、難しいネタをわかりやすく見せる工夫も感じられて。
かおり:そこはナツコさんと小倉さんが、シナリオ上でだいぶ揉んでくださいました。なので私の方では特に意識することなく、原作のコマを見たときに浮かんだアニメのイメージをそのまま落とし込んでいっただけですね。
――キャラクターの配置やポーズは原作を踏襲しつつも、カメラアングルはかなり変えられていましたよね。
かおり:そうですね。マンガならそれぞれのコマをじっくり見られるし、戻って読み返すこともできるじゃないですか。でもアニメの場合は画面がどんどん流れていってしまうので、わかりやすく見せるにはカメラアングルやカメラポジションを意識しないといけないなと思って。極端なローアングルや俯瞰を織り交ぜたりして、緩急をつける必要があったんですね。
――その点、教室や部室での会話シーンは苦労されたのでは。室内だと、どうしても構図のバリエーションに制約がありますよね。
かおり:ほんと大変でしたね(笑)。特に部室は狭いので、3DCGを使ってレイアウトを組んでいたんですけど、「このアングルがほしいから壁をぶち抜かなきゃいけないな」というカットも多かったです。実際よりもちょっと部室が広くなってる、みたいな作画上の嘘はいっぱいついてますね(笑)。やっぱり手で描いた方がレイアウトは自由ですね。難しいんですけど、例えパースが狂っていても納得させる画があるんですよ。
――写実的な正確さが、アニメとして魅力的だとは限らないわけですね。
かおり:そうです。日常芝居も同じですね。気持ちよく見せる動きって絶対あると思うんです。 アクションの前後で一旦沈むとか伸びるとか。やりすぎてもダメですけど、そういう画がほしくて、「原画をあと一枚増やしてください」みたいなオーダーはよく出してました。
田畑:粘っていただけたのは大きかったですね。普通だったら「もう待てません! 引き上げます!」って海外に投げてしまったりすることが多いんですけど、『ゆゆ式』のスタッフは「女の子は可愛くなくちゃね! キャラ崩れはしたくないよね!」っていう一致団結した気持ちがあって。
かおり:『CODE:BREAKER』はTVシリーズでしたけど、あの作品は放映開始が予定より伸びたので、多少余裕があったんですよ。なのでスタッフの中でTVシリーズの本当の修羅場を知っているのは田畑さんだけだったという(笑)。だから田畑さんが一番先読みができていて、「このまま行くと破綻するよ」 っていう線引きを明確にしてくださったんです。手を打たなきゃいけないところをその都度ご忠告いただけてすごく助かりました。メインスタッフミーティング、大事ですね(笑)。
田畑:プロデューサーまで含めた制作会議が、きちんと毎週開かれてたんですよ。そのお陰でどのパートがどういう状態なのか、ってことを常に全員が確認できていた。
かおり:やっぱり一番時間をとるのは作画なので、時間がないとどうしても作画が崩れてしまうから、会議でいかに総作監の時間をとるかっていうところを詰められたのは大きかったなあと。
田畑:秋谷有紀恵さんに共同で入ってもらえた点も助かりましたね。「私だけでは総作監は回せないから、絶対にもう一人必要です」と言ったら入っていただけて。秋谷さんは絵も私のものに似せてくださって、自分でもたまに「これ私が描いたんだっけかな」と見分けがつかないくらいでした(笑)。
かおり:秋谷さんは第5話の回想シーンに出てくる可愛らしいちびキャラたちも担当してくださって。あれは素晴らしかったですね。
田畑:ああいう可愛らしさや女の子らしさも、監督がこだわられた点ですよね。
かおり:そうですね。女の子らしく、常に股は閉じろと(笑)。
田畑:育ちの良い三人ですから、一定の品を出したいということですね。
――コンテにも「内股厳守!」とコメントされてるところがありましたね(笑)。
かおり:とにかく「内股! 内股!」って(笑)。座ってるときもそうですけど、普通の立ちポーズにしても外股にならないようにしてほしい、っていうのはうるさく言いましたね。
田畑:『けいおん!』の律ちゃんみたいなキャラ付けならいいんですけど、考えなしでそうしいてるというのはナシにしようという。
かおり:やっぱりキャラクターが重要な作品ですからね。
■何から何までセオリーから外れた『ゆゆ式』
――キャラクターの魅力は声の演技によって支えられた部分も大きかったと思います。これ以上ないすごくいいキャスティングで。
かおり:キャスティング会議はものすごく時間がかかりました(笑)。今をときめく声優さんにいっぱい来ていただいてオーディションしたんですけど、一人の声優さんに、もともと受けるつもりで来た役だけでなく、メインの3人すべてを演じてもらったりしてて。
田畑:今の声優さんは器用なので、ゆずこなら必要以上にはしゃいでしまったり、唯なら必要以上に男声でしゃべったりと、アニメーションのセオリーで役を作ってしまうことが多いんですね。もちろんそれは声優さんとしては間違ったことではなく、むしろ優秀なことなんですけど、しかしこちらとしては自然体で行きたいというのがあって......。
かおり:「誰に聞かせるわけでもない友だち同士のおしゃべり」っていうのがコンセプトなので。
田畑:だからすべての役を演じていただいたのは、役をシャッフルすることで、作って来た役を壊したい、という意味合いもありました。
かおり:いきなりやったから声優さんは「ええー!」って思ったかもしれないですけど......ほんと『ゆゆ式』は何から何までセオリーとは外れてる(笑)。
――普通のアニメでの当たり前のことが『ゆゆ式』では当たり前じゃない。
かおり:そうですね。普通の萌えアニメのセオリーに乗っちゃうとダメなんですよ。シナリオに関しても、ナツコさんもおっしゃってましたけど、少しでも台詞回しを変えちゃうと『ゆゆ式』じゃなくなっちゃう。
――シナリオでは監督も第10話を担当されていましたが、そこでの苦労というのは。
かおり:実は第10話は脚本は書いてなくて、いきなり絵コンテから書いたんです(笑)。初めに大きな流れだけ作って、それをナツコさんと小倉さんに見ていただいて、そこから直接コンテに落としてしまったのでシナリオがないんですよ。
田畑:文章を書くのは時間がかかるから、直接やってくださいということだったんですよね (笑)。
――第10話のコンテには「今回はネタアニメ」という注意書きもありましたが。
かおり:そうですね、「よくある4コマ原作アニメ」バージョンっていうんですかね。基本的に『ゆゆ式』ってアバンからBパート終わるまでの感情線の流れを一番大事にしてたので、朝始まって下校で終わるっていう見やすいストーリーを作ってたんですね。でも第10話は4コマを集めて繋げるとこうなりますよ、っていう「4コママンガのアニメ化」がコンセプトでした。
田畑:これまではセオリーとして、1年生のときのネタは2年生ではやらないという縛りがあったんですけど、第10話ではすべてごっちゃにしています。やりたかったけれどこれまでのシナリオからはこぼれてしまったネタが多かったので、それを集めてネタ回をやろうというコンセプトですね。
かおり:シナリオ会議のときに「入れたいけどどうしても入らないですね」「じゃあ10話に入れよう!」って第 10 話に割り振ることを何度もやってて、結局「10話そんなに入らないよ!」 ってなりましたけど(笑)。
――とはいえ結果的には十分、テーマの見えるエピソードになっていたと思います。
かおり:ありがとうございます。それは私の方でも心がけたことですね。ゆずこと唯と縁の3人がいかに仲が良くて、3 人でいるといかに楽しいかってところが視聴者の方にも伝わるようにと。後はアイキャッチも冒険して、縁とゆずこのチュー寸止めカットにしてみたり(笑)。
【『ゆゆ式』特集の導入コラムはこちら】
【『ゆゆ式』シリーズ構成・高橋ナツコさんインタビューはこちらから】
【『ゆゆ式』キネマシトラスさん取材記事の前編はこちら】
【『ゆゆ式』キネマシトラスさん取材記事の後編はこちら】
【『ゆゆ式』プロデューサー・小倉充俊さんインタビューはこちらから】
©三上小又・芳文社/ゆゆ式情報処理部
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