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総力特集! アニメ『ゆゆ式』(8)――かおり(監督)&田畑壽之(キャラクターデザイン・総作画監督)インタビュー「すぐ相談できる環境が『ゆゆ式』を支えた」(第2回)
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■揺れるおっぱいと揺るぎない作画
――原画と言えば、メインアニメーターとしてまじろさんと小嶋ケイ祐さんがクレジットされていましたが、お二人の役割というのは?
田畑:結果的にはほぼ作画監督としての作業に従事してしまった感じですね。
かおり:元々は全話に原画で入るみたいなことを予定していたんですけど、スケジュールの関係で、作監作業に集中する形になってしまいましたね。
――「作画監督としての作業」というのは、作画に統一感を持たせるための作業ということですよね。「メインアニメーター」の仕事とはどう違うのでしょう?
田畑:本来のメインアニメーターの仕事は、「作画の底上げ」なんですね。アニメーターは複数の作品をかけもちすることが多いのですが、メインアニメーターにはひとつの作品で原画に専念してもらって、その作品の原画の全体的な質を上げてもらうんです。あとは、作品のキーとなる難しいシーンの原画をお願いするとか。
かおり:実際には、この作品でメインアニメーターのイメージに近い仕事をされたのは北川隆之さんなんじゃないですか?
田畑:第3話の自動販売機のシーンとか、縁がサンダル脱ぐところとか、特徴あるカットを挙げるとその多くが北川さんの仕事ですからね。第9話の切れ味の良いボクシングなんかもそうですね。
かおり:最終話でゆずこたちが海から帰ってきた後の、ふみからお母さん先生までの一連の流れも全部北川さん。
田畑:参加話数でいうなら、一番多かったのは清水空翔さんですね。第2話以降、全話の原画に参加いただいて。
かおり:そうですね。なのでシトラスの社内で『ゆゆ式』に専念してくださった方たちのほうが、 本来の意味でのメインアニメーターに近いんですよね。実際にクレジットされていたお二人は田畑さんのフォローに専念していただいた形で。
――EDはまじろさんが担当されてましたよね。実は『ゆゆ式』のロゴの上を歩いていたという、 毎話細部の変わる可愛らしいED。
かおり:最後グルっと回るとロゴになるんですよね。EDに関しては最初にコンセプトデザイン打ち合わせというのがあって、そこでまじろさんからいただいた提案に私と田畑さんとプロデ ューサーの方々でゴーサインを出して、後は完全にお任せでした。
田畑:私も最初のアイディア出しとキャラの修正をしたくらいですね。
かおり:OPも私の方で手が回らなくて博史池畠さんにお任せで......あっ、でもOPでパンツが見えるギリギリまでスカートなびかせたのはこちらの田畑さんですからね(笑)。私は原画を見て「やりすぎじゃないですか?」って止めたんですけど(笑)。
田畑:あれ、そうでしたっけ?(笑) でもそうしたきわどいシーンでも、全体的に生々しくなりすぎないようには気をつけていましたよ。例えば影が多いと下品に見えがちなので、なるべく薄く少なくして、『ゆゆ式』の世界観から離れないようにと。
かおり:田畑さんは本来エロスな描写が得意な方で(笑)、もっとがっつりと影やハイライトをつける作風なんですけど、『ゆゆ式』ではそこから引き算をしてもらってなるべく抑えてくださいと。
田畑:第2話でお母さん先生のおっぱいが揺れるところなんかは「これで大丈夫かな?」と思いましたけどね(笑)。でもあれは原画さんのアドリブなんですよ......私も修正は入れなかったわけですが(笑)。
かおり:おっぱいの話をしてるところにお母さんがやってきて「頑張って!」って言うカットですね。「『ゆゆ式』ではおっぱいは揺らさないで行こう!」って言ってたんですけど、そのカットだけはなぜか漏れてしまって(笑)。
田畑:あそこは元々おっぱいの話をしてるシーンなので、普通にギャグとしてありかなと。
――原作も意外と下ネタ多いですしね。
かおり:そうなんですけど、マンガならさらりと流せるところも、アニメになって声や色や動きが加わるとやっぱり......(笑)。
田畑:マンガとは印象が変わりますよね。
かおり:第4話のアバンであいちゃんが受け取った唯の水着の写メも、手前にあいちゃんの顔が映り込んでるからまだセーフみたいな(笑)。もうちょっと薄くすると丸見えになっちゃうし、濃いと見えないしというせめぎ合いで、撮影さんには苦労をおかけしました(笑)。
――その意味ではキャラクター設定資料も興味深かったです。縁の水着姿には、胸元の影付けについてまで指定が付いていたり(笑)
かおり:「Good」と「No Good」が(笑)。
田畑:縁のはそんなに大きくないから......というのもあるのですが(笑)、キャラの特徴に関係なく影をワンパターンに付けてしまう現場が多いので、そういうのを防ぐための注意事項ですね。
――なるほど、クオリティコントロールに関わる指定だったわけですね。
田畑:そうですね。原画さんの側で注意していただけると作監作業も捗るので。他にもデザイン上でカロリーを軽くする工夫として、各キャラクターで頭のサイズをほぼ統一するということもしていました。そうするとキャラがたくさん出てくるシーンでも原画さんがキャラ表を見て描きやすいんですよ。
かおり:「このアングルはいっぱい使いそうだからキャラ表にください」なんていうのもありましたね。斜め後ろ45度がよく出るとか(笑)。
――ちなみにキャラクターデザインの際にモデルとした巻数というのはあるのでしょうか? 原作の絵柄も第1巻から最新の第5巻にかけて、少しずつ変化し続けていると思いますが。
田畑:アニメで最も多くネタが使われている第2巻、第3巻辺りがベースですね。そこを中心にまずは制作さんから表情のパターンを抜き出してもらいました。
かおり:三上先生からも、唯のおさげの位置とかゆずこと唯のサイドの毛の違いとかについていくつかアドバイスいただいて、それを田畑さんがフィードバックしていくという流れですね。
――表情のほかに、服のバリエーションの豊かさにも驚かされました。
田畑:服を固定にしちゃうアニメも多いですけど、作品の性質上、同じ服を着ていてはリアリティが出ませんからね。監督とまじろさんと私で全てデザインしました。
かおり:夏休みと冬休みは私服が多くなっちゃうので、一人では無理だからとみんなで分業して。でもお母さん先生だけは田畑さんに全部やっていただきましたね。
――お母さん先生は制服がない分、殊更大変ですよね。
田畑:毎話違う服なうえ、同じ話数でも日をまたげば変えてましたね。
かおり:第3話は全く出てなかったはずですけど、それでも全部で15着くらいは設定作ってたはずですよ。
田畑:それプラス原作参考もありましたよね。ちょっとしか出てこないシーンでは「原作のこの服を参考にしてください」と作監さんにお願いするんです。
――各キャラごとに服の傾向性も強く出ていたと思います。
かおり:そこも三上先生から「ゆずこはボーダーが好きなんですよ」みたいなアドバイスをいただきましたね。
――三上先生からは作画や演出に関するオーダーもあったのでしょうか?
かおり:作画に関しては全くなかったですよね?
田畑:ただオーダーではない部分でものすごい重しを乗せられたことがありました。というのも、最初の頃に主要スタッフで集まって食事をしたことがあったのですが、そのときにさらりと「この子たちはお芝居はしません」とおっしゃられたんですよ。しかし「芝居してない芝居」というのは、アニメーターからすると最もハードルの高いオーダーなんですね(笑)。パターンではなくガチンコでやってくださいということですから。
かおり:「この子たちは漫才師ではないので、視聴者や読者を笑わせようとしてないんです」とおっしゃられてましたね。でも、確かに大変なことではありますけど、アニメーターだったら 本当は常に心がけないといけないことですよね。なのでそこは頑張ろうと。
田畑:その結果「『ゆゆ式』は作画良かったね」とお客さんから言っていただけているなら本当にうれしいですね。
【『ゆゆ式』特集の導入コラムはこちら】
【『ゆゆ式』シリーズ構成・高橋ナツコさんインタビューはこちらから】
【『ゆゆ式』キネマシトラスさん取材記事の前編はこちら】
【『ゆゆ式』キネマシトラスさん取材記事の後編はこちら】
【『ゆゆ式』プロデューサー・小倉充俊さんインタビューはこちらから】
©三上小又・芳文社/ゆゆ式情報処理部
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