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総力特集! アニメ『ゆゆ式』(7)――かおり(監督)&田畑壽之(キャラクターデザイン・総作画監督)インタビュー「すぐ相談できる環境が『ゆゆ式』を支えた」(第1回)
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「まんがタイムきらら」(芳文社)にて絶賛連載中の三上小又による同名萌え4コマを原作に、2013年4月から6月にかけて放映された TVアニメ『ゆゆ式』。ゆずこ、唯、縁たちの何気ない会話や日常が、独特としか言いようのない世界観の中で魅力的に描かれる日常系アニメだ。
他愛もないようでいて奥深く、一度ハマったら癖になる。今回はそんな一筋縄ではいかない『ゆゆ式』を見事指揮した監督のかおりと、キャラクターデザイン・総作画監督としてハイクオリティな作画を支えた田畑壽之にお話を伺った。
これを読まずには『ゆゆ式』を語れない、インタビューシリーズ第3弾!(全4回)
■かおり プロフィール
アニメ演出家、アニメーター、監督。キネマシトラス在籍。主な演出作に『英雄伝説 空の軌跡 THE ANIMATION』(2011-2012 年)、『流れ星レンズ』(2012 年)、『CODE:BREAKER』(2012年)など。『ゆゆ式』が初のTVシリーズ監督作品となる。
■田畑壽之 プロフィール
アニメーター。スタジオディーン出身。主な仕事に「コードギアス」シリーズ(2006-2008 年)の作画監督、『聖痕のクェイサーII』(2010 年)の監督補佐、『アクセル・ワールド』(2012 年) のメインアニメーターなど。『ゆゆ式』で初のキャラクターデザインを務める。
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■「じわじわ感」を演出する
――『ゆゆ式』全12話、大変楽しく拝見しました。すでにシリーズ構成の高橋ナツコさん、プロデューサーの小倉充俊さんからもお話を伺っているのですが、改めてかおり監督、田畑総作画監督が『ゆゆ式』へ参加された経緯から伺わせてください。
かおり:キネマシトラスではこれまでも色んな作品の演出に関わらせていただいてきて、2013年には『流れ星レンズ』のOADで監督もやらせていただいたんですけど、その流れで「次はシリーズものの監督をやってみない?」と声をかけていただきました。『ゆゆ式』は女の子が可愛らしい作品ですし、シリーズ構成も『流れ星レンズ』でご一緒した高橋ナツコさんということで、「是非やらせてください!」と。
田畑:私の場合は少し遠い話からになりますが、元々キネマの小笠原宗紀さんとは自転車仲間だったんですよ。「ジロ・デ・信州」というアニメ業界の自転車イベントがあるんですけど、それに一緒のチームで出場したりとプライベートな繋がりがまずあったんです。そうしたご縁から、キネマシトラスが制作を担当するということで(ジェネオンの)小倉プロデューサーからご依頼いただきました。
かおり:よく言われることですけど、最初は正直、読みづらいところがある作品だなとは感じました。でも一通りキャラの立ち位置などがわかってくると、そこからどんどん加速度的に面白くなってきたんですよ。
田畑:とっつきにくいところがあるけど、読み方がわかってくるとドハマリする作品ですよね。
かおり:そうなんです! スタッフの間でも「じわじわ感」というのはキーワードになってましたね。
――その特異な「じわじわ感」をアニメに落とし込むため様々な工夫をなされたと思うのですが、 まず初めに取り組まれたことというのは?
かおり:最初にやったのはほかの4コマ原作アニメを一通り観てみることでしたね。やっぱり「4コママンガは一本のストーリーにまとめるのが難しいよ」って話はあちこちから聞いていたので、参考にしたいなと。それで『けいおん!』とか『Aチャンネル』とか、ほかの「きらら」系アニメを色々研究してみた結果わかったのが、『ゆゆ式』はそういう作品とは違うということで(笑)。
――(笑)。どこが最も違われましたか?
かおり:例えば『けいおん!』だったら「軽音部員を集めて、楽器を買って、文化祭に出て」みたいなその時々の目的があるじゃないですか。でも『ゆゆ式』にはそういう目標がないんですよ。女の子三人がただ仲良く会話してるだけで。
だからその次にやったのは、各話のテーマを作っていくという作業でした。情報処理部みたいにホワイトボードを持ってきて、みんなそれぞれの4コマをテーマごとにまとめていったんです。私はTVシリーズの監督は初めてだったので、ナツコさんと小倉プロデューサーにリードしてもらいながら、私なりのアイデアを提案していく感じでしたね。ただナツコさんもインタビューでお話されてた通り、とにかく小倉さんの情熱がすさまじくて、私とナツコさんは「うんうん」とお話を拝聴してることも多かったです(笑)。
――非常にパワフルな方ですからね(笑)。ではシナリオ会議の際にこだわられた点というのは?
かおり:季節感や日常感です。それによって「この子たちはどこかに本当にいるんだ」って感じてもらえたらなと。そのために「原作で描かれている教室や部室以外のところでは何をしているのか」ってところまで想像して補っていきました。リアルな女子高生の雰囲気を見せたかったんですよ。トイレに行く描写が多かったのもそのためですね。
――トイレは本当に毎話行ってましたよね。
かおり:流石にちょっと頼りすぎちゃったかもしれません(笑)。場面変わりにも使えるので便利なんですよね。でも女子高生ってほんとしょっちゅうトイレ行くんですよ。私も女子高だっ たんですけど、用もないのにただ鏡を見たり、そこにいた友だちとおしゃべりしたりするためだけに、休み時間ごとトイレに行ってました。
――リアリティという面では、作画の充実も大きく貢献していたと思います。細部の芝居まで極めてリッチに描かれていて。
かおり:そこは田畑さんが頑張ってくださって。
田畑:いえいえ、原画さんの頑張りがあったからこそですね。私の方では要所要所を押さえるくらいで、ポーズとか歩き方とか手の動きとか、そういうキャラクターのお芝居に修正を入れた程度です。それに監督にも事前にレイアウトをチェックをしていただいてたので。
かおり:普通のアニメではしないと思うんですけど、レイアウトの段階で「ゆずこの動きはこう」「唯の表情はこう」みたいな指示を私からしてたんですよ。それを田畑さんにブラッシュアップしていただくという流れで。やっぱり田畑さんの手が入ると俄然、画面が締まるので。
あとは基本的に原画さんの「こうしたい!」っていう提案ありきで、そこに乗っかるか乗っからないかですね。私、原画マンっていうのは俳優だと思ってるので、「俳優としてどうキャラを動かすか」っていうところを考えていただいて、それを元に私や各話演出さんが判断をしていました。
【『ゆゆ式』特集の導入コラムはこちら】
【『ゆゆ式』シリーズ構成・高橋ナツコさんインタビューはこちらから】
【『ゆゆ式』キネマシトラスさん取材記事の前編はこちら】
【『ゆゆ式』キネマシトラスさん取材記事の後編はこちら】
【『ゆゆ式』プロデューサー・小倉充俊さんインタビューはこちらから】
©三上小又・芳文社/ゆゆ式情報処理部
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