Updated: Tokyo  2014/11/01 00:00  |  New York  2014/10/31 11:00  |  London  2014/10/31 15:00
 

伊藤教授:GPIFと黒田緩和の「美しき調和」、偶然ではない

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  10月31日(ブルームバーグ):年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )が国内債を大幅に削減する新資産構成の発表と日本銀行が国債購入を大規模に増額する追加金融緩和が同日に重なったのは偶然ではない-。政策研究大学院大学の伊藤隆敏教授は両者は国債市場の安定をめぐって絶妙なコンビネーションの関係にあるとの見解を示した。

GPIFをはじめとする公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政府の有識者会議で座長を務めた伊藤教授は31日夜のインタビューで、GPIFと黒田東彦総裁が率いる日銀は「美しき調和」を果たしたと評価。両者は「以心伝心の間柄だ。意図するとせざるとに関わらず、見事に示し合せた政策対応だった」と述べ、「私はこれをハロウィーンの奇跡と呼びたい」と続けた。

伊藤教授は、政府から独立した存在の日銀が追加緩和に踏み切ったのは2%を目指して押し上げを図っている消費者物価 の上昇率が鈍化してきたためだと指摘。GPIFのためではないが、結果的に市場で大量の国債を売却しやすい環境を整えることにもなると説明した。

厚生年金と国民年金の運用資産127.3兆円を抱えるGPIFは31日夕、新たな資産構成の目標値を発表した。国内債を従来の60%から35%へと、ほぼ半減。日本株は12%から2倍超の25%に、外国債券は11%から15%へ、外国株式も12%から25%に引き上げた。前回適用した5%の短期資産の項目は廃止した。

大幅な目標値の変更に伴い、乖離(かいり)許容幅も変更した。国内債は上下10%ずつと従来の8%ずつから拡大。国内株も同9%ずつと従来の同6%ずつから拡大した。外国資産に関しては、外国債が同4%ずつと従来の同5%ずつから縮小した半面、外国株は同8%ずつと従来に比べ3ポイント拡大した。

政府と日銀が経済活性化とインフレ上昇を目指す中、GPIFは将来の金利上昇で評価損を被りかねない国内債の削減と収益向上を求める圧力に直面。昨年6月には資産構成を2006年の創立後、初めて変更した。政府の有識者会議は昨年11月、国内債偏重の見直しやリスク資産の拡大を提言。安倍首相はかねてより、資産構成の早期見直しを求めていた。

伊藤教授は14日のインタビューで、現時点で望ましい資産構成は国内債が35%、日本株と外株は25%ずつ、外債は横ばいの11%程度だと述べた。GPIFの新たな目標値は、外債以外は伊藤教授が示した望ましい水準と一致した。

GPIFの6月末時点の保有実勢は国内債が53.36%、日本株が17.26%、外債は11.06%、外株は15.98%だった。同法人が目安としている短期資産を5%と仮定した場合の構成割合は国内債が51.91%と乖離許容幅の下限を割り込み、国内株は16.79%、外債は10.76%、外株は15.54%となっていた。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net;東京 北中杏奈 akitanaka@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net崎浜秀磨, 青木勝

更新日時: 2014/10/31 22:11 JST

 
 
 
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