沖縄県知事選がきのう告示された。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題について菅官房長官は「過去の問題」と強調するが、これこそ沖縄の現実の問題であり、知事選の主要な争点である。

 立候補したのは、元郵政民営化担当相の下地(しもじ)幹郎(みきお)氏、元参院議員の喜納(きな)昌吉(しょうきち)氏、前那覇市長の翁長(おなが)雄志(たけし)氏の新顔3人と、昨年12月に辺野古の海の埋め立てを承認し、3選を目指す現職の仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)氏。

 自民推薦の仲井真氏は辺野古移設を容認。自民党県連幹事長だった翁長氏は「断固反対」。下地氏は移設問題を決着させるために県民投票実施を主張。喜納氏は民主党方針に反して「埋め立て承認の撤回、取り消し」を掲げ、党を除名された。

 沖縄でずっと続いてきた「保革対決」の構図は崩れた。公明、民主は自主投票。保守の一部が革新と組む保守分裂の選挙戦となった。移設問題への立ち位置の違いが、この新たな構図を生んだと言える。

 既成政党の枠組みが壊れ、保守が分裂した背景には、仲井真氏の方針転換がある。

 前回知事選で県外移設を公約して当選したものの結局、埋め立てを承認した。今回は、辺野古移設が具体的で現実的な方策だと、計画容認にかじを切った。仲井真氏の決断を受け、政府は辺野古のボーリング調査に着手した。

 知事の承認に至る過程で、やはり県外移設を公約に当選した沖縄県選出の国会議員や自民党県連に、自民党本部が公約放棄を迫り続けたことも、県民に不信感を植え付けた。知事の公約変更に、有権者がどう審判を下すのかが注目される。

 さらに、政権が相次いで打ち出す「基地負担の軽減策」をどうみるかも問われる。

 「過去の問題」と言いながら政府は移設に絡んで、現職の仲井真候補へ露骨な肩入れを続けていると受け止められかねない状況が生じている。

 普天間配備の空中給油機を8月に岩国基地へ移転。オスプレイの訓練も県外へ分散するとも言う。だが、空中給油機は今も普天間に来ているし、オスプレイの普天間での飛行回数は、配備直後の1年間よりこの1年の方が増えている。

 普天間を2019年2月までに運用停止にする政権の約束も、米政府が拒否し、空手形だったことが明らかになった。

 「負担軽減」は本物か。知事選を通じて、沖縄の有権者はじっと見ている。