October 30, 2014
◆ヨーロッパで土着信仰が消えていったのに、中東で生き残ったのはなぜでしょうか?
ヨーロッパには、最終的には土着宗教よりも影響力を持った政府が存在していました。フランス、ドイツ、イギリスを見ると、その政府はかなり早い段階で権力を握り、影響力を持っていました。一方中東では、長いこと比較的無法状態が続いていました。それが、土着信仰が生き残った理由の一つでしょう。地形的な要因もありました。こうした宗教の多くは、人里離れた僻地で綿々と受け継がれてきたのです。
もう一つの理由は、批判を受けるのは覚悟の上ですが、ヨーロッパにキリスト教がやってきた時、土着宗教はさほど高度な知識を持っていなかったということがあります。中東では、長い時間をかけてこれらの宗教は深く洗・・・
ヨーロッパには、最終的には土着宗教よりも影響力を持った政府が存在していました。フランス、ドイツ、イギリスを見ると、その政府はかなり早い段階で権力を握り、影響力を持っていました。一方中東では、長いこと比較的無法状態が続いていました。それが、土着信仰が生き残った理由の一つでしょう。地形的な要因もありました。こうした宗教の多くは、人里離れた僻地で綿々と受け継がれてきたのです。
もう一つの理由は、批判を受けるのは覚悟の上ですが、ヨーロッパにキリスト教がやってきた時、土着宗教はさほど高度な知識を持っていなかったということがあります。中東では、長い時間をかけてこれらの宗教は深く洗練され、ギリシャの哲学者たちの思想が持ち込まれた際も、それに対して自分たちの宗教をどう見るかという深い理解を持っていました。彼らはまた、とても厳しい道徳的戒律を持っていました。
ですから、イスラム教も当初は、ハラン人のような自分たちの役に立ちそうな人々を完全に排除すべきか迷いました。彼らはギリシャ哲学に精通し、優れた科学者でもありました。ですから、多くの異端宗教はそのまま生存を許されたのです。イスラム指導者の中には、彼らをうまく利用した者たちもいました。
◆宗教は今日、世界中の争いや死を引き起こしている中心的理由のように思えるのですが、それに対しどう反論しますか?
私は、宗教とは人類が知りうる限り、人と人とを繋ぐ最も強力な結合剤だと答えるでしょう。短期間であれば中東でも、イデオロギーがその役割を果たせるかもしれません。共産主義も、ある程度までは実現しました。ナショナリズムも同様です。しかし現代社会では、宗教がその役割を担っています。西洋でも同じことです。様々な人種や社会階層の人々と幅広く出会うことができる場所は教会だけです。他の何ものも持たない力がそこにはあります。
もちろん、それを悪用して他者を迫害したり争いを起こす人々もいるでしょう。政府もしばしば、宗教を使って他の政府に対抗しようとします。イランとイラクは1980年代にひどい戦争を経験していますが、どちらの政府も宗教を利用して国民の戦闘意欲をかきたてました。しかし、だからといって宗教そのものが悪になるわけではありません。宗教がいかに強力であるかを示しているに過ぎないのです。問題は、宗教が何であるかではなく、それをどのように用いるかなのです。
◆西洋の人々の目には、これらの宗教の信仰対象や禁忌対象はしばしばとても奇妙に映ります。なぜレタスを食べてはいけないのか、なぜゾロアスター教は猫を避けるのか、そしてなぜ一部の男性には口ひげが義務付けられているのでしょうか?
ヤジディ教がレタスを食べない理由は誰にも分かりませんが、古代宗教には多くの食に関する戒律がありました。ピタゴラス学派では豆を食べることが禁じられていました。彼ら自身が説明を拒んだため、その理由は誰にも分かりません。神聖な秘密とされていたのです。
シリアのアラウィー教は、人は植物に生まれ変わることがあると信じています。ですから、知り合いの魂の生まれ変わりかもしれないという理由で、一部の植物を食べることを禁じています。
ヤジディ教が口ひげにこだわるのは、一部の人々に言わせると、長く垂れ下がった口ひげは秘密の象徴であるとされているからだそうです。その人は、神聖な秘密を託すのに信頼できる人物として重宝されるのです。
ゾロアスター教は、猫に対しては何かあるようです。犬を非常に大切にする一方で、猫はアリやハエ、その他悪霊に取りつかれた生物と同等と見なされているのです。
Photograph by Newsha Tavakolian / National Geographic