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2011年 03月 16日
以下、全くの引用で、末尾に松坂のコメント。
**************************** 「ザ・選挙」編集部2008/11/13によると…… ■定義 「戸別訪問」とは、候補者や支援者などが有権者の自宅や職場などを訪問し、投票を依頼することをいいます。公職選挙法第138条は、候補者や支援者だけでなく、誰もが戸別訪問をすることを禁止しています。 ■戸別訪問を禁止する理由 戸別訪問の禁止は、「普通選挙法」が1925年に成立したときに規定され、戦後の公職選挙法にも受け継がれた日本独特の規制です。 戸別訪問を禁止する理由として次のことがあげられています。 (1)買収等の犯罪が起こることを防ぐため (2)有権者の投票を感情によって左右するのを防ぐため (3)選挙の公正が失われるのを防ぐため (4)候補者の品位を傷つける恐れがあるため このように、選挙運動に伴う弊害を防止するために公職選挙法は戸別訪問を禁止しています。 戸別訪問の禁止は憲法第21条が保障する表現の自由に対する規制とされていますが、最高裁判所は表現の自由にも「公共の福祉のためにその時、所、方法等につき合理的制限が存ずる」とし、戸別訪問を禁止している公職選挙法を合憲としています。 最高裁判所は合憲の根拠として「弊害論」をあげています。 (1)戸別訪問を認めると買収・利益誘導の弊害が生じる恐れがある (2)投票が感情によって支配される弊害が生じる恐れがある (3)無用・不当な競争が生じ、選挙の公平性が阻害される恐れがある (4)有権者の私生活の平穏を攪乱する恐れがある ■戸別訪問禁止の問題点 戸別訪問の禁止に関して、多くの問題点が指摘されています。 1)立法目的の問題点 戸別訪問の禁止は、選挙運動に伴う弊害を防ぐために候補者と有権者の表現の自由を大幅に制限しています。このような制限は議会制民主主義の確立に寄与しないとの指摘があります。 戸別訪問を禁止する理由の1つに「買収等の犯罪が起こることを防ぐ」ことがあげられています。しかし、戸別訪問をすることが買収等の行為にあたるのではなく、戸別訪問に伴って買収等が起こる恐れがあるということにすぎません。また「選挙の公正が失われる」とされますが、戸別訪問しただけで選挙の公正が失われるかどうかは実証できません。「買収等の犯罪が起こることを防ぐ」、「選挙の公正が失われる」ということを理由として、戸別訪問を禁止することは、実証できない事由に基づいていると指摘されています。 また、「有権者の投票を感情によって左右する」、「候補者の品位を傷つける」という理由は、電話による投票依頼(いわゆる「電話作戦」)が広く行われていることからも十分な理由とはなりません。電話作戦は、選挙運動として認められています。戸別訪問と電話作戦は、政策の訴えの方法を戸別訪問によるか電話によるかという運動員の負担の違い程度の問題です。仮に戸別訪問が解禁され戸別訪問を各候補者が行えば、戸別訪問を理由として「有権者の投票を感情によって左右する」ことはなく、有権者が常に特定の候補者に感情を移入して投票行動を起こすということも起こらないと考えられます。 2)判例の問題点 最高裁判所は、戸別訪問の禁止を合憲とする理由として「有権者の私生活の平穏を攪乱する」ということをあげ、弊害論の立場から判決を下しています。しかし「平穏を攪乱する」ことそれ自体は戸別訪問禁止の根拠となりません。不特定多数に戸別訪問することは、何も選挙だけではなく、日常の生活、例えば新聞の勧誘、訪問販売などにもありふれています。選挙のときだけ戸別訪問が有権者の私生活の平穏を攪乱することになるとして制限を認めるのは、裁判所の判断が飛躍しすぎているとの指摘があります。 また電話による投票依頼は数多くなされていますが、それによって「有権者の平穏な私生活が攪乱される」とは問題になっていないのに、戸別訪問だと「有権者の平穏な生活」が問題となるということはおかしな判断です。選挙のための戸別訪問によって「有権者の平穏な生活」が攪乱されるのなら、電話による投票依頼も同じ理由で制限されなければならないはずです。 実際に下級審判決では戸別訪問の禁止規定の違憲判決が出されています。裁判所が「平穏を攪乱する」ことを理由に戸別訪問の禁止を認めることには問題があると指摘されています。 ■戸別訪問の実際の現場 公職選挙法は、戸別訪問を禁止していますが、実際の政治の現場と戸別訪問の禁止規定は大きく乖離しています。このことは、次に示す2つの事例が実際の政治の現場を示しています。 小泉純一郎「戸別訪問を解禁せよ――カゲでコソコソが腐敗を生む」 (1979年2月9日付『朝日新聞』) 私は実際に選挙運動を行っている立場から、このさい戸別訪問を全面的に解禁するべきだと思う。その理由の第一は、戸別訪問は公職選挙法でいくら禁止されていても、実際には、選挙運動の基本的手段としてかなり広範に展開されていることである。私自身を含め、およそどんな選挙の候補者も、いざとなれば運動員に対して「選挙は足である」「できるだけ数多く歩いてほしい」と、事実上の戸別訪問を督励しているはずである。運動員たちは、これにこたえて涙ぐましい努力をする。「玄関に入ってはいけない」「路上なら問題はない」という良心派がいるかと思うと、やみ夜にまぎれて巧妙に走り回ってくるプロもいる。たまたま運悪い人が(まさに言葉通り)だけが警察に通報されてしまう。 金指正雄「国会議員は何をしているか」 (浅野一郎編『国会入門』・第2章、信山社、2003年、78頁) 田中角栄元首相は、「コネも知名度もない無名の新人が当選しようとすれば、こまめに集会を開き、戸別訪問を繰り返し、あるいは毎朝、駅前広場に立って通勤客にあいさつをするといった方法で、名前を覚えてもらうことからはじめなければならない。」と述べ、新人候補に選挙から選挙までの間に1万軒を戸別訪問せよと命じたという。 なぜこの2人の政治家が禁止されている戸別訪問を督励しているのでしょうか。それは戸別訪問を禁止している公職選挙法第138条の規定は投票依頼のために行う選挙運動としての戸別訪問を禁止しているのであり、政治活動のための戸別訪問は禁止していないためです。つまり、候補者に投票を依頼するために戸別訪問を行えばその行為は選挙運動となり、公職選挙法第138条の規定に抵触してしまいます。しかし、政治活動のためにする戸別訪問、例えば政策を訴えるため、党勢を拡大するため、候補者後援会への入会依頼のために有権者の自宅を個々に訪問することは認められているのです。 買収・利益誘導を防ぐことを立法目的として戸別訪問を禁止する公職選挙法第138条では、政治活動による戸別訪問を規制することはできないのです。つまり、政治活動の戸別訪問ができてしまうので、選挙運動の戸別訪問を禁止し、買収や利益誘導を防ごうとしても全く無意味になってしまいます。民主政治が実効的に機能するために必要不可欠な表現の自由を大きく制限してまで戸別訪問の禁止が規定されたにもかかわらず、「政治活動であれば戸別訪問ができる」ため、政治活動の名の下に戸別訪問が行われている現実があるのです。ただし、選挙期間中は政治活動が規制される(公職選挙法201条の5)ので、「政治活動」としての戸別訪問も禁止されるので注意が必要です。 政治の現場では、議員や候補者が有権者に直接政策や考え方を訴え、また有権者が要望を直接候補者に届けることが重要です。議員や候補者が有権者と直接会うことができる最も簡単で、経費もかからない方法の1つがが戸別訪問なのです。公職選挙法は、過度に戸別訪問を禁止しており、議員や候補者と有権者の出会いの場を過度に制限しているということができます。 ■諸外国の選挙運動 イギリスの選挙運動は、戸別訪問が中心に行われます。選挙カーなど利用せず、個々に家庭を回り、政党の政策を訴える選挙スタイルとなっています。欧米の選挙では、戸別訪問が選挙運動の基本となっているのです。 ■戸別訪問に関する法令 公職選挙法 第138条(戸別訪問) 1項 何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて戸別訪問をすることができない。 2項 いかなる方法をもつてするを問わず、選挙運動のため、戸別に、演説会の開催若しくは演説を行うことについて告知をする行為又は特定の候補者の氏名若しくは政党その他の政治団体の名称を言いあるく行為は、前項に規定する禁止行為に該当するものとみなす。 第201条の5(総選挙における政治活動の規制) 政党その他の政治活動を行う団体は、別段の定めがある場合を除き、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類(政党その他の政治団体の本部又は支部の事務所において掲示するものを除く。以下同じ。)の掲示並びにビラ(これに類する文書図画を含む。以下同じ。)の頒布(これらの掲示又は頒布には、それぞれ、ポスター、立札若しくは看板の類又はビラで、政党その他の政治活動を行う団体のシンボル・マークを表示するものの掲示又は頒布を含む。以下同じ。)並びに宣伝告知(政党その他の政治活動を行う団体の発行する新聞紙、雑誌、書籍及びパンフレットの普及宣伝を含む。以下同じ。)のための自動車、船舶及び拡声機の使用については、衆議院議員の総選挙の期日の公示の日から選挙の当日までの間に限り、これをすることができない。 (神山玄太) ◇ ◇ ◇ 【松坂コメント】 と、まあ、以上のような言葉の定義を以って、僕は、これまでも堂々と政治活動として戸別訪問を続けてきたわけであるが、数日前に届いた『選挙管理委員会』からの文書では、あたかも全て戸別訪問は「違法」であるかのような言い方だった。(現に話をしてみても「戸別訪問=悪」の認識なのだ。) 公選法138条はその条番号の直後に『(戸別訪問)』として、禁止行為としての戸別訪問の見出し語としている。だから選管職員が、 「その行為は戸別訪問に当たると思います」と言う時は この138条のことらしく、 「その行為は138条で禁止してある行為に当たると思います」の意味らしい。 何でこうなるの?と言いたくなるが、現実の「戸別訪問」のほとんどが「投票を依頼する」目的でなされているからだ。 僕としては、あくまで公職選挙法が告示から投票日までの選挙期間中に(戸別訪問を含む)政治活動を禁止しているのだから、告示前日までの(戸別訪問を含む)政治活動は禁止されないという立場をとる。 もちろん政治活動中に投票の依頼は禁止である。 しかし「戸別訪問」が「悪いこと」と同義で使われる現実においては、もうこの言葉は区別して使わないことの方が賢明なのかもしれない。明日から、政治活動としての「報告書個別配布」とでも呼ぼうか?何かうさんくさくない言い方の名案はないものでしょうか。
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