2014年10月29日10時36分
●県の想定区域作り進まず
いわき市は28日、最大級の津波が起きた場合の浸水想定区域を記した津波ハザードマップを公表した。国の津波対策で義務づけられている県による想定区域の作成が進んでいないため、市が独自に踏み切った。
東日本大震災をきっかけに制定された「津波防災地域づくり法」は沿岸部の都道府県知事に、最大級の津波で浸水が予想される区域や浸水の深さを設定するよう義務づけた。市町村は都道府県の想定を踏まえて防災計画の作成に努めるよう求められている。
いわき市によると、県に浸水想定を決めるよう再三求めたが、「作成時期も未定」との回答だったため、市独自にシミュレーションを実施。市内での震災による津波の最大痕跡高は8.57メートルだったが、それを超す最大10.1メートルの高さを想定したマップを作った。
避難場所も示したマップを来月には沿岸部の約4万7千世帯に全戸配布する。市の担当者は「沿岸部の住民から『早く作って欲しい』という要望があり、県の想定が出るのを待ってはいられなかった」と話す。
南相馬市も新たな津波ハザードマップを独自に作り今月、市の広報誌に入れて配布した。担当者は「『千年に1度の津波』が今日起きてもおかしくないことを私たちは経験した。危険な区域を市民に早く知らせることが大事」という。相馬市も来年度に作成に取り組むことを検討している。
県河川計画課によると、作成の具体的なスケジュールは決まっていない。理由として、(1)新たな堤防や防災緑地が未完成のため正確なシミュレーションができない(2)原発事故の帰還困難区域など放射線量の高い場所の想定をどうするかが未定(3)国は津波で堤防が破壊される前提で想定を求めているが、新たな堤防は壊れない構造なので想定が作りづらい、を挙げる。担当者は「津波被害があった宮城、岩手両県も同様の理由で作成できていない。どこも悩んでいるのが現状だ」と明かす。