ロケット打ち上げ直後に爆発 原因調査へ
アメリカの企業が開発し、国際宇宙ステーションに物資を運ぶ無人の宇宙輸送船を載せたロケットが打ち上げ直後に爆発し、NASA=アメリカ航空宇宙局などはデータを解析するなどして原因を調べることにしています。
打ち上げに失敗したのは、アメリカの企業「オービタル・サイエンシズ」社が開発したロケット「アンタレス」です。
ロケットは、国際宇宙ステーションに物資を運ぶため、この企業が開発した無人の宇宙輸送船「シグナス」を載せて、28日午後6時22分すぎ(日本時間の29日午前7時22分すぎ)、アメリカ南部バージニア州にあるNASA=アメリカ航空宇宙局の施設から打ち上げられました。
しかし、打ち上げ後まもなく火を噴きながら下降しはじめ、その後、激しく爆発、炎上しました。
NASAによりますと、打ち上げられた施設でけが人などはいないということです。
これについて、NASAや打ち上げに関わった企業の責任者が記者会見し、「打ち上げの直前までは異常はなかったが、打ち上げ後、20秒以内に何かが起きた」と述べて、今後、ロケットの残骸やデータを詳しく解析し、原因を調べるということです。
ロケットととともに爆発した宇宙輸送船には食料や実験材料など2トン余りの物資が積み込まれていましたが、NASAによりますと、国際宇宙ステーションには来年3月までの食料などが蓄えられ、今後、ロシアの無人宇宙輸送船などの打ち上げも予定されていることから、宇宙飛行士の活動に影響はないということです。
「期待していただけにショック」
打ち上げに失敗した輸送船「シグナス」には、千葉工業大学が開発した、宇宙から流れ星を観測する特殊なカメラが搭載されていました。
カメラは長さ25センチ、重さが1.1キロほど、宇宙空間の僅かな光でも捉えられる高感度なもので、国際宇宙ステーションの窓から地球にレンズを向けて据え付けられる予定でした。
流れ星は、大気中を石やちりが通過することで光る現象ですが、その光を捉えて波長を調べることで、石やちりを生んだ元のすい星や小惑星の成分を調べる計画でした。
千葉工業大学は、このカメラの取り付け試験をNASAのジョンソン宇宙センターで行うなど、2年前から準備を進めてきたということです。
開発に当たった千葉工業大学の小林正規上席研究員は29日朝、自宅でインターネット中継によって打ち上げの様子を見ていたということで、「大学の研究室が単独で研究装置を宇宙に送り込むのは珍しい取り組みで、期待していただけにショックを受けました」と話していました。
ただ、研究室には今回搭載したのと同じ型のカメラがすでに用意してあり、次の打ち上げに向けた準備を始めたということです。
また、宇宙への物資の輸送が民間にシフトするなかで起きたことについて、小林上席研究員は「研究者にとってロケットは重要なインフラで、信頼性が損なわれたことは今後の研究に影響を与えかねず心配だ」と話していました。
物資輸送は民間の宇宙輸送船に
アメリカ政府は、厳しい財政状況を受けて、民間による宇宙開発を推し進めてきました。
2011年にスペースシャトルが引退したあと、国際宇宙ステーションへの物資の輸送は、民間企業が開発した無人の宇宙輸送船に任せています。
現在、この事業に関わっているのは、宇宙輸送船「シグナス」を開発した「オービタル・サイエンシズ」社と、「ドラゴン」を開発したベンチャー企業「スペースX」社のいずれもアメリカの2社です。
このうち、今回事故があったロケットを開発した「オービタル・サイエンシズ」社は、NASAと19億ドル(日本円でおよそ2000億円)で、2016年までに8回にわたり物資の輸送を行う契約を結んでいます。
今回はこの契約による3回目の打ち上げでした。
一方、「スペースX」社は16億ドル(日本円でおよそ1700億円)で、2016年までに12回輸送を行う契約を結び、この契約に基づいて4回の打ち上げを行っています。
アメリカで国際宇宙ステーションへの物資の輸送を民間企業に任せてから、打ち上げに失敗するのは今回が初めてです。
アメリカ政府は、物資の輸送だけでなく国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送り届ける有人宇宙船の開発も民間企業に委ねる計画で、選ばれた民間企業2社が2017年の運用開始を目指して開発を進めています。
ここまで順調に打ち上げが続いていただけに、今回の事故によりアメリカ政府が進めてきた宇宙開発に関わる政策への影響が懸念されています。
専門家「少なくとも2度爆発」
ロケットが爆発した際の映像を見たJAXA=宇宙航空研究開発機構の的川泰宣名誉教授は「詳しい原因は分からないが、映像を見るかぎり、ロケット下部の噴出口で1度爆発したあと、そのすぐ上の辺りで間を置かずに2度目の爆発が起きている」と話し、少なくとも2度の爆発が起きたという見方を示しました。
また、「ロケットを作った企業はアメリカで国際宇宙ステーションへの物資輸送を担ってきた2社のうちの1社であり、宇宙ステーション計画への影響は避けられないだろう」と話しています。
日本への影響について、的川名誉教授は「宇宙ステーションには食料品などの蓄えは十分あるので大丈夫だと思うが、今後の打ち上げはより慎重になってくるだろう。
今回の失敗を受けて、日本は宇宙ステーション計画を支える一員として、国際的な役割を積極的に果たす必要があり、この事態をどのように捉え、どう貢献していくかが問われている」と話しています。
投稿者:かぶん | 投稿時間:21:07
| カテゴリ:科学のニュース
コメント(0) | トラックバック (0)
※NHKサイトを離れます。
トラックバック
■この記事へのトラックバック一覧
※トラックバックはありません
コメント(0)
※コメントはありません