最高裁判決を受け記者会見する原告側代理人の瀬戸久夫弁護士(右)=18日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ 永住資格を持つ大分市内の中国籍の女性(82)が生活保護法の適用を求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は18日、永住外国人も適用対象になるとした二審福岡高裁判決を破棄し、女性の請求を棄却した。女性の逆転敗訴が確定した。判決は、現行の生活保護法は適用対象を日本国民に限定しており、法制定後も範囲を外国人に拡大する改正はなされていないと指摘し「外国人は行政措置で事実上の保護の対象となり得るにとどまる」と判断した。 永住外国人が日本人と同様に生活保護法の適用対象になるかどうかが争われた訴訟。二審判決は、同法に基づく永住外国人の受給権を初めて認める判断だっただけに、司法の最終判断が注目されていた。 原告の女性は2008年12月に大分市に生活保護を申請したが、夫名義の預金があることを理由に却下され、却下処分は不当として市を提訴した。 生活保護法をめぐっては、旧厚生省が1954年に外国人を同法に準じて扱うよう通知。90年に対象を永住外国人らに限定し、現在は自治体の裁量で生活保護費が支給されている。原告女性も提訴後の11年10月に申請が認められ、市の裁量で保護を受けている。 一審大分地裁は10年10月、「生存権保障の責任はその人が属する国が負うべきだ。外国人に生活保護法の適用はない」と女性の訴えを退けた。 一方、11年11月の二審判決は、行政措置で給付を受けてきた経緯を踏まえ「永住外国人を含む一定範囲の外国人は、日本国民に準じた生活保護法上の待遇を受ける地位が法的に保護される」と異なる判断をしていた。 大分市の大木治郎福祉事務所長は「市の主張が基本的に認められた。今後も生活保護行政の適正な実施に努めたい」とのコメントを出した。 「国民、という(生活保護法の)文言だけで切り捨てられた。非常に形式論で、司法の使命を放棄した判決と言わざるを得ない」 永住外国人を生活保護法の適用対象と認めなかった18日の最高裁判決。東京・霞が関で会見した原告の中国籍女性(82)の代理人、瀬戸久夫弁護士(県弁護士会)は「日本で生活基盤を築き、国籍以外は日本国民と同様の生活を送る人に認めないという判断。支給が国籍基準になるという、大きな問題を示した」と批判した。 女性は日本で生まれ育ち「国外に出たことがない」(瀬戸弁護士)という。働いて税金も納めてきた。生活に困窮したのは、夫が入院した後、親類から通帳を取り上げられるなどしたためだった。夫は昨年亡くなり、現在は1人暮らし。市の裁量で保護を受けてはいるものの、「1954年の旧厚生省通知は法的根拠がなく、いつ切られるか分からない」との懸念もある。 最高裁判決は、生活保護法が適用対象とした「国民」という言葉には、外国人は含まないと判断した。「生活保護は最後のセーフティーネット。永住外国人については何らかの形で法改正をしなければならない」と強調した。