(夕子)
過ぎ去った時間は戻らない
でもあなたが生きた証しは残る
きっと
(たまき)あぁ!あぁー!どうして?あぁ!
(小藤)葵さんどうしました?
(雪江)亡くなってるんです。
(妙子)何がなくなったの?大事なもの?違います!あのうお隣の園山さんが死んでるんです。
(妙子・小藤)えぇー!えぇ!?
(中村)あぁ。
いやー休みのところをわざわざすまなかったな。
(桜木)いえ。
体調の方は?まぁいいと言えば嘘になるが検査入院だ。
心配はいらん。
それより霞検事はどうしてる?また現場に出向いて余計なことに首を突っ込んじゃいないだろうな?ご心配なく。
検事も今日はご自宅でくつろいでらっしゃるはずです。
そうか。
私がいない間君がしっかり手綱を握っておいてくれ。
あっいや。
君も彼女と同類か。
・
(ノック)
(看護師)そろそろ面会時間が終わります。
あっうーん。
何かの虫の知らせかもしれん。
霞検事のことはくれぐれも。
いいな?はい。
江藤?
(桜木)あっごめんなさい。
すみません。
(サイレン)
(占部)ご苦労さまです。
金さんどうですか?
(占部)凶器は?
(鑑識課員)これです。
(占部)バットみたいに堅い木だな。
(梅野)ディジュリドゥ。
オーストラリアの先住民族アボリジニの楽器ですよ。
大小様々ありますが世界最古の管楽器といわれています。
(占部)梅ちゃんいつからそんな雑学博士になったんだ?エヘヘ。
ちょっとこれ見てください。
アハッ。
娘と初めて行った海外旅行がオーストラリアだったものですから。
(占部)ふーん。
あっこれですこれです。
これがディジュリドゥです。
(金川)死因はおそらく後頭部を殴打された際の頭蓋底骨折だね。
ディディジュ…ディジュ何?
(梅野)ディジュリドゥです。
(金川)ちょっと待った!どうしました?今息をしたような気がしたんだ。
ハハッ。
何言ってるんですか。
完全に亡くなってるじゃな…。
(占部・梅野)うわー!
(たまき)えとうたつお…。
こんなことが。
やはり亡くなってる。
そ…そんな。
だって…。
おい!今名前言ったよな?ええ。
確か「えとう」「えとうたつお」確かにそう言ったよな?はい。
(夏子)死んですぐの人って魂がホントにさまよってるの?
(彩子)うん。
あの世でもこの世でもない世界をね。
あっお通夜って確か亡くなった人が迷わないためにあるんじゃなかった?ほらお線香とろうそくを一晩中。
(夕子)そうね。
お線香の一筋の煙はあの世への道しるべっていわれてる。
(友行)それだけじゃないぞ。
(夏子)あぁ。
(友行)まれに亡くなった人が生き返ることがあるらしいんだよ。
えっ!?
(友行)だから一晩本当に亡くなったかどうか様子を見ようっていうのがお通夜でもあるんだよ。
生き返る?死んだ人が?
(友行)うん。
(友行)ひえっ!はい。
(友行)あぁ。
もしもし。
(今村)捜査で点検が中断しちゃってまして。
(今村)現場は4階になります。
あぁご苦労さまです。
被害者は1年前にここに越してきた童話の挿絵画家園山たまきさんです。
ウサギのフワリです。
あれ?ご存じありませんか?カエルのマシューとタヌキのポンポン。
3人で世界中を冒険する話で。
娘にも最近買ってやったばかりなんですが。
娘の話はいいよ。
(梅野)あっすいません。
寝室はあちらです。
どこかへ行かれる予定でもあったんでしょうか?あっすぐ調べます。
被害者は後頭部を殴打されほぼ即死。
違うな。
こういう場合何て言えばいいんだ?梅ちゃん。
あのう。
生き返ったっていうんでしょうか。
(占部)ええ。
えっ?どういうことですか?いやー驚きました。
突然ぱっと目が開いたんですから。
目が開いた?
(占部)突然です。
初動捜査の刑事が死亡を確認し臨場の際に自分と検視官が死亡を確かめて遺体を運び出す段になって…。
目が開いて名前を。
名前を?「えとうたつお」と名前を言ったんです。
えとう?
(占部)うん。
その後被害者の方は?残念ながら。
搬送された病院で詳しく調べたんですが死亡が確認されました。
まさに死人に口ありってやつですよ。
えとうたつお。
有力な手掛かりあるいは容疑者の名前かもしれませんな。
何せ被害者が最期に言い残した名前ですからね。
あのう本当に「えとうたつお」と言ったんですか?
(占部)間違いない。
梅ちゃんも金川検視官も聞いてる。
何か?はい。
先ほど検査入院中の中村刑事部長に書類をお持ちしたんですが。
ここからすぐの病院です。
その帰りに昔の友人を見掛けました。
《江藤?》
(桜木)その友人が江藤達夫という男で。
江藤?本当か?ただ人違いかもしれません。
彼は弁護士になってるはずで私が見掛けたその男は作業着を着ていました。
だが変装していた可能性だってある。
いえ江藤に限って…。
そんな偶然があると思うか?その江藤達夫っていう弁護士はどこにいるんだ?それが大学卒業以来20年以上会っておりません。
大学の同級生だったってことか?
(桜木)はい。
部活が一緒でした。
桜木君確か東都大だったよな。
(桜木)はい。
梅ちゃんすぐ調べてくれ。
(梅野)はい。
第一発見者の方は?はい。
隣の部屋の住人で葵雪江という女性です。
7時に帯留めを?ええ。
この帯留めなんですが。
(雪江)明日は園山さんが絵を描かれた童話の海外での発売を記念したパーティーが京都であるとかで。
7時にお貸しする約束をしていました。
でも7時になってもおみえにならないので7時半すぎに私の方からお訪ねして。
(チャイム)《園山さん》
(雪江)そしたらまさかあんな…。
この帯留めは園山さんがお選びになられたんでしょうか?
(雪江)ええ。
幾つか持っておりましてその中から。
ありがとうございます。
園山さんを発見された後はすぐに管理人さんの所へ?
(雪江)はい。
小藤さんに警察を呼ぶように言いました。
なぜ救急車ではなく警察を?亡くなっていると思ったからです。
違うんですか?
(占部)失礼します。
(雪江)清水さん。
葵代議士の第一秘書の方です。
こちら東京地検の霞検事です。
(清水)清水と申します。
霞です。
(清水)奥さまへの聴取は弁護士を帯同させた上であらためてお願いしたいと葵からの申し出がございまして。
葵代議士といえば宮崎県選出で次期大臣候補の一人です。
彼女も民自党婦人会の副会長だ。
宮崎の局アナ出身で地元の知名度は抜群らしい。
このマンションは彼女が上京したときのためにと葵代議士が借りていたものだそうです。
本当にあの帯留めを園山さんが選んだのかしら?はい?彼女が貸す予定だった帯留めが園山さんの帯にそぐわないような気がするんです。
ええ言われてみれば。
しかし合う合わないなんてのは主観的なもんでしてかくいう私も誰に何と言われようとこの赤いネクタイが気に入っておりますし。
お似合いです。
終わったか。
はい。
現場への上がり降りが楽になります。
あのう。
定期点検というとどの程度の割合で?
(古池)こちらは月に一度です。
第2日曜日に。
作業を始める時間も決まっているんですか?
(古池)5時半からでえー2時間ほどで終わります。
まぁ今日も7時半には終わってたんですが警察から色々。
先ほども聴取を。
エレベーター内の作業なので人の出入りは見ちゃいないそうです。
防犯カメラの映像を見せていただけますか?検事ここにはないんですよ防犯カメラ。
えっ?どういうことですか?われわれ夫婦が24時間常駐してるからです。
なぁ妙子。
(妙子)ええ。
今日だって怪しい人間は一人も入れてません。
セールスの類いはお断りしてますし訪問される方はここで身分を確かめた上で住民の方に取り次いでるんです。
怪しいやつはアリ一匹通さないの一点張りでして。
アハッ。
エヘヘヘ。
1階の玄関非常階段につながったこの駐車場のドア。
マンションの出入り口はこの2カ所だけです。
ここから入るとすれば暗証番号を入力しなければ入れない。
(占部)そういうことだ。
でも暗証番号さえ知っていれば誰でも入ることができる。
ええ。
ここには防犯カメラはありません。
作業着であればなおさら目立ちませんね。
そうか。
今日がエレベーターの定期点検の日だと知っていれば別に目立ちませんね。
桜木君が見掛けたっていう江藤っていう弁護士が作業着を着ていたのは姿を見られたときのためのカムフラージュだった可能性も。
(梅野)お疲れさまです。
弁護士の江藤達夫について調べてきました。
現在新橋の方の法律事務所で仕事を。
明日の朝確かめに。
はい。
先ほどご連絡させていただきました警視庁の占部と申します。
(事務員)少々お待ちください。
・
(ノック)
(江藤)はい。
・
(ドアの開く音)
(事務員)失礼いたします。
お邪魔いたします。
警視庁捜査1課の占部です。
(江藤)初めまして。
桜木か?しばらく。
久しぶりだな。
卒業以来か?あっそうか。
地検の事務官やってるって聞いてたが。
するとこの方が?霞検事です。
霞です。
江藤です。
どうぞ。
お忙しいところ申し訳ありません。
いえこちらこそせっかくお越しいただいたのに申し訳ないのですがこの後依頼人との打ち合わせが入ってまして。
ゆっくり話せないのがホントに残念なんだが。
また後日に。
それでお話というのは?あぁはい。
参考までにお伺いしたいことがございまして。
どうぞ遠慮なく。
(占部)ありがとうございます。
昨夜の7時半ごろ江藤先生はどちらにいらっしゃいましたか?昨日は一日自宅にいて今抱えてる案件の調べ物をしてました。
一日中ご自宅に?
(江藤)ええ。
食事も自宅で済ませましたから一歩も外に出てませんね。
経堂にいたということはないか?経堂?ないな。
第一経堂は仕事でさえ行ったことがない。
それと事件と何の関係が?あぁ申し上げたように参考程度のことです。
ただ昨夜の7時半ごろ経堂で先生を見掛けたという話が出たもんですから。
私が?妙ですね。
他人の空似としか言いようがありません。
そうですか。
先生は園山たまきという方はご存じありませんか?園山たまきさん?いえ記憶にございません。
・
(ノック)
(江藤)はい。
(事務員)江藤先生そろそろお時間です。
分かった。
ホントに申し訳ありません。
お忙しいところありがとうございました。
また聞きたいことがあればいつでも。
悪いな。
今度ゆっくり。
ああ。
(占部)真面目そうな男でしたね。
別段嘘を言ってるようにも思えなかった。
(桜木)彼は学生時代から実直な男で今も昔と全然変わってはいませんでした。
やはり私の見間違いだったのかもしれません。
でもアリバイはないに等しい。
検事は江藤をお疑いですか?園山さんが最期に「えとうたつお」と言い残した以上無視することはできません。
私は梅ちゃんと合流して聞き込みを。
何か分かりましたらすぐお知らせします。
お願いします。
園山さんには昨日の何時ごろ電話を?
(酒井)はい。
朗読会が始まる6時ごろでした。
朗読会?
(酒井)ええ。
彼女が挿絵を描いた絵本の朗読会です。
(酒井)客入れが始まった午後6時に電話をして園山先生とは普段どおり10分ぐらい仕事の話を。
すると電話をお切りになったのは午後6時10分ごろということですか?はい。
(占部)あっちょっと失礼。
もしもし。
あぁ先日はどうも。
(岩瀬)被害者の携帯に「えとうたつお」という人物は登録されてない?
(岩瀬)被害者が言い残した男の名前だ。
無関係なはずはない。
徹底して洗え!
(一同)はい。
園山たまきさんが水道の修理を?はい。
あの管理人夫婦が思い出して電話してきてくれましてね。
洗面台の水漏れ修理を依頼された業者が午後7時に園山さんを訪ねてきたそうです。
(宮川)《お留守のようなので帰ります》
(小藤)《あららら》
(妙子)《あら》
(占部)しかし園山さんは留守で帰っていきました。
午後7時。
(桜木)第一発見者の葵雪江さんも午後7時帯留めを園山さんに貸す約束をしています。
でも園山さんは応答しなかった。
2つの話から午後7時以前に園山さんが殺害されていたとみて間違いないでしょうな。
それに担当編集者の話から犯行時刻もますます絞り込める。
担当編集者?はい。
先ほど園山さんの担当だった酒井周平という編集者に話聞いてきました。
6時に園山さんに電話をし普段と変わりなく話をした後6時10分には電話を切ったそうです。
園山さんの携帯記録から裏は取ってあります。
(桜木)午後6時から電話を切った6時10分までの10分間園山たまきさんの生存は確認されている。
そして午後7時水道の修理業者が来たとき園山さんの応答はなかった。
ということはですね6時10分から7時までのごく限られた時間内に園山さんは殺害されたということになります。
(葵)待たせたね。
(葵)今夜の後援会のパーティーやっぱり君も来た方がいいな。
県人会の表彰式のときに着たドレスあれ女性の支援者に評判いいから着てきなさい。
後で清水に取り行かせるから。
あっ。
あそこ引き払うことにしたから。
引き払うってあのマンションをですか?ああ。
荷物の整理も清水に任せて君はホテルでゆっくりするといいよ。
でもあのお部屋とっても気に入ってるんです。
何言ってるんだよ。
人が殺された隣の部屋だぞ。
君がよくたって世間の目があるだろう。
あなたは選挙のことしか頭にないんですね。
違うよ。
ネットで妙な風聞が立って君が面倒なことに巻き込まれないためだよ。
先生お時間です。
(葵)分かってるよ。
じゃあ後で。
はぁ…。
(宮川)はい。
ゆうべの7時のご指定でしたがお留守でした。
確かに7時ですか?
(宮川)はい。
園山さんはわりと時間にうるさい方ですからご注文どおり7時ちょうどにお伺いしました。
園山さんは以前にも修理の依頼を?ええ。
あっいや消耗品交換のご注文を何度か。
初めは管理人さんを通してでしたけど最近はネットで直接のご用命の方が多かったですね。
何か?ダブルブッキングが気になるの。
修理を依頼した時間と隣の葵雪江さんから帯留めを借りる約束をした時間が同じだからですか?しかしですね…。
ええ。
修理をしてもらってる間に帯留めを借りに行くことはできる。
でも園山さんの部屋には大切な絵本の原画が。
それを置いたまま出掛けられるものかしら。
確かに。
いくらこれまでも依頼したことある業者とはいえ作品を置いたままというのは…。
(今村)失礼します。
妙ですね。
別段水漏れは見当たりません。
・
(今村)お帰りですか?ご不便お掛けします。
お部屋を引き払われるんですか?主人がそうしろと言うものですから。
あのう主人の後援会で着る服を取りに来ただけなんです。
秘書も男性ですので任せるのは…。
分かります。
あぁ…。
あっどうぞ。
このお部屋はもう長く?1年ぐらいでしょうか。
党の婦人会の役員を任されてからですから。
お隣の園山さんと同じころに?ええ。
あのう事件のお話でしたら弁護士を通すように固く主人からも言われておりまして。
存じております。
でも亡くなった園山たまきさんのために少しだけお話をさせていただけないでしょうか。
何でしょうか?ありがとうございます。
昨日園山さんのお宅から何か物音のようなものは聞こえませんでしたか?いいえ。
そうですか。
園山さんがこちらにおみえにならないので様子を見に行かれた。
チャイムを押しても返事がなかったとき留守とはお思いには?前にも同じことがあったんです。
園山さんお仕事をなさっていていくらチャイムを押しても気付かないことがありました。
それでは園山さんのお宅にこれまで男性が訪ねてきていたというようなことは?いいえ。
存じません。
あのうもうこれぐらいで。
主人に知れたら…。
分かりました。
ただもう一つだけ。
「えとうたつお」という名前を園山さんから聞かれたことはありませんか?いいえ。
覚えがありません。
ありがとうございました。
よし。
弁護士の江藤達夫が任意に応じたか。
はい。
同行し待たせております。
被害者との接点は不明にしろ被害者が最期に口にした名前の男だ。
何としても口を割らせるんだ。
(占部)はい。
桜木事務官は江藤弁護士の旧友だと聞いてますがもし江藤弁護士の事件への関与が認められた場合捜査から外すこともお考え願えますか?霞検事。
はい。
そのときは。
(江藤)先に言っておきますが私は園山たまきという人とは会ったことすらありません。
ですがね江藤先生園山たまきさんは亡くなる間際に先生の名前を言ったんですよ。
私の名前を?ええ。
「えとうたつお」われわれははっきりとこの耳で聞きました。
発見されたときにはまだ息があったんですよ。
しかし私と同じ名前を言ったからって…。
全国に「えとうたつお」という名前の男は何人いるんですか?だが先生は現場近くで目撃されてる。
ですから経堂へは行ったことすらないんです。
だったらアリバイは?昨日の午後6時すぎから7時半の間現場にいなかったと証明できる人間はいますか?前にも言ったように家で調べ物をしてました。
ただ…。
彼女も一緒だった。
彼女?
(江藤)婚約者です。
ハッ。
前にはそんなこと言っちゃいなかった。
(江藤)ここまで疑われているとは思わなかったのでお話ししなかっただけです。
その婚約者の名前は?小泉理恵子です。
私と同じ法律事務所で働いてます。
マンションも彼女と一緒に。
同棲してるんですか?
(江藤)ええ。
数年前からです。
ですから理恵子に聞いてみてください。
昨日一日私は彼女と一緒にマンションにいました。
本当です。
私は園山たまきという人を殺してなどいない!弁護士なら同棲相手の証言はアリバイの証明になりにくいってのは当然知ってるでしょうに。
あんなに必死に否定されると何だかシロって気になっちゃいますね。
ともかく彼の婚約者を。
当たらせます。
(警官)あっ占部警部。
(占部)うん?
(警官)警部にお話があるとのことで。
(智美)神奈川県警逗子中央署生活安全課の関田と申します。
階級は巡査長です。
逗子中央署?園山たまきさんが元交際相手からストーカー被害を?はい。
別れたにもかかわらず同じ男によって執拗な付きまといなどのストーカー被害を受けていると1年ほど前相談にいらしたんです。
私はたまきさんに被害届を出すように言いました。
相手を刺激するのを恐れて被害を訴えない女性が多いからです。
結果たまきさんは勇気を出して被害届を出してくれました。
(智美)でもうちの署は元の交際相手へ警告を出しただけにとどまりました。
そしてたまきさんには転居を勧め相手には一切連絡先を教えないようにアドバイスするぐらいしかできずに。
今朝たまきさんが殺害されたことを知ってすぐに宇佐美の顔が浮かびました。
宇佐美?宇佐美っていうのは元交際相手の男ですか?
(智美)はい。
これが宇佐美貴彦です。
私たち…いえ私がもっと注意をしていればこのようなことにはならなかったかもしれません。
園山さんがストーカー被害を受けていたときの調書などは今…。
うちの署で保管してあるはずです。
すぐに行きましょう。
(桜木)車を回します。
ちょっと待ってください。
逗子は管轄外もいいとこですよ。
責任は私が取ります。
(古川)東京地検!?関田巡査長から話を聞きました。
宇佐美貴彦に関する調書やデータを全てお渡しください。
待ってくださいよ。
横浜地検を飛び越えて東京地検の検事殿に命令される筋合いはありません。
ここは神奈川県だ。
これは命令ではありません。
要請をしています。
こんな要請は聞いたことがない。
園山たまきさんへの保護を怠ったのは他でもないあなた方です。
待ってください。
ストーカー規制法に基づいてわれわれは宇佐美への警告をしました。
それも1回警告しただけだと伺いました。
その後のことはお考えにはならなかったのですか?事務的な処理でストーカー被害はなくなるとでも?もし園山さんを殺害したのが宇佐美だとしたらあなた方の責任は重大ですよ。
チッ。
関田お前面倒なことを。
(桜木)関田巡査長が話してくれなければこの件は表に出なかったかもしれません。
もし彼女に何らかの圧力がかかれば速やかに神奈川県警の監察室へ訴え出ますがよろしいですか?はぁ…。
署長に相談させてください。
(中村)何?霞検事が逗子に乗り込んだ?あっあっ…つつつ。
どういうことなんだ?江藤達夫が犯人じゃない!?霞検事が勝手にやられたことで。
ただこの予備校の講師宇佐美って男もかなりくさい男には違いありません。
(梅野)ありがとうございます。
(占部)ありがとうございました。
(梅野)電話もなく1週間前から休んでるって怪し過ぎますよね。
うん。
宇佐美の自宅を当たるぞ。
(梅野)はい。
(光子)ええ。
よーく知ってますよ。
園山たまきさん。
1年前までねよーくみえてたんですよ。
あっ絵もねああして描いてくださって。
まぁかわいらしい絵を描くとおりに優しい人でしたよ。
うちの娘ね仲良かったから呼びましょうか?近くに住んでるんですよ。
お願いします。
(梅野)部屋には帰っていない?
(大家)ええ。
ここ1週間見掛けていないんですね?
(大家)ええ。
どんな男でしたか?宇佐美って男は。
(香織)たまきの絵本が注目されたのは自分と付き合ったからだって宇佐美って男は思い込んでるようです。
だから別れてからもしつこく付きまとって。
電話番号やアドレスを変えてもたまきのきょうだいや友達に成り済まして調べてたりして。
(メールの着信音)
(たまき)《あぁ!》
(香織)たまき一生宇佐美からは逃げられないって言うからそんなことないって励ましたんです。
東京まではさすがに追っていけないと思ったんですけど…。
園山さんが東京へ引っ越されてから連絡は?
(香織)たまきから時々電話が。
公衆電話からでした。
迷惑が掛かるかもしれないからメールも住所も教えないでおくって。
うお!何だこりゃ。
(酒井)スノーマシンのテストOK。
次にスクリーンテストだ。
(スタッフたち)はい。
(酒井)宇佐美?あぁ園山先生が以前交際していた?
(桜木)ご存じなんですか?
(酒井)会ったことはありませんが半年ぐらい前でしたか会社に電話が。
園山先生の住所をしつこく聞いてきましてね。
まぁもちろん教えませんでしたけど。
あの男が先生を?それはまだ。
その宇佐美について園山さんから何か話は?いえ。
そういった相手がいたっていうことだけで。
もともとプライベートなことはお話しにならなかった方なので。
そうですか。
すてきな絵ですね。
園山先生は亡くなられても先生が描かれた絵はこうして残ります。
子供たちに永遠に語り継がれる財産ですよ。
(占部)霞検事。
たった今江藤弁護士の婚約者小泉理恵子から裏が取れたと報告がありました。
(理恵子)その日でしたら私も江藤さんもマンションからは一度も外には出ていません。
(占部)ただ婚約者ですから信ぴょう性に乏しいといえますが。
それより宇佐美の方でかなりの収穫が。
(梅野)これが事件の前日宇佐美貴彦が横須賀で借りたレンタカーと同じ車種同じ色の車です。
そしてそのレンタカーに乗った宇佐美をNシステムで見つけ出しました。
東名高速から首都高に乗ったときのものでこちらも事件の前の日のものです。
この後のものは?現在確認中ですがもうしばらく時間がかかると思われます。
(岩瀬)検事がわれわれに一言の相談もなく神奈川県警に乗り込んでくれたおかげで宇佐美の存在が浮かび上がった。
さすがですな。
これだけのものが揃えば宇佐美が真犯人であることは間違いないでしょう霞検事。
ですが物的証拠は何一つ挙がっていません。
それは弁護士の江藤も同じじゃありませんか。
婚約者の証言とはいえ江藤にはアリバイがあるやもしれず宇佐美がこうして浮上してきた以上重点的に捜査をすべきと考えますがいかがでしょうか。
異論はありません。
(岩瀬)事件の早期解決が捜査本部最大の目的であることを鑑み徹底的に宇佐美貴彦の行方を追え!
(一同)はい!ありがとう。
検事はまだ園山さんのダイイングメッセージのことを…。
宇佐美の事件前日の目撃情報からすれば宇佐美が何らかの方法を使って園山さんのマンションを突き止めた。
そう考えても不思議ではないような気がするんですが。
でもそうなると「えとうたつお」という言葉が宙に浮いてしまう。
園山さんがどうして最期に「えとうたつお」と言い残したのか。
そこに事件の鍵があるように思えてならないの。
なっちゃん。
あっおかえりなさい。
何してるの?夏休みだからって夜更かししたら学校が始まってからつらくなるわよ。
だってお通夜だから生き返るかもしれないじゃない。
えっ?まったく…。
友行さんが余計なこと言うからですよ。
(友行)えっ?
(夏子)そうよ。
余計なこと言うから。
はい。
なっちゃん。
ごめんなさい。
どなたがお亡くなりに?おじいさま。
長いことご自宅で闘病を。
人間っておかしなものね。
お亡くなりになる直前に言い残したのが「先生ごめんなさい。
もうしません」あら。
(友行)どうやら小学校のころの先生に向けたものだったらしいよ。
ご家族揃って介護してたのに拍子抜けだってさ。
亡くなる間際子供に返ったのね。
子供のころどんないたずらしたのかしら。
(たまき)《えとうたつお…》目が開いた?
(占部・梅野)うわー!
(占部)まさに死人に口ありってやつですよ。
(たまき)あぁ!
(占部)連続殺人だ。
(岩瀬)直ちに本件容疑者として指名手配する!もしかすると大きな間違いを犯していたのかもしれない。
(カメラマン)奥さま。
先生と寄り添う感じでお願いします。
(カメラマン)いいですね。
(カメラマン)もう少し柔らかい感じでお願いします。
はい。
(カメラマン)奥さま。
その重ねられてる手なんですが指輪を見せるように直していただけますか。
(カメラマン)すてきな指輪ですね。
そのままでお願いします。
(シャッター音)
(山岸)話を聞いて私も驚きました。
心肺停止になった人がその後生き返ったという事例はまれにあります。
しかし多くの場合は心臓が止まってから数分ほどで脳に酸素が行かなくなるのでたとえ息を吹き返したとしても脳に何らかのダメージが残ります。
心肺停止後しばらくたってから意識を取り戻しなおかつ言葉を発するというのは奇跡としか言いようがありません。
でも現実にそれが起きました。
はい。
おそらく被害者は頭を殴打されて意識不明に陥ったものの警察が到着する直前まで心臓は動いてたんじゃないでしょうか。
だからそれまで脳内に酸素も送られていた。
その後息を吹き返し「えとうたつお」と。
説明がつくとすればそういうことかと。
死にきれなかったのかもしれませんね。
検視直前まで園山たまきさんは生きていた。
桜木君。
はい。
宇佐美の借りたレンタカーです。
(梅野)霞検事。
宇佐美の身柄を?
(梅野)あっいや。
レンタカーだけが羽田空港の近くの駐車場で見つかりました。
宇佐美は逃走したもようです。
車だけが…。
(鑑識課員)写真!これが凶器の木片か!はい。
この木片に園山さんの血痕が付着してました。
殺害する際に床に飛び散った木片を宇佐美が踏み付け知らずに車を運転したものと思われます。
よくやった!宇佐美が犯人だという動かぬ証拠だ!ですが岩瀬管理官。
宇佐美はなぜレンタカーを羽田の駐車場に乗り捨てたんでしょうか。
羽田からどこかへ逃亡したと考えて間違いないでしょう。
空港へはすでに搭乗者記録提出の要請をしております。
でも発見されにくい場所ならともかく証拠が残っているかもしれない車を羽田の駐車場に乗り捨てるものでしょうか。
逃げるのに頭いっぱいだったんでしょうな。
検事はまだ「えとうたつお」にご執心のようですがこうして証拠が挙がったからには宇佐美が本ボシです。
直ちに宇佐美貴彦を本件容疑者として指名手配する!
(一同)よし!江藤さんは仕事ですが。
あなたにお話があって伺いました。
事務所で今日はお休みだと聞いたので。
私に?江藤さんのことでしたら刑事さんに…。
何度も申し訳ありません。
どうぞ。
私の父と母です。
お父さまも弁護士を。
(理恵子)ゆくゆくは江藤さんに跡を。
父はそう考えてるんです。
そうですか。
江藤さんとはもう長く?ええまぁ。
でもそのことと事件と何か関係があるんでしょうか。
(理恵子)どうぞ。
江藤先生は殺された園山たまきさんのことは知らないということですが本当でしょうか。
本当です。
そう断言なさる理由は?依頼人の中に園山たまきという人がいないからです。
彼は仕事一辺倒で依頼人以外の女性との接触などあり得ませんから。
お仕事のパートナーでありこうして一緒に住まわれてもいらっしゃいますから間違いないでしょうね。
ええ。
園山さんが殺害された日も江藤先生とはご一緒だった。
はい。
一日ここから出ていません。
江藤先生は調べものをなさっていたんですよね?そこが彼のデスクですが食事やトイレ以外この部屋にこもってずっと仕事をしていました。
あなたは何を?一日何をなさっていたんですか?食事とかの用意を。
あのう私からお話しすることはもう何もありません。
あの日江藤さんは私と一緒にいたんです。
それ以上お話しすることはありません。
あのう…。
お休みのところ失礼いたしました。
事件のあった夜私が見掛けたのは江藤に間違いありません。
はっきりと確信を持ちました。
思い出したんです玄関にあったあの白い日傘を。
彼女は江藤をつけていた。
もしそうだとすれば江藤が現場のマンションに行っていたのを見ていたかもしれません。
事件にどう関わっているかは不明ですが事件のあった日一日中このマンションにいたというアリバイを崩すことさえできれば…。
でもそれは江藤弁護士が有力な犯人に結び付く証拠になるかもしれない。
私を見くびらないでください。
何年検事にお仕えしてきたと思ってらっしゃるんですか。
たとえ友人でも江藤が園山たまきさんを殺害した犯人ならば見過ごすわけにはいきません。
占部警部に事件当日の小泉理恵子を調べ直すよう要請を。
はい。
・
(ノック)
(桜木)はい。
(山岸)突然申し訳ありません。
昨日発見されたレンタカーを調べていて気になるものを見つけたものですから。
凶器の木片以外にですか?はい。
運転席のマットなんですが…。
ただのマットに見えますが。
これが拡大したものです。
(山岸)これです。
非イオン系の界面活性剤です。
おそらく洗剤の類いかと。
洗剤?ただマットを洗う洗浄剤をくまなく調べたんですがどれも成分が違いました。
それで凶器の木片と同じときに宇佐美の靴底に付着した可能性もあると思い被害者宅の床も調べてみたんですが同じ成分のものは発見できませんでした。
犯人はどこかで洗剤のようなものを踏んでいたということでしょうか。
そういうことです。
いったい何に使用するものなのか現在調べてる最中です。
・
(桜木)はい。
検事。
宇佐美貴彦の遺体が多摩川で発見されました。
(岩瀬)以上だ。
頼むぞ。
(一同)はい。
発見された遺体は宇佐美に間違いありませんか?ええ。
所持品を確かめ親族に遺体を確認させました。
(桜木)死因は?詳しい死因は検視待ちだが水死とのことだ。
遺体の状況から上流から下流へ流され発見されたもようです。
おそらく逃げ切れなくなったと思い自ら命を絶ったのかもしれませんな。
自殺。
被疑者死亡で送検ということもあり得ます。
そのときにはよろしくお願いいたします。
(梅野)霞検事。
江藤のアリバイ崩れるかもしれませんよ。
小泉理恵子が事件当日一日中マンションにいたというのは嘘でした。
近所の主婦が出掛ける小泉理恵子を見てたんです。
(梅野)時間は事件当日の午後3時ごろのことだそうです。
もし小泉理恵子が江藤をつけていたのだとすれば江藤も出掛けていたことになります。
ええ。
たまきさんと2人の接点は…。
・
(ノック)
(桜木)どうぞ。
(智美)失礼します。
お忙しいところ申し訳ありません。
捜査のことが気になって。
捜査本部には行きづらいものですから。
宇佐美が遺体で…。
捜査本部は自殺の線で動いています。
宇佐美は最初から死ぬつもりでたまきさんを道連れにしたかったんでしょうか。
それはまだ分かりません。
どうしてもっと早くたまきさんのことを気に掛けてあげられていたらと後悔せずにはいられません。
怖かっただろうと思います。
たまきさんの絵を見ました。
初めて拝見したんですがとてもすてきな絵でした。
私もどうしてあんな絵を描けるんだろうと思って尋ねたことがあるんです。
そしたら「机の上だけが私にとって自由な世界だから」って。
机の上だけの自由。
(智美)宇佐美との関係を想像せずにはいられませんでした。
別れてからも付きまとわれてそこから必死に逃げて。
彼女にとっての自由は絵を描いているときだけ存在していたのかもしれないって。
(智美)気に入っていたものに囲まれて絵を描いてるときの彼女はホントに幸せそうでした。
東京の園山さんのマンションへ行かれたことが?はい。
引っ越されて間もなくのころです。
(たまき)《どうぞ》
(智美)《うわーすてきなお部屋ですね》
(たまき)《ここに引っ越してきてからようやく安心して眠れるようになったんです》
(智美)《ただセキュリティーの面が心配です》《管理人の方が常駐されているとはいえ防犯カメラがありませんでした》《宇佐美には関係ありませんよ》《私がここにいるのが分かればあの男はどんな方法を使ってでも私を…》《たとえ防犯カメラがあって宇佐美が映ったとしてもきっとそのときは私殺されてるような気がします》《たまきさん》《でも安心してください》《ここにいることはあなたや一部の人しか知りませんから》《それにもしかしたらここに住むのは2人になるかもしれませんし》《あっどなたか一緒に?》《あっそうだ。
おいしい紅茶があるんです。
すぐいれますね》《あっじゃあこれ》《ごちそうさまです。
すいませんじゃあ頂きます》《どうぞ座っててください》
(智美)《はい》失礼します。
園山さんにはひそかに交際していた男性がいた。
もしかしたらその相手は…。
(桜木)江藤の婚約者小泉理恵子は江藤と園山さんの関係を知ってあの日尾行を。
そして江藤は園山さんとの関係がこじれ邪魔になって…。
いや小泉理恵子の線も。
自分の婚約者を園山さんに奪われたという動機があります。
でもそうなると今度は宇佐美が宙に浮いてしまう。
(桜木)ええ。
宇佐美はなぜレンタカーを乗り捨てて…。
自殺をするつもりなら車を使って多摩川の上流へ行くはずじゃないかしら。
検事は宇佐美は他殺だと?宇佐美が真犯人に利用されたのだとしたら。
われわれの目を宇佐美に向けさせるために?彼がたまきさんの交際相手だとしたら宇佐美の存在を知っていてもおかしくない。
宇佐美の検視については他殺の線も踏まえて注意深く行うように要請を。
(桜木)はい。
・
(ドアの開閉音)
(酒井)江藤達夫のことならこの間も警察の方にお話ししたんですが聞いたことのない名前でしてね。
この顔に見覚えは?あっ。
(桜木)ご存じですか?
(酒井)名前は忘れてましたが顔を見て思い出しました。
会ったことがあります。
弁護士の先生だ。
会ったのは確か園山先生が東京に越してこられて間もないころでした。
例の元カレのことでいい弁護士が見つかったって紹介されて一度だけ。
名刺を受け取ったはずなんですがなくしてしまったみたいで。
・
(ノック)・
(理恵子)失礼します。
明日の案件の資料です。
父が式の日取りはまだ決まらないのかって。
あなたの誕生日にしましょう。
あ…理恵子。
(理恵子)決めたの。
そうするから。
(事務員)ええ。
相談にいらっしゃったことが3度ございますね。
内容はおっしゃったとおりです。
ありがとうございました。
検事。
園山さんは江藤の事務所に相談に行ってました。
江藤から話を?いえ。
もうお話しすることはないと言ったはずです。
本当のことを言っていただければいいだけです。
(理恵子)本当のことって…私嘘なんか一つも。
園山たまきさんが殺された日あなたは江藤先生と一緒にいた。
それは本当ですか?
(理恵子)何度も言ったとおりです。
ですが私はあの夜白い日傘を持った女性を目撃しました。
それも江藤先生と出会った直後に。
私が見たのはその白い日傘です。
違う。
私じゃありません。
私じゃない。
あなたはあの日ここから出ていくのを目撃されています。
殺された園山さんが江藤先生の法律事務所へ相談に行かれたことも分かっています。
理恵子さん。
本当のことを話していただけますか。
江藤さんが月に一度女と会っていたのは知っていました。
(理恵子)彼は見たこともない作業着に着替えていました。
彼の女が以前事務所に相談に来た園山たまきという女だということはマンションの住所を見て気付いたんです。
(電子音)《あっ…》
(理恵子)そして私はマンションの近くで彼が出てくるのを待ちました。
その後あなたは再び江藤さんの後をつけ彼と出会った。
はい。
(桜木)《江藤?》
(桜木)《あっごめんなさい。
すみません》
(理恵子)その後彼は駅へ向かいました。
私はつけていたことを知られないように彼より先にタクシーを使って…。
江藤さんはたまきって女にだまされていたんです。
だから私との婚約も…。
解消しようとなさっていたんですか。
何年も待たされてその揚げ句突然…。
バカですね私。
別れたくなかったんです。
だからあの日一緒にマンションにいたことにしてくれって彼に言われて…。
でも彼は人を殺したりそんなことできる人じゃありません。
これは本当です。
たまきって女を殺したのは指名手配された男に決まっています。
彼は関係ありません。
園山さんが最期に見たのは江藤でした。
しかし彼女の話を信用していいのかどうか。
宇佐美がどう関わってるかも分かりませんし。
はい。
検事。
宇佐美の検視結果出ました。
他殺だったんですね。
(梅野)はい。
宇佐美の死体の首からごくわずかですが索条痕が見つかりました。
背後からベルトのようなもので絞殺された際のものだろうということです。
加えてもっと厄介なことが。
宇佐美が死んだのは園山さんが殺害されるよりも前だという検視報告です。
園山さんが殺される前?宇佐美には園山さんを殺すことができない。
そういうことです。
殺害後宇佐美の死体を多摩川に落としたのは発見を遅らせる目的と死亡推定時刻をごまかすためだったのかもしれません。
宇佐美は犯行に利用されたにすぎず犯人は園山さんをも手に掛けた人間。
その可能性は大いにある。
Nシステムに捉えられた宇佐美は犯人から呼び出されて東京に来たと考えてもおかしくはない。
だとすると同一犯による連続殺人だ。
(岩瀬)江藤達夫。
被害者のダイイングメッセージがそのままずばり犯人の名前だったとは。
単純な検事を心よりうらやましく思います。
本ボシは弁護士の江藤だ。
ですが確かな証拠はまだありません。
鍵。
はい。
ドアの鍵はどうして開いていたの?7時半に葵雪江さんが発見したとき部屋の鍵は開いていた。
仮に現在交際しているのが江藤で彼が犯人であるならば発見を遅らせるために部屋の鍵は掛けるはずです。
桜木君がマンションの近くで江藤弁護士を見た時間は…。
午後の7時35分です。
この時間彼は何をしていたの?葵雪江さんが倒れている園山さんを見つけたのとほぼ同じ時間。
桜木君。
車回します。
(小藤)あぁあのね…あのう引っ越しの準備は終わられてるんで問題ないと思うんですけど。
なぁ。
(妙子)あぁうん。
ご協力感謝いたします。
あぁはいはい。
(妙子)鍵ね。
はい。
はいよ。
どうぞ。
よいしょ。
ご苦労さまです。
桜木君。
(桜木)はい。
申し訳ありませんが警棒をお借りできますか?すぐお返しします。
あっはい。
何始めようっての?
(今村)さぁ…。
始めます。
・
(たたく音)・
(落ちる音)
(桜木)いかがでした?事件の夜この部屋の物音を葵雪江さんが聞いていても不思議ではないわ。
・
(目覚まし時計の音)
(目覚まし時計の音)
(今村)近くで聞くと結構おっきい音だなこれ。
待って。
(目覚まし時計の音)この目覚ましはこれまでもずっと?はい。
朝の7時と夜の7時に。
気になったんですがしばらくすると鳴りやみますし表で聞くとそんなにうるさいものでもなかったので。
それにともかく現場保存を命じられてますから。
はい。
もしかすると大きな間違いを犯していたのかもしれない。
えっ?たまきさんはあの夜の7時を過ぎても生きていた。
どういうことですか?科捜研の山岸技官です。
桜木です。
はい今そばに。
霞です。
宇佐美が借りたレンタカーのマットに付着していたものの正体がやっと分かりました。
そうでしたか。
ありがとうございます。
・
(ノック)あっ…失礼いたします。
そろそろ議員会館へ。
宮崎へお帰りになる前に先生が打ち合わせをなさりたいそうです。
打ち合わせ。
夫婦でいることが仕事みたいね。
まぁあの人にとってはそうなんでしょうね。
私は票集めの道具でしかない。
いえ決してそのようなことは。
いいのよもう。
ご同行願えますか?霞検事がどうしてもお話ししたいと。
君のお父さんに迷惑は掛けない。
これは僕の問題だ。
・
(ノック)・
(清水)失礼します。
東京地検の霞検事だ。
(雪江)存じています。
被害者について第一発見者である君にもう一度話を聞きたいそうだ。
妙な事件にこれ以上振り回されるのは君にとってもよくない。
この際だから話してきなさい。
ただしこの清水も同席させますがよろしいですね?はい。
どこへ行く気ですか?行けば分かりますよ。
(占部)梅ちゃん頼む。
こんな所でいったい何の話を…。
ご足労をお掛けし申し訳ありません。
あなたにどうしてもたまきさんの絵を見ていただきたくてわざわざお越しいただきました。
ご協力よろしくお願いします。
(酒井)分かりました。
言ったはずです。
私は園山たまきという人とは会ったこともない。
江藤。
君に宇佐美のことで園山さんが相談に行っていたのは分かってる。
調べはついています。
そしてあなたが婚約者の小泉理恵子さんにアリバイ工作を頼んだことも。
(江藤)それは警察がしつこく私を犯人にしようとしたから…。
もうよせ。
君は理恵子さんに尾行されていたんだ。
えっ?
(桜木)理恵子さんは君が園山さんのマンションに入るところも見ている。
もう言い逃れはできない。
違う。
俺は決して殺してなんかいない。
だとすればなぜ作業着に変装してまで現場になったマンションへ行く必要があったのですか?あなたは月に一度のエレベーターの定期点検の日をご存じだった。
だからカムフラージュのために作業着で変装し園山さんの部屋へ行ったんじゃありませんか?あなたは園山さんと仕事の上で知り合い深い関係になった。
でもあなたには婚約者がいた。
宇佐美の恐怖から逃れるためにあなたに頼った園山さんが次第に重荷となったんじゃないですか?そうでなくても弁護士が依頼人と関係を持ったことが知られれば懲戒処分の恐れもある。
だからあなたは園山さんを…。
もう隠す必要はありませんよ。
あなたの行動は犯人以外の何物でもない。
本当のことを言ってください。
私は…。
違います。
彼は犯人なんかじゃない。
彼は…江藤さんはあの日私と一緒にいました。
(清水のせきばらい)申し訳ないが飛行機の時間です。
(占部)待ってください。
(清水)奥さまお支度を。
こんな話に付き合ってる暇は…。
(占部)待てと言ってるんだ!大事な話をしています。
人の命は何よりも重い。
そうではありませんか?確かにあなたの言うとおりです。
人の命は何よりも重い。
私はあの日雪江さんの部屋にいました。
すまなかった。
もっと早くホントのことを話せばよかった。
自分の保身のために私はあの場から逃げ去ったんです。
ホントのことお話しします。
《おいしかった》・
(倒れる音)《様子を見てくるよ》《私が行く》《あなたがここに来ていること誰かに知られたら…》
(チャイム)《園山さん》《園山さん》《あっ…えっ!?》《あぁ…》《息してない》
(雪江)《死んでるの?》《分からない》
(雪江)《あっあぁ…》《警察呼ぶ。
管理人さんのとこ行くからその間にあなたこのマンションから出て》《駄目だ。
君一人残すわけにはいかない》《僕も残る》《私なら大丈夫。
ねっ。
ねっ》《だからお願い。
早く早く》そのときおそらく園山さんは生きていました。
生きていたって…。
ホントですか?おそらく。
あぁ…。
だから私の名前を…。
救急車を呼んで助かったかどうかは分かりません。
でもあの時点で彼女は…。
そうとも知らずに私たちは…。
《葵さんどうしました?》《亡くなってるんです》《何がなくなったの?大事なもの?》《お隣の園山さんが死んでるんです》帯留めのことは嘘ですね。
江藤さんと一緒だったことを隠すために。
はい。
(江藤)あのとき逃げ出さなかったら園山さんは助かったかもしれない。
名乗り出てさえいれば誰も苦しまずに済んだはずなのに。
(清水)代議士に電話を。
(雪江)あっ…。
もう下りてきていただいて構いませんよ酒井さん。
ご協力感謝します。
(酒井)いえいえ。
セッティングさえしていればスクリーンに映し出される絵はコンピューターが勝手に変えてくれるんですね。
(酒井)あぁそうですね。
あなたがこの会場にいなくてもいいということですね。
答えてください。
園山たまきさんを殺害したあなたにお尋ねをしているんです。
ふざけたことを言わないでください。
ふざけてはいません。
自動で絵や音楽が切り替わるようにセッティングしたあなたは6時に園山さんへ電話をかけこう言ったのではないですか?《宇佐美がそっちへ行くかもしれない》《だから誰が来てもドアを開けるな》《すぐ俺も行く》
(酒井)あのう空想ですか?これ。
いいえ。
事実を話しています。
あなたは宇佐美を利用したんです。
宇佐美の犯行に見せ掛けるためあんたは園山さんを殺す前の日に宇佐美に連絡をした。
園山さんの居所が分かったと言って誘い出したんだ。
《酒井です》
(宇佐美)《宇佐美です。
乗ってください》
(占部)そして宇佐美はあんたのわなに掛かった。
殺されるとも知らずにな。
(宇佐美)うっ…。
(クラクション)園山さんは電話でのあなたの指示どおり水道の修理が来ても宇佐美だと思い返事をしませんでした。
当然ですよね。
園山さんは予約なんてしてないんですから。
・
(チャイム)
(たまき)あぁ!夜の7時。
あなたはその時間に園山さんが死んでいたように見せたかった。
だから園山さんの名前を使ってネットで修理を依頼した。
そして園山さんを…。
・
(ノック)《あっ…》
(たまき)《周平さん!》《宇佐美が来たの。
怖かった》《よかった。
もうホント怖かったの》
(たまき)《あぁ!あぁー!》
(酒井)《うっ!うっ!》
(たまき)《あぁ!》《どうして?あぁ!》
(酒井)《うっ!》
(たまき)《うっあぁ…》・
(チャイム)・
(雪江)《園山さん》
(雪江)《園山さん》《えっ!?》《あぁ…》《息してない》
(雪江)《あっあぁ…》計算外の2人が来たことであなたはたまきさんの生死を確かめることができず急いでマンションから出なければなりませんでした。
その後何食わぬ顔で朗読会に戻ったあなたは深夜になるのを待って宇佐美の車を羽田の駐車場に乗り捨てました。
なぜ私が殺さないとならないんですか。
園山先生や宇佐美って男をなぜ私が!調べればすぐに分かることでした。
あなたが園山さんに断りなく海外の出版社と契約を結んでいたことは。
海外での園山さんの著作権に関する契約です。
契約者の名前は園山さんではなく代理人と称したあなたでした。
契約金は日本円で5,000万。
確かあなたは私に言いましたね。
《園山先生は亡くなられても先生が描かれた絵はこうして残ります》《子供たちに永遠に語り継がれる財産ですよ》あなたはその財産を自分のものにしようとした。
でも園山さんはあなたを責めるつもりはありませんでした。
あなたが契約した会社に行きこう言ったそうです。
違約金は払うのであなたのことはそっとしておいてほしいと。
宇佐美という男から逃れ幸せになるにはあなたという存在が必要だったんです。
でもあなたは違った。
園山さんに契約のことを知られたと思い彼女を…。
違う!でたらめだ!俺は殺しなんかしていない。
水道の修理はたまきが頼んだんだ。
だから7時前にたまきは殺されていた。
俺には殺せない。
あのマンションからここまで車で何分かかると思ってるんだ!殺すなんて不可能なんだ!
(目覚まし時計の音)この時計が夜の7時に園山たまきさんが生きていたことを教えてくれました。
何を言ってるんだ。
セットしたのは園山さんです。
目覚ましが翌朝7時に鳴るようにするには前の晩の7時以降にセットする必要がある。
つまり彼女が7時以降に殺害されたという証拠です。
そ…そんなもの証拠になるか。
俺が殺したっていうちゃんとした証拠を見せてみろ!
(占部)さぁどうぞ。
証拠をご覧に入れます。
この雪が宇佐美の車のマットに染み込んでいました。
あなた以外犯人にはなり得ないんです。
ご同行願えますか。
霞検事。
あのとき園山さんが生きていたとしたら彼女は自分を見殺しにした私を恨んだんでしょうね。
だから最期に私の名前を。
それは誰にも分かりません。
本当はどうだったのかしら。
どうして園山さんは最期に「えとうたつお」と言い残したのか。
私にも分かりません。
そうね。
寄り添うような江藤さんと雪江さんを見てうらやましいと思ったのかもしれないし自分を殺したにもかかわらず愛した酒井をかばって江藤さんの名前を言ったのかもしれない。
でもホントのことは彼女にしか分からない。
はい。
ですが彼女の最期の言葉がなければ真実にはたどりつけませんでした。
ええ。
そして私たちに分かることは彼女の絵はきっと世界中の子供たちに夢を与え続けるということ。
2014/10/17(金) 21:00〜22:52
関西テレビ1
赤と黒のゲキジョー・検事・霞夕子7〜死人に口あり〜[字][多]
運び出された遺体が口を開き、男の名前を言って息絶えた犯人の名?あるいは…死者の遺したメッセージに込められた執念▽沢口靖子・西村和彦・神保悟志・野村宏伸
詳細情報
番組内容
あるしゃれたマンションで死体が発見される。被害者は住人の園山たまき(中島ひろ子)。発見者は隣人の葵雪江(七瀬なつみ)。占部明日香警部(神保悟志)らが死体収容袋に遺体を収容していると、なんと死体が目を見開き、「えとうたつお」という人名を語り、言い終わると再び息を引き取った。事件現場に早速霞夕子(沢口靖子)、事務官の桜木洋一(西村和彦)もかけつける。桜木は大学同級生に「江藤達夫」という人物がおり実は
番組内容2
事件後、道で見かけたという。
一方夕子は、たまきの隣人・雪江に話を聞いていた。雪江はたまきに帯留めを貸す約束をしており、予定の7時になってもたまきが姿を現さないため部屋を訪ねてみると、たまきの遺体を発見したという。夕子は雪江が貸そうとしていた帯留めに目をとめる。たまきが着ていた着物と合わないのではないかと思われたからだった。
さらに夕子、桜木、そして占部らは死体が語った名前「えとうたつお」と同
番組内容3
じ名前の桜木の友人、江藤達夫(野村宏伸)に会いに行く。そして殺人があったと考えられる昨日は一日自宅に居たと証言。しかし夕子は「えとうたつお」と死体が語ったためにまだ江藤への捜査の手を緩めようとはしなかった。
江藤は自分のアリバイを証明できる人物がいると語り始めた。同棲中の婚約者、小泉理恵子(大路恵美)だ。夕子ならではの鋭い視点と人間味ある捜査を通じて意外な事実が次第に明らかとなっていくのだった。
出演者
霞夕子(東京地検・検事): 沢口靖子
桜木洋一(検事事務官): 西村和彦
占部明日香(警視庁捜査1課・警部): 神保悟志
岩瀬厚一郎(警視庁捜査1課・管理官): 石丸謙二郎
中村幸一(東京地検刑事部・部長): 小野了
梅野昭典(警視庁捜査1課): 清水伸
霞友行(夕子・夫): ダンカン
霞彩子(夕子・母): 松原智恵子
霞夏子(夕子・娘): 鍋本凪々美
出演者2
江藤達夫(弁護士・桜木の友人): 野村宏伸
葵雪江(たまきの隣人): 七瀬なつみ
酒井周平(たまきの担当編集者): 深沢邦之
園山たまき(挿絵画家): 中島ひろ子
小泉理恵子(江藤の婚約者): 大路恵美
スタッフ
【原作】
夏樹静子(『死人に口有り』より)
【脚本】
吉本昌弘
【編成企画】
水野綾子(フジテレビ)
【プロデューサー】
岩崎文(ユニオン映画)
【監督】
赤羽博
【制作著作】
ユニオン映画
【制作】
フジテレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32724(0x7FD4)
TransportStreamID:32724(0x7FD4)
ServiceID:2080(0x0820)
EventID:18227(0x4733)