(フリスビーを飛ばす音)
(少年)オイ!何やってんだよ!
(榊マリコ)よろしいですか?はいどうぞ。
外傷がないか見て。
(乾健児)はい。
頭部に目立った外傷は見られませんね…。
結膜が出血してるわね。
窒息死の典型的所見ね。
吉川線や索状痕もありませんから…溺死ですかね?
(土門薫)おぅ。
やっぱり土左衛門か?
(木佐貫直巳)女でも土左衛門っていうんですかね?ここ見て!指輪の跡か?流れてきた時に抜け落ちたんでしょうか?これだけむくんでいて全部が外れるとは思えないわ。
他に身元を示すものとかは?いえ…財布や免許証などは一切身に付けていませんでした。
身元がわからないように何者かが持ち去ったとすれば他殺の可能性が高くなるな。
解剖に回すから搬送の手続きお願い。
(米倉助教授)臓器にもうっ血が見られたし血液の炭酸分も多い。
まぁ溺死と見て間違いないやろ。
肺の中は?案の定水浸しや。
水域が特定出来るといいんですけど。
うん…。
まぁ目立った外傷はないけど川を流れてる間にあちこちにぶつけたんやろな。
痣はぎょうさんあったで!特にこの肩甲骨のあたりと胸にもうっ血の跡が残ってます。
胸の方はこんな感じの直線です。
何か手掛かりになりませんか?
(米倉)さぁなぁ…。
川で溺死っちゅう事は橋から落ちた時に欄干かなんかにぶつけたとちゃうかな?爪に何か残ってますね…。
ん?
(米倉)人間の皮膚片ではなさそうやなぁ…。
(米倉)もっと軟らかいな。
粘土かなんかかなぁ?これも分析に回します。
うん。
おかしいわね…。
ないわ。
(ドアの開く音)
(榊伊知郎)水質分析終わったぞ。
どうだった?pHは限りなく中性。
微生物や細菌も繁殖してない。
こっちも顕微鏡で見る限り珪藻類やプランクトンもまったくなかったわ。
という事は…川や沼の水じゃないな。
でも死因は溺死だったのよ?うん…。
プールや風呂屋で溺れた人間が賀茂川までひとりでに流れてくるとは思えないからな。
という事は…。
別の場所で溺死した被害者を何者かが賀茂川に投げ捨てた…。
そういう事だな。
あ。
もう1つ特徴的な事がわかった。
何!?
(小向光子)硬水〜!?
(土門美貴)シャネルとかディオールじゃないですよ〜!
(光子)知ってるわよそれぐらい!「硬い水」でしょ!じゃあじゃあじゃあ硬いってどういう意味かは知ってます?嫌だなぁ〜んもう!そんなん知って…!だから〜ほら〜あれよ…。
ほらだから何…軟らかくない?
(乾・美貴の笑い)
(伊知郎)総硬度つまり水の中に含まれてるカルシウムやマグネシウムの量の違いなんだけどね。
数値が低ければ軟水で高ければ硬水。
だから硬水は普通の水よりもカルシウム塩やマグネシウム塩が多く含まれているわけ。
(光子)あ〜そうそうそうなのよ!そうだからねぇダイエットにもいいわけよ硬水は!
(日野和正)ウソ!?それ聞いた事ないよ!あたしはねぇ聞いた事ある。
でもね日本の水道水はほとんど軟水なんだって!特に京都の水は全国的に比べてもかなりの軟水なの。
だったらこのあたりで溺れるほどたっぷり硬水がある場所って相当限られますよね?つまり硬水を探せば犯行場所を特定できるって事ね。
(伊知郎)うん…。
そうだ!被害者の爪から見つかった物質の鑑定は?まったく人使い荒いんだから。
仕事はこれだけじゃないんだぞ。
終わってるんでしょ?いいから早く出して。
(伊知郎)はいはい…。
はいこれ。
たんぱく質・乳酸菌・カルシウムラクトフェリン・トリプトファン。
要するにチーズ。
(山寺)間違いありません。
うちの社長です…参ったな…。
(携帯電話)はい榊。
…被害者の身元がわかった!?でそっちは何かわかったか?ひょっとして被害者は水に関係のある仕事?水…?あいにくだな。
水商売じゃないよ質屋だ。
質屋…?
(木佐貫)被害者は大手リサイクルショップシチ京の代表取締役社長瓜生美知でした。
シチ京ってあの烏丸通りにあるでっかいヤツ?あぁブランド品の中古買い取りで有名な店。
女性客を中心にここ数年売り上げをどんどん伸ばして本社は京都ですが大阪や東京にも支店を出してます。
昔はただの町場の質屋だったのにな…。
詳しいのね。
案外お世話になったとか?バカ言え!…まぁちょっとだけな。
被害者の瓜生美知は一介の質屋だった小さな店を一代で資本金8000万の株式会社にまでのし上げた業界ではかなり有名な女帝だそうです。
質屋の女帝がなんだって溺死なんか?被害者は昨夜の午後9時過ぎまで本社の会議室で役員たちと会食をしながら打ち合わせをしその後1人で退社したそうでそれ以降の足取りは不明です。
会食…なら胃の内容物の消化の程度から正確な犯行時刻が絞れるわね。
解剖所見によると…食後2〜3時間程度です。
だとすると殺されたのは11時〜12時って事ね。
荒らされた様子はないしポストには昨夜の夕刊が残っていた。
退社後ここに帰ってきた気配はなさそうだな…。
何よりここには硬水はないみたいだし…。
(乾)う〜わ!お香?社員の話だと被害者はお香に凝っていてスーツとか洋装の時でもいつも匂い袋を身に付けていたそうです。
被害者のポケットにも匂い袋が1つ入ってました。
どれもかなり強い匂いね。
社長だけあってずいぶん儲かってたようだな。
えぇ年収はうなぎのぼりですしそれに…。
それに…?昨夜退社する直前被害者は…。
(山寺)お帰りならお送りしますが…。
(瓜生美知)いいわ。
ちょっと副業しにいってくるから。
副業…?
(木佐貫)要するに会社の業務とは別に個人で闇金みたいな事をしてたみたいで。
部下も非合法なのはわかっていたけど見て見ぬ振りをしていたようです。
なるほどな…さすが女帝ってわけだ。
金を貸した相手に会いに行ったのだとしたらそこでトラブルになって殺された可能性は高いわね。
(木佐貫)その証文でも残ってるといいんですけど…え?よっしゃー!副業の顧客リストだ。
金額まで書いてあるぞ。
アハハ…オーソドックスな隠し場所ですね。
じゃあこの中で硬水に関わっている人間が犯人の可能性は高いわね。
しらみつぶしに当たるしかないな。
だったら聞き込み同行させて。
その方が手っ取り早いでしょ?同行してどうするんだ?水を集めるの。
(木佐貫)瓜生美知さんから3000万円借りてますよね?あ…いや…それもちゃんと返すつもりで…はい。
7月18日の夜11時以降どこにいらっしゃいました?え…じゅう…。
すいませーん!はい?ここのお湯温泉なんですか?あ…!はい!あの…兵庫県の岩崎温泉から運んできてましてうちでも一番人気のお風呂です!少し分けていただけます?確かにお金は借りました。
どうしても欲しい茶器があったものですから。
お点前は結構です。
(日野)それ…ただの水じゃないですよね?もちろん。
嵯峨野の湧き水を使うてます。
ちょっともらってってもいいですよね?この中全部仕込み水なんですか?っていう事はもちろん水道水じゃないですよね!?俺の借金と酒が何の関係があるんだよ?いやいやいや…!あの…申し訳ありませんが仕込み水これだけ分けてもらえませんか!?水はアクアリウムの基本ですよ。
魚や水草ごとに水温はもちろんpHから硬度まできっちり管理してますから!なるほど…。
じゃあgHが322ppmのお水も…?あ…それなら…これですね!
(伊知郎)ふ〜ん…ひと口に水といってもいろいろあるもんだね。
アリバイが不確定だった容疑者の分だけでもこんなにあったわ。
今日中に全部調べて。
オイオイ無茶言うなよ…!あたしも手伝うからお願い!「立ってる者は親でも使え」か…。
今回に限っては「魚心あれば水心あり」で!ハハッ…。
(光子)は〜い健康診断の催促来てるわよ。
みんな明日までなんだからちゃんと受けてきてよね〜!こんだけ忙しかったら行くヒマないですよ!
(日野)そーそーそんなヒマがあったら家で寝てたいしね。
(光子)日野さんずっと受けてないんだから!いざっていう時にね労災下りなくなっても知らないわよ!?分析!終わったわ。
(光子)あ〜あ!サンプルの水と被害者の肺の中の水のphや総硬度を比較した結果がこれ。
茶道の家元が使っている湧き水それに日本酒の仕込み水この2つはどちらも軟水だったから該当しないわ。
あっ…!そういや聞いた事あったなぁ。
同じ酒でもね灘は硬水で伏見は軟水なんだな。
健康ランドの風呂の方は温泉だけあってかなりの硬度だけど硫黄が含まれてる。
被害者の方からは検出されなかったからこれもバツ…。
最後のは熱帯魚ショップで使われている硬水。
総硬度はほぼ一致したわ。
じゃあ被害者はそこで…!?ううん。
総硬度は同じだけどカルシウムとマグネシウムの割合がまるで違ったの。
あとサンゴ石や貝殻を使って硬度を調節してるから有機成分も多少検出された。
ハァ…その点も違うんだな。
(乾)あれ…?じゃあ全部シロって事ですか?
(光子)え…?だって被害者が行った可能性があるのはそれで全部なんでしょ?腹減り損のくたびれ儲けってわけか…。
さて…どうする?決まってるわ。
もう一度調べ直すの。
え?調べ直すって…?迷った時は死体にかえるの。
…みんな手伝って!
(乾)ハァ…健康診断今年もパスですね…。
(美貴)ご飯。
(乾)ご飯…。
で…明太子…。
明太子…。
チーズを調べるってチーズはチーズでしょ?ひと口にチーズといってもね市販のプロセスチーズからナチュラルタイプ。
ハードにフレッシュそれぞれ乳酸や塩分の濃度もまちまちだから成分照合すれば特定が可能なんだこれが。
(日野)口に入れちゃえばみんな同じだと思うけどね。
リスト出来ました!よしじゃあ次は被害者の胃の内容物と照合ね。
は〜い。
…あ食べちゃった。
(美貴)被害者が殺害直前に食べたお弁当にはチーズは使われていませんでした。
(乾)ですが胃の内容物には明らかに含まれていました。
っていう事はどっかでチーズを食べてから殺されたんだ。
チーズの種類の特定は?青カビが検出されたから一発でわかったよ。
答えは…ブルーチーズでした。
あの匂いのキツいやつ〜!?あたしあれダメ〜。
高級品だからね。
フレンチレストランにでも食いに行かない限りお目にかかれないし。
レストラン…。
(伊知郎)そうか!レストランならミネラルウォーターがあるな。
(美貴)ミネラルっていうくらいだから硬水!
(山寺)社長のスケジュールはこちらです。
(木佐貫)拝見します。
(山寺)どうぞ。
あの…瓜生社長が接待や人に会う時に使っていた店とか…わかりませんか?さぁ…。
社長はほとんど食には興味がなくて外食も滅多に…。
それに接待なんかムダだっていうタイプでしたから。
それでも一軒もないわけではありませんよね?えぇ…。
あぁそういえば先々月…失礼。
雑誌の取材の後で編集部の方に食事に連れて行っていただきました。
ほぅ…。
確かその後お一人でも食べに行かれて…。
(山寺)あ6月の…この日がそうです。
この店どこにあるかご存知ですか?
(川之江)支配人の川之江です。
こちらがオーナーシェフの…。
(水城清香)水城清香です。
警察の方が今日はまた何のご用で?こちらの女性に見覚えはありませんか?
(川之江)どこかで見たような…。
お客様ですわ。
二度ほどうちにお見えになってるかと…。
確かお名前は瓜生様。
…この方が何か?
(木佐貫)3日前死体で発見されました。
(木佐貫)他殺の疑いがあります。
…え!?その事とうちの店と何か関係があるんでしょうか?いえそれを調べてるところで。
4日前の午後11時から12時の間お二人はどちらに?4日前って何曜日だ…?あその日は確か早めに店を閉めて私は10時過ぎにここを出て家に帰りました。
家内に訊いてもらえばわかると思います。
(木佐貫)あなたの方は?その時間なら店で次の日のリスタを考えてました。
リスタ…?あぁメニューの事です。
何時までこちらに?多分2時ぐらいまで。
ここには車で来ているのでついつい遅くまで残ってしまうんです。
そうですか…。
ステキなお店ですね!まるでイタリアにいるみたい。
グラッツェ!ドゥエスプレス?イタリアへはよく行かれるんですか?いえ一度も。
当店では本場以上のイタリアの味とサービスを提供する…その事をモットーとしております。
なら食材にも相当こだわってるでしょうね?もちろん!パスタ用の小麦粉乾物や生ハム類オイルや香辛料水に至るまですべて!イタリア産の物を使わせていただいております。
水も…。
はい。
オーナーシェフが申しますには日本の水はパスタを茹でるのに適してはおりません。
硬度が違うとかで…。
本場の強いコシを出す事は出来ないのだそうです。
つまりこちらでは硬水を使ってパスタを茹でているんですね?…えぇ。
イタリア産のミネラルウォーターですけど。
(木佐貫)ミネラルウォーターで茹でるなんて贅沢ですね。
1日のお客様を3組に限定させていただいておりますのでそれほどの量では。
3組だけ?はい。
それ以上のお客様には予約の時点ですべてお断り申し上げております。
(木佐貫)でも…なんかもったいないですね。
はぁ!?いやだってそれだけすごいこだわって美味しいならもっとお店も大きくして大勢のお客さんが来られるようにしたらいいのにって思ったものですから。
簡単に言ってもらっては困ります。
え…?お見えになったお客様のお顔を拝見して食べたいものや好みをお伺いしできる限り満足いけるお料理をお出しする…。
その事をただ一生懸命やろうとすればせいぜい1日に3組のお客様が限界なんです!
(木佐貫)はぁ…。
(清香)常連のお客様の中にはもっと予約が取りやすければいいのにっておっしゃる方もいます。
ですがここに来るお客様の中にはたった一度しか私の料理を召し上がれない方がたくさんいます。
そういうお客様にこそその時私が作れる最高の料理を召し上がっていただきたい。
そう思って私この店をオープンしたんです。
…あらゆるものを犠牲にして。
なんだかすいません…。
あの…よかったら厨房を見せていただけませんか?…えぇ。
かまいませんけど。
衛生上の問題がございますのでここから先はご遠慮願います。
写真を撮るのはかまわないんですよね?かまいませんけど…。
こちらのパスタマシーンはイタリア直輸入の物でして当店の手打ちパスタはそれはもう本場顔負けで…。
あの四角いのは何ですか?あぁパスタ茹でる鍋です。
じゃああの水が…。
(川之江)はい先ほど申しましたイタリア産のミネラルウォーターです。
やはり茹で上がりのコシが違いますので。
そうなんですか。
(シャッター音)あっ!ご遠慮ください!あの…衛生上の問題…!ございますのでご遠慮ください!お下がりください!あのこの辺でお引き取り願えますか?お下がりください!
(乾)よし!画像の取り込み終わりました。
うん良く出来てるわ!被害者の身長は168センチ。
って事は…このくらい。
で溺れさせようとして上から押さえつけると…。
死体のうっ血痕と比較して。
(乾)はい。
そっくり…!間違いないわ。
抵抗する被害者を鍋の水に強く押し付けたためにこんなうっ血痕が出来たのね。
って事は被害者はこのパスタ鍋で溺死させられたんだ。
死亡推定時刻にお店に残ってたって事はそのシェフが犯人!?その可能性はかなり高いけど物証がまだないわ…。
(佐久間誠)水を押収しろだ!?はぁマリコが申し…いや榊技官が申しますのはあの店のパスタ鍋の水と被害者の肺にあった水が一致するかどうかを調べてみる必要があるかと。
でその店で殺人があったという確かな証拠でもあるのかね?いえないからこそ水が必要なんです!バカ言え!証拠もないのに裁判所が令状を発行するわけないだろう!水が一致すればそれが確実な物証になるんです!令状を申請してください!そのために物証を揃えろと言ってるんだよ!あの水が何よりの物証です!物証がなければ水の押収なんか出来ない!だから水が物証なんです!まぁ落ち着いて!これがまさに水掛け論!
(ため息)
(車の近付く音)来たー!八百屋ですよ。
暑い…。
(車の近付く音)また来た…!あ…!あ…!
(ため息)高級鮮魚って書いてありますね。
つーかさぁ…なんでそんなに黒いの?関係ないですよね?
(バイクの近付く音)来た!今度こそ…!
(店員)いつもどうも!ご苦労様です。
輸入食材…あたり!やった!え?なんで?あ…あ〜!
(木佐貫)硬水を卸してる!?えぇメトド・ヴェッキオさんには開店した時からイタリア産の高級なヤツ…これですね。
あ…!あの…これあたしたちも欲しいんですけど!あ〜もうこれないんですよ在庫。
え…?ちょっ…!?どうして!?えぇ現地の製造元が潰れちゃってうちで残ってた分も全部ヴェッキオさんに納品しちゃったし。
でもどうしても欲しいんです!お願いします!お願いします!いや…!ム…ムリですよ!イタリア本国にも残ってないんだから…あ!ヴェッキオさんに頼んで分けてもらったら?いや…それはちょっと…。
なんで…も〜!なんで〜!!美貴から聞いたぞ。
水のセンはダメだったって?悔しいけど正直手詰まりって感じ。
こっちもだ。
シェフの水城清香は業界ではかなり有名で腕のいいシェフだ。
あのレストラン自体評判はすこぶる高い。
値段もでしょ。
常連客もたくさんついている。
経営は順調。
瓜生美知から金を借りてる様子はまったくない。
店に2回来た客とシェフそれ以外に接点はまったく見当たらない。
つまり彼女には瓜生美知を殺す動機はないって事?あぁ。
物証を見つけて攻めるしかないな。
だとしたらやっぱり水を手に入れないと。
手に入れるってどうやって?もっとまともなスーツ一着ぐらい持ってるわよね?…え?
(ドアの開く音)ボナセーラ。
土門さまでございますね?えぇ。
(ドアの開く音)グラッツェ…。
メニューはドリンクだけか…。
ワインでも頼む?遠慮しとくよ。
給料の半分を一晩で飲み干す度胸はなかなかない。
安心して料理は給料の三分の一ぐらいだから。
え…?経費で落とすのはムリだろうなぁ…。
いらっしゃいませ。
お話を伺ったらどうしても食べたくなって。
そうですか。
お嫌いな食材がないかどうかお伺いしておこうと思いまして。
嫌いなものはないけどパスタが大好きなんです。
とにかくパスタが食べたいわ。
出来れば茹でたのをそのまま持ってきて欲しいぐらい。
…何か?あ…いえ。
工夫してみます。
オイ…挑発してどうする?向こうだってこっちが純粋に食事に来たとは思ってないでしょ。
それに彼女パスタ鍋や水の事になると明らかに態度が強張るの。
やっぱり間違いないわ。
ふ〜ん…。
パスタ私がやるからあなたカルネの準備して。
はい。
(鍋の沸騰する音)
(川之江)お待たせ致しました。
(清香)カッペリーニ夏野菜のジュレ添えトリュフ風味でございます。
ごゆっくりどうぞ。
やられたわ…。
冷製のパスタか…。
温かいパスタなら茹でるのに使った硬水が表面に少しは残ってるだろうって期待したんだけど。
氷水で洗われたら手も足も出ないか…。
でもパスタそのものを調べれば茹でるのに使った水の成分が判別出来るかもしれないわ。
マナー違反とでもいいたい?いや…俺も半分持って帰って美貴に食わせたい。
(カップ焼きそばを食べる音)どーせならさぁあたしを誘ってくれればいいのになんでお兄ちゃんなわけ!?自腹で4万円なんか払う勇気ないくせに。
4万!?
(日野)美貴ちゃ〜ん!はい。
夜食済んだらこの鑑定書生安課届けてきてくれる?は〜い。
(光子)4万だよ?4万…。
うんこれなら266個買えるね。
(川之江)ちょうどお預かり致します。
グラッツェ。
高くついたなぁ…。
何がグラッツェだ。
ご満足していただけましたでしょうか?えぇ。
お土産をご用意させていただきました。
当店でパスタを茹でる時に使用しているミネラルウォーターです。
どうしてこれを?私の事をお疑いのようなのではっきりさせておいた方がよろしいかと思いまして。
ありがとう。
来た甲斐があったわ。
いいえまたいらしてください。
(日野)う〜ん…これだけでいくらするんだろ…?痛っ!証拠品です食べてはいけません!
(光子)あら着替えちゃったの?せっかくおめかししたのに。
慣れない格好で肩凝っちゃった。
この方が断然ラク!
(ドアの開く音)
(伊知郎)おーい分析終わったよ。
もう歳なんだからあんまり残業させないでくれ。
(乾)どうでした?こっちが被害者の肺の中の水。
(伊知郎)このビンの中身がこれ。
硬水は硬水だが明らかに組成が違う。
やっぱり…。
(美貴)どういう事ですか!?ミネラルウォーターを別な銘柄に変えたのね。
(乾)変えたって?殺人の重要な証拠になるとわかった以上いつまでも取っておくとは思えないしね。
(美貴)じゃあ捨てちゃったんだ!
(日野)だって高級品で全部買い占めてあったんじゃないの!?
(光子)イヤもったいな〜い!悔しいけど向こうの方が一枚上手だったわね。
(ため息)コラ!食べちゃダメだって言ったでしょ。
いや食べないってば〜。
せっかくだから匂いだけでもね。
んも〜意地汚いんだから〜!
(伊知郎)え!?それトリュフ!?贅沢だねぇ〜!…これホントにトリュフ?うん確かそう言ってたわ。
カッペリーニ夏野菜のジュレ添えトリュフ風味でございます。
けど…このトリュフ全然におわないよ?そんな事あるんですか!?トリュフにも当たりハズレがあるからねぇ。
これハズレの使ったんじゃないの?だけど1日3組限定で1人4万円でしょ〜?ちゃんと香りのいいヤツ出しなさいよね。
絶対許さない!許さないって別に光子さんが食べに行ったわけじゃないでしょ。
いや乾君これは譲れないの。
だってトリュフがダメならね他の素材で補うとかさぁだって4万円のおまかせコースなんだから!まぁ腕のいいシェフならそれぐらいして欲しいよな。
ひょっとして…。
(電話をかける音)もしもし!?大至急調べて欲しい事があるの。
(川之江)シェフ。
例の刑事さんたちがお見えですけど。
(清香)疑いが晴れた?えぇ。
瓜生社長の肺から見つかった水の成分とこちらで使われていた水の成分は一致しませんでした。
そうですか。
今まであなたを疑うような真似をして申し訳ありません。
あ…いえこちらこそお客様に対する態度ではなかったと反省しております。
そう言っていただけるとこちらも…助かります。
でも一体誰が瓜生さんを?えぇそれなんですが…これが瓜生社長が殺された夜に身に付けていて死体からは発見されなかった物の一覧なんですよ。
宝飾類や財布や小物合わせるとかなりの額になるんです。
これらが奪われていた点から見て物盗りのセンで今後は捜査を進める事になるかと。
物盗り?えぇ…。
あの…参考までに瓜生社長がこちらに来店された時にこの中の物で身に付けていた物覚えてらっしゃいませんか?いえそこまでは…。
何か?あ…いえ…。
早く捕まるといいですね。
えぇ。
(川之江)まぁお支払いいただいた時に財布はお持ちになって…。
何をお探しですか?探し物は得意なんです。
よかったら手伝いましょうか?何してるの…?勝手に入ってこないで!ほら見つかった。
これですよね?昼間お見せしたリストに1つだけミスがありましてね。
この匂い袋は死体と一緒に発見されていたんですがなぜかなくなっていた方に書き込まれてしまって。
失礼しました。
…それにしても解せませんね。
被害者の持ち物がどうしてここにあると思ったんですか?瓜生美知さんを殺したのはあなたですね?被害者が川で溺れたように見せかけようと思ったあなたは遺体から身元を示す物をすべて取り外した。
何の事かしら?私にはさっぱり。
でもおかしいと思いませんか?この匂い袋は小さいけどかなり強烈な匂いがします。
こんな物がこの厨房や車の中に落ちているのを今日まで気付かずにいる方が不自然なんです。
気付いていればとっくに処分しているはずです。
なのにあなたはこれを探そうとした。
気付きたくても気付けなかった…。
それこそが動機だったんじゃないですか?
(ため息)あなたは嗅覚障害を患って匂いを嗅ぎ分ける事が出来なくなってしまった。
料理は五感で楽しむものです。
匂いがわからない事は優秀なシェフにとって致命的なダメージです。
当然あなたはそれを隠してなんとか治療しようとした…。
水城さんお入りください。
…はい。
ところがその病院にたまたま瓜生社長も通院していた。
(清香)すみません。
(医師)その後お変わりありませんか?
(清香)症状が進んでるみたいでまるで匂いがわからなくて…。
(医師)そうですか…。
被害者の個人口座に先月から今月にかけて多額の金が振り込まれていました。
あなたは瓜生社長に恐喝されていたんですね?
(美知)ねぇ…これちょっとヘンな匂いしない?あ…。
やっぱり…わからないんだ。
大丈夫。
内緒にしといてあげるから。
事件の夜瓜生社長はこの店に来た。
彼女の脅迫に耐え切れなくなったあなたは厨房で被害者を殺害し車に死体を乗せて賀茂川に運び捨てた。
違いますか?
(ため息)私何も知りません。
私がそんな事をしたなんて証拠どこにあるんです?人が犯罪を犯せば必ず証拠が残ります。
どれほど念入りに片付けたつもりでも厨房やあなたの車には犯行を示す微細証拠がたくさん残っているはずです。
あなたが料理のプロであるように私たちはそれを見つけるプロなんです。
もう言い逃れは出来ません。
…どうしてわかったの?私の病気の事。
一つ目はチーズでした。
え…?被害者の指の爪からブルーチーズが検出されました。
発見時には水に溶けたせいで目立ちませんでしたけど犯行直後はおそらくかなり匂ったはずです。
身元を隠すために指輪まで外したのに指に残ったチーズはそのままというのは矛盾しています。
そこから犯人は匂いに鈍感な人間だと推測出来ました。
そうだったの…。
二つ目はこの前伺った時のカッペリーニです。
あれほど料理にこだわりのあるあなたなのにトリュフが全然匂わなかった。
ちゃんと匂う物だけ納品するように言っておいたのに…。
やっぱり自分で確かめなきゃダメだったのね…。
何があったのか話してもらえますね?あの夜瓜生社長はここへ来ました。
(美知)あなたから搾り取れるお金なんてたかが知れてんだし。
この方がよっぽど儲かるのよ。
あなたも…あたしも。
まずはうちの本店のビルに出店してもらうから。
いいわね?そんな事絶対に出来ません。
私この店で今までどおりのやり方でなければ料理なんか作る気になりません。
ハン!言っとくけどねぇあなたに断わる権利なんかな…。
やめてください。
匂いが移りますから!アハハハ!フン!わかりもしないくせに…。
ねぇせっかく来たんだからさワインの一杯ぐらい出しなさいよ。
何かないの〜?ほ〜らあるじゃな〜い。
美味しそうな物が。
いい加減にしてください!何よ?何か言いたい事でも?あなたの好きになんかさせないわ!
(美知)何すんのよ!?この店は私にとって家族であり…人生そのものなんです。
だからそれを奪われるなんて許せなかった…。
治る可能性はある…医者にはそう言われました。
だからなんとかそれまで店続けていこう…今までの経験で料理を作れば大丈夫。
そう信じて…。
だけど…ムリだったんですね。
料理にウソはつけなかった…。
私は料理は素人です。
でもあの夜の料理は本当に美味しかった。
それだけは確かです。
でもトリュフは香っていなかった!私…瓜生社長を殺した事を後悔してません。
でもあなたに私の最高のカッペリーニを食べてもらえなかった事…。
それが何より悔しいわ。
この店でお迎えする…最後のお客様だったのに。
あ〜すみません。
ちょっとお待ちください。
ねぇ交通課から事故の鑑定書まだかって催促来てるわよ!今やってます!所長!押収薬物の分析終わりました?もうちょっと待ってあと少し!
(日野)もうあの事件にかかりきりだったせいで仕事溜まっちゃって溜まっちゃって。
ただいまー!
(光子)お帰り何?その荷物。
みんなに残業ばっかりさせちゃったから今日の夜食あたしのオゴリよ!お寿司買ってきたの!
(美貴)お寿司!?いいんですか!?よかった血糖値下がりっぱなし!
(乾)遠慮なくいただきます!じゃお茶入れるわね〜。
(光子)…あれ?
(伊知郎)あれ?マーちゃんこれお寿司じゃないぞ。
鮒鮨安かったの。
これだけ弱いんだよ…。
(光子)あたしこの匂いダメ!
(日野)カップラーメン食べよ。
あれ?みんなどうしたの?ねぇ遠慮しないで〜!やっぱりね…。
けど美味しいんだけどな〜。
2014/10/17(金) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
新・科捜研の女3[再][字]
「不自然な溺死!“京の水”殺人事件!!」
詳細情報
◇出演者
沢口靖子、内藤剛志 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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