プロフェッショナル 仕事の流儀 2014.10.17

こともできる?
そのとおりだと思います。
条件に合った形で、身軽な、最適なシステムっていうものを選ぶ必要があるだろうと思います。
本当に、水道格差といったようなことが生じることがないよう、対応を考えなくちゃいけないわけですね。
おっしゃるとおりですね。
始まりは普通の主婦だった。
今その料理に日本中の女性が熱い視線を送る。
作ったレシピは4,000種。
数え切れない笑顔を食卓に届けてきた。
その実績は圧倒的。
料理本の発行部数2,200万部。
その名は世界にも轟く。
三つ星でも高級料亭でもない。
しかし栗原の料理は食卓の上でひときわ輝く。

(主題歌)この20年栗原が作る料理のレシピは毎日の家事をこなす主婦たちを陰ながら支えてきた。
だがかつて自分の生き方に迷い続けた年月があった。
今年栗原は新たな料理の開発に挑んだ。
日本が揺れた2011年どんな料理を届けるか。
思わぬ壁にぶつかった。
笑顔あふれるキッチンとその裏に秘められた闘い。
栗原はるみのひと夏に密着!栗原の自宅は都心の閑静な住宅街にある。
毎朝起きるのは5時半。
すぐに仕事場も兼ねたキッチンに向かう。
必ず足を運ぶ所がある。
16歳の猫サダちゃんのもとだ。
栗原は家でじっとしていられない性分だ。
早速脚立を持ち出し窓拭きを始めた。
栗原は今夫と2人暮らし。
子供たちは既に独立した。
朝から動き回る栗原を心配して夫の玲児さんが朝ごはんを作ってくれる。
結婚38年目。
仲のいい夫婦だ。
朝9時を過ぎるとアシスタントたちが続々とやって来る。
栗原の肩書きは料理家。
これまで4,000以上の料理のレシピを提案してきた。
栗原のレシピには「揚げ鶏のねぎソース」など家庭で定番となったものも数多い。
さりげなく口にする家庭の味としていまや全国の食卓に受け入れられている。
この日編集者と雑誌の特集記事についての打ち合わせが行われた。
忙しい主婦のために30分で作れる晩ごはんのメニューを考える。
そうするとそれがひき肉と炒めるとラーメンの麺で高菜ラーメンになるんです。
そういうふうに使ってたの。
で高菜を使った卵焼きもできる。
栗原は料理を本格的に学んだ事はない。
支えているのは自らの主婦としての経験だ。
これまでの工夫をもとに実践的で喜ばれるレシピを考えていく。
早速試作が始まった。
鶏肉を使ってごはんに合うグラタンを作ってみる。
まず鶏を照り焼きにしてみる。
オーブンで焼く時間を短縮しつつ新たな味付けも狙う。
そこに加えるのがホワイトソース。
タマネギを入れるのがポイントだ。
これを和風の味付けにした具と合わせるとどんな味になるか。
鶏肉と生のほうれん草をあえチーズをかけて焼く。
わずか20分ほどで豪華なグラタンが完成した。
全部で10種類の献立が完成した。
いずれも30分以内で作れしかも繰り返し使える奇をてらわない料理だ。
(編集者)お疲れさま〜!先生ありがとうございました。
雑誌用の撮影が無事終わった。
しかし栗原はまだ考え続けていた。
実はここからが栗原の本当の闘いだ。
撮影が終わっても栗原は試作を続ける。
材料の分量や作り方を記したレシピを練り上げるのだ。
栗原が自らに課す高いハードルがある。
レシピ作りは試行錯誤の連続だ。
この日取り組んでいたのはエビと卵のチャーハン。
誰もがおいしくできる作り方を探る。
だけどねうまくいかない。
フライパンのせいもあるんだよね。
中華鍋の方が絶対上手にできる感じ。
こうなってるから。
でこぼれないのよね。
だが栗原はあえてフライパンにこだわった。
中華鍋を持たない人もいるからだ。
チャーハンの決め手はパラパラ感。
それを中華鍋を使わずに出したい。
更に栗原は厳しい条件をつけた。
チャーハンをかき回すフリップという技術を使わないで済む方法はないか。
フリップは料理の初心者には難しい。
それができなくても作れるレシピを見つけたい。
「100人が作れば100人ともおいしく作れる」。
栗原が目指すのはそんなレシピだ。
チャーハン作りが始まっておよそひと月。
栗原は油を入れる量とタイミングがポイントである事をつかんだ。
ひき肉などを炒める油の量を大さじ1/2単位で微調整する。
へらでかき回すだけでパラパラのチャーハンができてきた。
結構いいよね。
ようやくレシピのまとめに入った。
分量や時間を何度も精査する。
もっと良い作り方はないか。
レシピ作りはいつも締め切りギリギリまで続く。
もっと簡単な道がきっとあるんだろうなという事でいつも思ってますけどね。
毎朝5時半から忙しく働く栗原さん。
その表情はいつも明るい。
ドント・ストップ・スマイル。
実は栗原さんには毎日の家事を楽しむためのひそかな工夫がある。
まずは気の重い仕事を一気にやっつける方法。
秘密は洗濯機のタイマーにある。
すすぎのタイマーを15分に合わせると栗原さんは猛然と階段を駆け下りた。
夕食のためにむかなければならないジャガイモの皮を全速力でむく。
心の中で闘っている相手はあのすすぎのタイマーだ。
タイマーが終わる前に戻って来られれば栗原さんの勝ち。
この15分の闘いを1日3回行い書類の整理や窓拭きなどもこなしてしまう。
家事を楽しくする工夫は他にもある。
多彩な小物もその一つだ。
瓶に好きなシールを貼って中身を仕分ければ台所の整理も楽しくできる。
そして時にはちょっとしたメッセージを添えてみる。
栗原さんの信念だ。
それは自分で作るしかないんですよね。
自分で思う事を自分でやってみたり自分で考える事じゃない?楽しく生きるっていう事はね。
私はでもお料理を通してそういう事を自分で学んできたような気がしますね。
栗原は年に4回自ら編集に加わる雑誌を出版している。
家庭料理に対する思いを折に触れ綴ってきた。
その中で今年は特別な年となった。
3月の震災の後雑誌に寄せた文章がある。
「ふつうの暮らしこの言葉の重みを今回ほど痛感した事はありません」。
栗原は改めて自分の足元を見つめ直したという。
本当は暮らしってそんないつもいい事ばっかりは絶対なくて楽しい事なんてそんなないよね。
ないから小さい事を幸せに思わないと大きな幸せを望んでもおいしいものを食べたりすごいいい事あったら楽しいけどなくてもその中で楽しい事を見つけて幸せに思う事がいいんじゃないかなと思いますけどね。
今度の震災で「ふつうの暮らし」がいかに大切かと思ったって皆おっしゃるじゃないですか。
やっぱり毎日の暮らしが大切だって。
普通にお食事できて家族が仲いいっていう事が本当は人生の一番大事な事じゃない。
楽しい事なのにそれをちょっと置いといて違う事に行っちゃうから気がつかないんだよね。
気がつかなくなっちゃうんじゃないかなと思うけどね。
1週間の仕事を終えた金曜日の夕方栗原は主婦の姿に戻る。
夫の帰りに備えて黙々と夕食の準備を始めた。
どんなに忙しくても夕食はできる限り夫婦で共にとる。
慌ただしい日常を送る栗原に静かな時間が流れていた。
あの…いざとなったらしてもいいんですけど。
年とってきたら寝ても覚めても同じ顔がいいかなと。
若い時はお化粧するとかわいいじゃない。
取ってもつけても。
でも年とってくると私ぐらいの年になっちゃうとした時と後がね違いすぎるのは…夫がどうだろうって。
あんまり脅かさない方がいいよね。
この日栗原さんは子供たちと田植えをするイベントに参加していた。
(子供)苗下さ〜い。
はいどうぞ。
ありがとうございま〜す!外に出るとよくサインをせがまれる栗原さん。
そのたび照れながら応じる。
64歳の今ますます活動の幅を広げる栗原さん。
しかし自分の生き方を見いだすまでには迷いに満ちた日々があった。
昭和22年栗原さんは静岡県下田の印刷業を営む家に生まれた。
親の言いつけを守る素直な子供だった。
母親の博子さんは朝4時から家事を完璧にこなす人。
栗原さんはその母から料理のいろはを学んだ。
短大を卒業すると実家に帰りそのまま家事を手伝いながら日々を過ごした。
そんな中下田に遊びに来ていたテレビの人気キャスター玲児さんと出会い恋に落ちる。
両親は住む世界が違う相手だと猛反対。
それでも栗原さんは結婚した。
親の言いつけに背いたのは初めての事だった。
しかし結婚生活は平穏なものではなかった。
半年後夫が突如選挙に出馬し落選。
その後1年間収入がぴたりと途絶えた。
家を切り盛りしようにも戸惑うばかりで自信がなく夫を頼り続けた。
心労が続き結婚から2年で体重が14kgも落ちた。
結構決められない私でしたね。
情けない人だった。
何でも聞いてるの。
そんな事自分で決めたらみたいな事も聞いてた気がする。
決められないのよきっとね。
栗原さんは必死で暮らしを楽しくする方法を考えた。
特に家族のための料理に力を入れた。
栄養たっぷりのにんじん。
ある日ツナとマスタードを合わせてみた。
すると家族が大好きな定番料理になった。
子供がたくさん友達を連れてきた時に一工夫して作った「炒めずチャーハン」。
以後みんなにせがまれる人気メニューになった。
家族に笑顔を生んだ料理の数々が栗原さんを意外な舞台へ押し出していく。
ある日夫が連れてきたテレビ関係者がその料理に驚き働いてみないかと打診。
勧められるままテレビや雑誌に料理を発表するようになった。
本は異例の大ヒット。
栗原さんは一躍時の人となった。
更に栗原さんの生活を丸ごと紹介するプライベートマガジンが創刊。
毎回20万部以上が売れた。
1冊で100点て事は年間400点10年で4,000点。
1年で365日しかないのに400ってすごいですよね。
だから…ちょっとやりすぎかなという気もしなくはなかったですね正直。
昼も夜も旅行先でもレシピを考え続ける栗原さん。
でも次第にある迷いを感じるようになる。
調理の手順がぎっしりと並ぶ誌面。
料理の楽しさが表れていない気がした。
しかし栗原さんはその思いを言い出せなかった。
自分の気持ちを抑えたまま仕事を何年も続けた。
葛藤の矛先は次第に自分へ向かい始めた。
一体自分は何をしているのだろうか。
悩み迷う日々が続き50代も後半を迎えたある日栗原さんは覚悟を決めた。
栗原さんは人気雑誌の仕事を打ち切りたいと自ら切り出した。
「小さな場でもいい。
自分が思うやり方で料理を伝えてみたい」。
ずっと頭にあったのはかつて家族を喜ばせるために作った料理の楽しさだった。
「自分の原点を見つめ直す」。
栗原さんは自らも編集に参加する雑誌を始めた。
より大事にしたのは料理にまつわるエピソードだ。
夫の大好物のかき揚げ。
休日に家族で取り分けて楽しいパスタ。
暮らしを彩る料理の魅力を語っていった。
栗原さんは今自らの意思で料理家の仕事に向き合う。
晴れ晴れとした笑顔がそこにある。
6月下旬栗原は秋に向け新たなメニューの開発を始めていた。
この日雑誌編集者と話していたのは一つのデザートの話題だ。
タルト・タタンはリンゴをパイ生地と合わせて焼き上げたフランス生まれのデザート。
しっとりした食感と甘さが今ブームを呼んでいる。
今年はこのデザートを全国の食卓に届けたい。
これまで正面から取り上げた事はないが今回新たな作り方を見つけようと話がまとまった。
新たな挑戦が始まった。
早速試作が始まった。
買い集めてきたのは酸味が強い「紅玉」という種類のリンゴだ。
初心者でも作れる簡単な方法とはどんなものか。
栗原はおおまかな作業の流れだけを頭に入れ試作に臨んだ。
あとは自分で作り方を工夫する。
タルト・タタンはまずリンゴをバターと砂糖で煮る。
この上にパイシートを載せるのが作り方の特徴だ。
このまま焼き上げ最後にひっくり返すとパイの上にリンゴが載って完成する。
(栗原)とりあえず20分ぐらいだね。
試作品が焼けた。
(栗原)ははは…。
残念ながら失敗だった。
水分が多すぎてリンゴが固まらなかった。
2日後も試作が続いていた。
火加減に気を配りながら更にチャレンジ。
ほら!ね?ようやくイメージどおりのタルト・タタンができた。
うれしいでしょ?皆さんありがとうございました〜。
はいはい撮って下さいよ。
ケーキが焼き上がる楽しみは特別なものがある。
これが家庭で焼ければパーティーも開ける。
いよいよレシピ作りに入った。
だがリンゴを煮る火加減の表現が難しい。
栗原が感覚で調節していた火加減をどうレシピにするか。
表現のしかたを探る。
火の強さを分かりやすくし調整する回数も極力減らしたい。
更に難しい問題があった。
リンゴは一つ一つ含まれる水分が違う。
同じ煮方をしても結果が毎回違うのだ。
試作は16回目を迎えたが作り方がまとまらない。
栗原のレシピ作りがこれほど難航するのはめったにない事だ。
20回の試作を続けても先行きは見えない。
栗原から余裕の色が消えていた。
15日目。
栗原が不安を口にした。
不安になってくるんだよね。
あんまり知らない事を何回もやってると。
不安にならない?自分を何しろ信じて自分のやってる事がいいんだってどっかで思って続けないと続かないよね。
私の仕事はね。
3日前かな…夫に相談したりとかして。
そしたら夫が「だって誰にでも作れるんでしょ」って。
「あなたはそれを望むんでしょ」って。
100人のうち6割ぐらいが上手に作れればいいわけ。
それは言ってなかったけど100人の人に作ってほしいんでしょって。
そうなんだよね。
弱音を吐いた後も試作は続く。
(アシスタント)今10分はたったんですけどもうちょっと…。
栗原はできるまで粘ると覚悟を決めていた。
この秋タルト・タタンを全国の食卓に紹介したいと決めたのは栗原自身。
家庭でケーキを焼くささやかな幸せを少しでも多くの人に伝えたい。
鍋の種類からリンゴの切り方まで作り方を変えてみる。
何度でも何度でも試作を繰り返す。
これまであまたのレシピを世に送り出してきた栗原。
一つの思いを心に抱き続けてきた。
7月末。
栗原は笑顔で49回目の試作を行っていた。
栗原はリンゴの煮方で決め手になるのは最後の3分である事を突き止めた。
煮汁にとろみが出たら強火にし焦げる寸前まで3分近く煮詰める。
この方法ならリンゴに含まれる水分が違っても確実に作れる。
レシピの形が見えてきた。
そして原稿の締め切り日を迎えた。
レシピと原稿は既に出版社に渡してある。
しかし栗原はなお最後に確認したい事があった。
この日栗原が取り寄せたのは甘さが強めの品種だった。
既にその品種でも何度か試したがもう一度だけ試したい。
栗原はリンゴには酸味の強い「紅玉」を使う事を勧めているが読者が甘い品種のものを使う可能性はある。
レモン汁で酸味を調整する。
レシピどおり最後の3分強火にかけた。
(栗原)ちょうどいいでしょ。
・すごい上手!焼き色は完璧だ。
味も反応は悪くない。
栗原最後の試食。
これでは甘すぎる。
前に試した品種だが甘さのばらつきがこれほどとは読み切れなかった。
原稿の締め切りは今夜。
ギリギリの土壇場。
栗原は出版社に電話をかけた。
「ふじ」だとか違うリンゴでやる人もいるかもしれないじゃない。
ここから更に原稿を練り直す。
栗原はそう決めた。

(主題歌)なんか…。
5日後栗原の指示を受けて訂正された原稿が届いた。
「ここでご紹介するレシピは今のところの私の完成形です。
秋に旬の紅玉が出回ってきたらどうぞ作ってみてください」。
栗原は今日も次のレシピを求めてキッチンに立つ。
食卓に笑顔を生む料理の力を信じ続ける。
そうですね私が…決してプロフェッショナルと思ってないんだけどまあ私ができる事を誰よりも楽しみながらやれてそれを一生懸命やり続けたいですね。
2014/10/17(金) 00:40〜01:30
NHK総合1・神戸
プロフェッショナル 仕事の流儀▽料理の力を、信じている〜料理家・栗原はるみ〜[字][再]

日本の家庭の味を世界に広めた料理家・栗原はるみ。魔法のレシピを生むキッチンでの格闘に密着。主婦のプロとして、家事の裏ワザや震災後に考えた幸せのあり方なども紹介。

詳細情報
番組内容
日本の家庭料理を世界に広め、世界的な料理本の大賞も受賞した料理家・栗原はるみ。誰が作っても失敗しないという、魔法のレシピが生まれるキッチンでの格闘に密着する。失敗が何度もあっても、レシピを待つ人のために「根性でがんばる」という。そこには、日常の営みを豊かにすることで笑顔を生み出したいという信念がある。主婦のプロとして、家事の裏ワザや震災後に考えた幸せのあり方も紹介。独創的な料理もたっぷり登場!
出演者
【出演】料理家…栗原はるみ,【ナレーション】橋本さとし,貫地谷しほり

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – グルメ・料理
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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