クローズアップ現代「押し寄せる老朽化 水道クライシス」 2014.10.17

高さ10メートルにまで噴き出した水道水。
今、水道管の破裂や水が漏れ出す事故が急増しています。
いつ、どこにいても手に入る安全できれいな水。
世界一とされてきた日本の水道が危機を迎えています。
主な原因は、水道管の老朽化。
高度成長期に作られた全国各地の水道管が一斉に耐用年数を迎えているのです。
水道事業を担う各地の自治体は次々と起こるトラブルの応急処置に追われています。

このまま、すべての水道管を維持できるのか。
新たな模索を始める自治体も出てきました。

総延長60万キロを超える水道管。
老朽化と人口減少の時代を迎えどう維持していくのか。
苦悩する現場から考えます。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
高度成長期に集中的に整備された道路や建物といったインフラの老朽化に伴い維持管理が大きな課題になっていますけれどもインフラの中でも法定耐用年数が短いのが水道です。
水道の普及の割合は97.7%。
蛇口をひねれば、いつでもほぼどこでも安全な水を手に入れることができる水道網が張り巡らされたわけですけれどもこのなくてはならないインフラに老朽化の波が押し寄せています。
ご覧のように、耐用年数を超えた水道管は全国に広がり年々増加しています。
水道事業は、各市町村が公営企業として運営し水道料金を元手に水道管などの施設の整備や更新を独立採算を原則に行っています。
しかし、老朽化した水道管を更新していくために必要な財源となる料金収入はこのところ減少する傾向です。
人口の減少と節水技術の普及で水道の使用量が減っていまして料金収入が落ち更新費用を確保できなくなっています。
こうした中で、相次いでいるのが水道料金の値上げです。
一昨年度だけで値上げは37に上り値上げの幅は2割を超える所もあります。
人命、社会や経済に大きな影響を及ぼしかねない水道の老朽化。
国はことし、全国の自治体に綿密な水道設備の投資更新計画を立てるよう求めましたが日本が構築してきた世界一ともいわれる水道網をこれまでと同じように維持することができるのか。
各自治体の状況に応じた対応が問われています。
まず、押し寄せる老朽化の波と向き合う自治体の現場からご覧ください。

総延長600キロの水道管を抱える埼玉県秩父市です。
休日明けの朝水道局には住民からの電話が次々と寄せられます。

お電話代わりました黒澤です。
どの辺で漏っていらっしゃいますか?
水道管が破裂し水が漏れ出しているので修理してほしいという依頼です。

現場のほう行かさせてもらいますので。

年間700件を超える修理の依頼に対し市の担当者はたった1人で対応しています。

秩父市では老朽化の目安となる40年を超える水道管の割合が全国の中でも高い全体の2割120キロに達しています。

実に、浄水場から各家庭に届くまでに漏れ出してしまう水は30%にもなると見られています。
壊れた水道管は整備から43年が経過。
水道水に含まれる塩素による浸食で亀裂が生じていました。

秩父市では40年目を迎える水道管が毎年10キロ生まれています。
しかし、計画に沿って現在交換できている水道管は年に6キロです。

こうした突発の漏水には破裂した箇所だけ応急処置するのが精いっぱいです。

水道管が老朽化するスピードに更新が追いつかないのはなぜか。
こうした事態を未然に防ごうと市は11年前に水道管の更新計画を立てていました。
計画によると、老朽化した水道管の交換費用として41億円が見積もられていました。
その財源確保のために水道料金の値上げも検討されましたが難しいという判断でした。
その代わり市が選んだのは新規起債。
つまり借金をすることでその多くを賄う計画でした。
借金の返済については企業誘致などで水の使用量が増えれば料金収入も増えると予測。
返済は十分可能だと考えました。
ところが、予想とは裏腹に企業は流出、人口も減少。
料金収入は予想より落ち込んで赤字に転落し、新たな借り入れは断念せざるをえなくなりました。
計画が縮小されたことで水道管の更新は大幅にペースダウンすることとなったのです。

水道管の漏水による損失を重く見た市では今年度中に水道料金の改定を実行しようとしています。
水道料金は平均17.5%値上げ。
さらに市の予算からも補填し更新にかかる費用を賄う予定です。

どうすれば水道事業を将来にわたって、安定的に維持していくことができるのか。
ことし国は、全国の自治体に対し水道管の更新計画を立てるよう求めました。
その費用を捻出するために料金の見直しや設備の廃止や統合あるいは民営化といった策も検討することを求めています。

新たな更新計画を立てても一筋縄ではいかない現実もあります。
去年、計画を立てたばかりの京都市は次々と起こる事態への対応に追われています。
そもそも京都市が更新計画に取り組むことになったきっかけは3年前に起きた破裂事故でした。
周囲にあったガス管も破損したことで市が負担したガス会社や近隣住民への賠償は10億円以上。
更新の遅れが住民負担に跳ね返る結果につながったのです。
その苦い経験を踏まえ去年、浄水場の廃止や職員の1割削減に着手。
32年ぶりに水道の料金体系も見直し値上げを実行するなどして81億円を捻出。
更新する水道管を年14キロから30キロへ倍増させることにしました。
ところが今、水道管が想定した更新時期より予想外に早く壊れるケースがあります。
宅地開発のために山林に作られたニュータウンで起きた破裂事故。
土地が強い酸性の土壌だったため水道管の腐食が思いのほか早く進んでいたのです。
別の事故のケースでも、水道管の整備を急ピッチで進めたため地上に露出する構造になりそれが劣化を早めたと見られています。
市では現在の計画をさらに見直し更新スピードを加速させていきたいと考えています。

今夜は、全国の自治体が直面している、水道事情に大変お詳しい、作新学院大学教授の太田正さんをお迎えしています。
更新のペースが老朽化に追いついていかないということが、各地で起きていまして、日本の水道システム、大変な逆風にありますね。
そうですね。
一つの転換期にあると言っても言い過ぎじゃないと思いますね。
やはり更新投資というのは、やったからといって、それによって、増収が期待できるわけではない。
やればやるほど経営は苦しくなるという、大変厳しい、そうした選択肢になります。
そういう中で、やはりこの間、料金改定といったことで、値上げといったことを計画しようとしても、なかなか思いどおりの引き上げができなかったり、あるいは、人員の整理が進んで、そうした水道を支える人材が不足したりと、全体のそういう厳しい状況の中で、更新投資がなかなか手がつけられずに、先送りされてきたというのが実態だと思います。
今のリポートでも、更新をしなければいけないということは自治体、分かっていても、その料金改定ができずに遅れて、そうしているうちに、今や悪循環に陥ってるんではないかと思えるんですけれども、こうした悪循環に各自治体の水道事業が陥ってしまった背景には、どういった構造があるんでしょうか?
そうですね、1つは地方公営企業というのは、管理者制度というのがございまして、経営の自立性といったものが制度的には保障されているんですけれども、先ほど申し上げたように、料金改定ひとつとっても、議会の承認が必要であるということから、どうしても政治的に、妥協を余儀なくされるということがあったり。
企業の判断一つではできない?
そういうことですね。
そういう制度的に認められている経営の自立性、自主性といったものが実態的にはなかなか確保できないと。
併せて料金の設定自体も、やはりこの間、一時期は政府が物価統制的な形で、抑制してた時期もありますし、その後のデフレの中で、やっぱり住民負担といったものも加えることに対する大きな抵抗もありましたから、結果として、そうした再投資をしていく、資金を料金の中に見込むこと自体もなかなか難しかったということがあると思いますね。
こうして人口減少が進んで、なかなか水道の使用量が増えなくなって、節水も進んだということで増えなくなってきますと、これは水道事業を行っている人からすると、収入が増えない構図が定着をしてしまった、そういった中で更新をしなければならない。
今、水道事業者が感じている一番の難しさってなんですか?
一番の難しさは、やはり、更新をはからなきゃいけない中でそれがなかなかできないということに関わるんですけども、その環境自体も大きく変化してまして、例えば、人口減少といったものが、単に数だけ小さくなるということではなくて、人々が住む居住の形態が、いわば低密度分散型の居住形態が一般化してくると。
そうなると非常に事業効率が落ちてくるわけですね。
人口密度が低くなっていく?
そういうことですね。
ですから、東京のように、非常に過密といわれるような、そうした場所と、それから、非常に人口が分散的で、低密度な場所とでは、もともと経営効率そのものが雲泥の差があると、そういうところでなかなか経営の自立性といったものが確保しにくくなっているということですね。
人口密度が低くなっても、ネットワーク、水道網は、同じように維持しないといけないわけですよね。
そういうことですね。
ですので、ちょっと例えといえば、バスを満員で走らせるのか、あるいはがらがらの状態で走らせるのか、その効率の違いというのは、はっきりしますけれども、水道の場合も同じことが言えるということですね。
しかも、全国一律的には、全国的な基準があるわけですよね。
そうですね。
水道事業は、基本的に、市町村ごとに運営、経営されております。
ですから、現在1700余りの市町村がありますけれども、その分だけのいろいろな、さまざまな違いがあるということで、人口密度もそうですし、それから置かれた経営の状況の中で、水源が近くにあるのか、あるいは遠くにあるのか、あるいは地下水なのか、河川水なのか、さまざまな地理的な条件が全く違います。
違いますけれども、そうした中で、水質基準なり、あるいは水道施設の施設基準が同一であるということなんで、そうした各地域地域の特性を反映できないような仕組みになっているというふうに言えると思います。
さあ、限られた財源の中で、どうやって水道を維持していくのか。
住民の同意を得ながら、一律のサービスを見直すところも出てきました。

水道管の老朽化に備え6年前から住民を巻き込んだ事業を行ってきた岩手県矢巾町です。
町では、全長220キロある水道管のうち、毎年5キロが耐用年数を迎えています。
しかし財源不足のため老朽化した水道管すべてを取り替えることはできません。
そこで町が始めたのが水道事業に住民の意見を直接反映させるミーティングです。
参加者は、町の全世帯の1割に当たる1000軒を職員が直接訪ねて水道の危機を訴えた人たちです。
ほかにも、抽せんで選ばれた住民に対し町が5000円を支払い参加してもらったこともありました。
この日、議論されたのは町の財政が厳しい中どの水道管を残していくべきかという問題でした。

どの水道管を優先して更新するか。
住民自身が提案を始めました。

こうした住民の話し合いを受け、町は優先順位をつけるための基準を選びました。
特に重視したのが水が絶対に欠かせない病院や避難所などの重要な施設など5つの基準でした。
これらに点数をつけ合計を100点満点で評価します。
例えば、住宅街にあるこちらの水道管。
人口が多いものの、近くに重要な施設がないことなどから評価は100点満点中10点。
一方、町の外れにあるこちらの水道管は、災害時に避難所になる公民館に水を供給しているため50点と判定されました。
こうして町に張り巡らされている水道管に点数をつけ優先的に更新作業を行っています。
さらにミーティングでは水道料金の在り方についても検討を行ってきました。
参加者の中からは、町の水道を維持するためには、値上げもやむをえないという意見も寄せられています。
こうした住民参加によって何を諦め、何を守るのか。
議論を重ねる土壌が生まれています。

今の矢巾町のように、住民自身が何を諦め、何を維持するのか、優先順位を決めていくという、非常に透明性の高いやり方ですけれども、利用者としては、料金は高くないほうがいい、でも安全で、質は維持してほしい。
そして、自治体としてはなるべく財源を多く使いたくない。
こうした条件を満たすやり方っていうのは、本当にそれぞれ違ってくるんでしょうね?事情によって。
先ほど申し上げたように、水道事業は市町村ごとに運営、経営されています。
その地域の状況は千差万別なので、違いをいかに反映させながら、その地域地域に合った、最適なシステム、あるいは経営といったものを、どう選択していくのかということに尽きると思いますね。
これまではとにかく全部つないで、水道網を維持するという発想でしたけれども、具体的にはどんな選択肢がありますか?
例えば、規模を大きくして、一つにしたほうが効率的な場合もあります。
一方で、非常に起伏が激しいような、中山間地域の場合、水道の場合には、加圧して、水を、圧をかけて送水するんですけれども、そうするといったん上がった水は、また下がるんですね。
谷を下がっているときに、今度は圧がかけっぱなしになりますと、噴き上がってしまいますので、減圧しなければいけません。
そういうふうなことまでして、1つに統合することがいいのかどうかと。
それはまあ、時々の状況に応じて、選択、判断していく必要があるのだろうと思いますね。
そうすると人口密度が少なくなっているような集落や、自治体の場合は、どうするんですか?
その場合には、大規模一元的なシステムとは別に、集落単位の小規模なシステムを組み合わせていくということも非常に有効だと思います。
あるいはそのときに、住民の方々が、そうした水道の運営に携わっていただくと。
例えば、料金を自主徴収していただくとかですね、あるいは、メンテナンスの一部を住民の方が日常的な監視をしながら、関わっていただくということも、可能になると思いますね。
そうすることで、水道料金にかかるコストというものを抑えることもできる?
そのとおりだと思います。
条件に合った形で、身軽な、最適なシステムっていうものを選ぶ必要があるだろうと思います。
本当に、水道格差といったようなことが生じることがないよう、対応を考えなくちゃいけないわけですね。
おっしゃるとおりですね。
2014/10/17(金) 00:14〜00:40
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「押し寄せる老朽化 水道クライシス」[字][再]

破裂や漏水など年に2万6千件も発生する水道管事故。今、各自治体でその対応が緊急の課題になっている。どうすれば40年の耐用年数が切れる前に更新できるのかを考える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】作新学院大学教授…太田正,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】作新学院大学教授…太田正,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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