九州電力川内(せんだい)原発1、2号機が立地している鹿児島県薩摩川内市がきのう、再稼働に同意した。市議会の採決を受け、岩切秀雄市長も同意を表明。再稼働に至る地元の同意手続きが一つクリアされたことになる。

 だが、政府も電力会社も、これで地元の理解を得られたと考えるべきではない。

 原発再稼働に関して、地元の同意も自治体の範囲も法的な定めはない。伊藤祐一郎・鹿児島県知事は自らの判断で、知事、県議会、それに原発立地自治体の薩摩川内市長、同市議会と定めた。

 だが、もし過酷事故が起きれば、被害は立地自治体にとどまらない。福島第一原発を見れば明らかだ。同意を得る対象を立地自治体に限るべきではない。実際、周辺自治体は再稼働に必ずしも納得してはいない。

 原発から最短5・4キロのいちき串木野市や、市の北半分が30キロ圏内に入る日置市の議会は、再稼働の同意対象に自分たちの市も含めるよう求める意見書を可決した。

 30キロ圏に一部がかかる姶良(あいら)市議会も、7月に川内原発の再稼働に反対し、廃炉を求める意見書を可決。電源立地地域対策交付金や使用済み核燃料税が入ってくる立地自治体の議会に公正な判断ができるのか。そんな不信感が語られている。

 政府が同意自治体の範囲を地元の判断に丸投げしているために起きている問題だ。

 30キロ圏の5カ所で住民説明会が開かれたが、必ずしも理解が進んだとは言えない。県が説明対象を新たな規制基準に基づく審査に限ったため、避難計画の説明もなかった。会場では「再稼働を判断する材料は不十分」との声も上がった。住民にすれば当然である。

 川内原発の場合、巨大噴火の可能性や予兆観測について火山学者から異論が出るなど、不安が解消されたわけではない。

 避難計画の立案や実行は県と市町村にゆだねられている。県はきょう、避難計画を含む補足説明会を日置市で開くが、さらに機会を増やすべきだ。幅広い地元の人々の疑問や不安に正面から応える責任が、知事や県議会にはあるのではないか。

 今後、11月上旬にも鹿児島県議会で再稼働の是非を採決した後、伊藤知事が再稼働の是非を判断する。その際、周辺自治体や住民の意向をくみ上げる努力を重ねるべきだ。それこそが「3・11」後の政治と行政の責任だろう。再稼働の地元とは、どこなのか。川内原発でまず、明確に示してほしい。