ハートネットTV シリーズ 広島土砂災害(1)「被災者が見えない」 2014.10.15

8月20日に広島市で土砂災害が発生してから1か月半。
74人の命が奪われ4,500を超す住宅が被害を受けるなど災害の詳細が明らかになってきています。
災害直後避難所には2,300人を超す被災者がいましたが現在は50人を下回るまでに減っています。
自宅に戻れない人たちはそれぞれ仮住まいを見つけ避難所を後にしています。
しかし移り住んだ先になじめない高齢者が少なくありません。
住み慣れた所を離れ孤立を深めています。
「シリーズ広島土砂災害」。
第1回は自宅に戻れず避難生活を続ける被災者の現状をお伝えします。
こんばんは。
「ハートネットTV」です。
広島市で発生した土砂災害から1か月半がたちました。
被災者の方たちは今どうしているのか。
今日から2日間にわたって支援の手が届かなくなっている被災者の現状について考えていきます。
第1回は独り暮らしの高齢者や障害者の方たちの支援の在り方についてお伝えしていきます。
取材に当たった山本ディレクターです。
私は災害発生2日後から被災地に入ったんですが今回被害の大きかった県営住宅を取材しました。
ここは高齢者の方がとても多くて災害によって住めなくなってしまったためにばらばらに別の住居に今は生活をしている状況なんですがここの方々が支援を受けられているのか住民の方の様子がよく分からないような見えなくなっているような状況があります。
そうした次第に見えなくなってきている被災者の方たちの現状をまずご覧下さい。
(リポーター)山のあちらこちらの斜面が崩れています。
こちらの現場土砂は山裾の住宅街に大量に流れ込んでいます。
斜面に建つ9棟の県営緑丘住宅。
114世帯244人が入居していました。
午前3時過ぎ。
およそ40世帯の部屋に突然大量の土砂が押し寄せ2人が亡くなりました。
発生当日県営住宅の住民の多くは近くの小学校に避難しました。
その一人…障害のある息子と2人で避難所にやって来ました。
息子の…子どもの頃の交通事故が原因で脳の機能に障害があります。
ストレスがかかると感情をうまくコントロールできなくなります。
障害のある息子のためにもできるだけ早く家に戻りたい。
災害発生直後から藤森さんは県営住宅の自宅に足しげく通っています。
牛乳屋さんに電話かけないと…。
幸いにも藤森さんの部屋には土砂は入らず被害は全くありませんでした。
しかし県営住宅一帯に避難指示が出ていたため荷物を取りに戻る事しかできません。
災害発生から4日後の8月24日。
避難所となっていた小学校で被災者のための住宅説明会が開かれました。
藤森さんの姿もありました。
帰れるのかどうか分からないまま出席した県営住宅の住民たち。
次々と質問が飛び出しました。
あの人には分からん。
このままではいつまで避難所生活が続くか分からない。
藤森さんは公営住宅の空き部屋を申し込む事にしました。
被災者のために用意された公営住宅は2人以上の家族向け単身者向けそして障害者向けの3つに分かれていました。
全157戸のうち障害者向けの住宅は僅か6戸でした。
障害のある息子のためにはできるだけ環境を変えない方がいいと考え藤森さんはもとの家に近い障害者向け住宅を第3希望まで記入しました。
3日後。
広島市は入居者を決める抽選を行いました。
抽選は1部屋ずつ行われ午前10時半から夕方4時ごろまで5時間にわたって続きました。
当選者には電話で連絡が届く事になっていました。
抽選開始から5時間たっても藤森さんには連絡がありません。
(誠)ノイローゼなんだよ本当に!毎日!連絡を待っていられず市に問い合わせました。
はい…はい…はいすいません。
はいありがとうございました。
今調べてやったら。
藤森さんが申し込んだ障害者向け住宅は22倍もの倍率でした。
藤森さん親子はその後も避難所での生活を余儀なくされました。
9月半ば。
県は建物の安全性が確認できないとして当分の間県営住宅に戻る事を認めない方針を打ち出しました。
長年ここで暮らしてきた高齢者の多くは県営住宅を離れる事に戸惑いを感じていました。
住宅が建った当初から29年暮らしてきた…災害発生以来毎日県営住宅に通っています。
その度に住民たちのかつての様子が思い出されるといいます。
住民たちは住み心地のよい住宅にしようと花を植え丁寧に手入れをしていました。
かつての生活を取り戻す事は難しいと根角さんは感じています。
(すすり泣き)すいません。
すいません。
県営住宅を終の住みかにしようと考えていた…菅さんも住宅が建った当初からここの住人でした。
真鍋さんは菅さんのすぐ下の部屋に住んでいた同じ年の女性です。
土砂にのみ込まれ命を失いました。
菅さんは真鍋さんの最後の声が忘れられません。
そこまで行って…菅さんは親しいつきあいをしていた真鍋さんを助け出せなかった事を今も悔やみ続けています。
菅さんはここに来る度に真鍋さんに謝り続けています。
障害のある息子と避難所生活を続けていた藤森さんです。
お兄ちゃん早く来な。
9月に入って小学校で授業が再開される事になり藤森さんたちは別の避難所へ移される事になりました。
最初の抽選に外れてからその後2回にわたって住宅を申し込みましたが依然として決まらないままでした。
9月下旬。
(山本)こんにちは。
4回目の応募でようやく市が借り上げた民間住宅の空き部屋に入る事が決まりました。
避難所での生活が1か月に及び誠さんは調子の悪い日が続いていました。
(山本)何で疲れてるんですか?
(山本)結構いろんな所回ったりとか?すいません。
(山本)ありがとうございました。
どうもすいません。
しかしここに住めるのも半年とされています。
誠さんが環境に慣れた頃にはまた出ていかなくてはいけません。
親しい隣人を亡くした…菅さんは公営住宅の空き部屋に当選していました。
広島市の中心部にある県営の集合住宅です。
14階建てのアパートが3棟建っています。
それまでの生活環境と全く異なるため菅さんはなじめずにいました。
(エレベーターのアナウンス)「8階です」。
引っ越しは済ませたもののここにはほとんど来た事がありません。
菅さんはもとの住まいの近くに住む仲の良い友人の家に身を寄せていました。
この日は2週間ぶりの帰宅です。
(窓を開ける音)菅さんは今ある薬が手放せなくなっています。
この高層住宅に来る度に体中にじんましんが出るようになりました。
終の住みかと思っていた県営住宅を離れた菅さん。
近くには親しい友人が誰一人いません。
気持ちを落ち着かせようと好きな音楽を聴いても涙があふれてきます。
この部屋に独りでいると近所づきあいのあった県営住宅での暮らしや亡くなった真鍋さんの事が思い出されます。
夕方菅さんは荷造りを始めました。
(山本)これ今何されてるんですか?菅さんは広島市を離れ別の友人の家に身を寄せようとしていました。
災害発生から1か月半。
どこで生活を立て直していくのか見通しが立たないまま時間だけが過ぎています。
菅さん精神的なショックが大きいようで心配ですよね。
そうですね。
当選した公営住宅に菅さんは入居しているんですがここでもすごく食欲がないとかあとやっぱり話し相手が周りにいないという事をすごく菅さんおっしゃっているんですね。
こういうふうに孤立を深めていくという方は菅さんだけではなくて私が取材した中でもすごく心配な状態の方がいっぱいいらっしゃるんですがその中でも例えば災害のショックで認知機能が低下してしまった方や持病が悪化してしまった方あとこの1か月たってちょっとほっとしたのか体調が悪化しているような方というのもすごくいっぱいいらっしゃってすごく心配な状態です。
そうした菅さんをはじめとして県営住宅の住民の皆さんが置かれている現状を。
こちらです。
地域でまとまって移り住める住宅が用意されずに例えば親せきや友人の家それから公営住宅の空き部屋市が借り上げた民間アパートなどにばらばらになって住まざるをえないというのが現状です。
今回行政はまとまって1か所の場所に移り住むという事よりもとにかく早く住宅を用意するという事を優先させたためにこういう状態になってしまっているんですがその結果でやっぱりコミュニティーがなかなか維持できないなくなってしまうという事も起きていて被災者の方がどんどんどこにいるのか分からなくなっていく見えなくなっている状態があります。
スタジオにはもう一方お越し頂きました。
今回の広島土砂災害でも発生直後から現場に入られました日本福祉大学准教授の山本克彦さんです。
東日本大震災をはじめさまざまな被災地での支援活動もされています。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
この広島の現状を山本さんどうご覧になってますか?私も翌日から現地入りをして具体的には14日間現地に通ったんですが先ほどのVTRにあったあの時期もちょうどいろんな地域を歩いて回ったりもしたんです。
しかしながら先ほどのような課題があるという事は正直なところ見えていないという事がございました。
ちりぢりばらばらになってしまっていて本当は地域の皆さんと一緒に過ごしたいという気持ちもあると思うんですよね。
そうですね。
これまでのいろんな災害を見ても仮設住宅ですね。
仮設住宅というのは例えば学校のグラウンドであるとか空いてる土地を探して50とか100そういう単位で被災された方が引っ越しをされるんですが今回はちょっとそういう事がありませんでしたので仮設住宅のよさというのは生活そのものは大変な状況になりますが地域のご近所づきあいがそこでまた成り立つという事があるのでその辺りが少し心配されます。
ばらばらになってしまった事で男性も涙を流していましたしね。
やはりああいう様子を見ると改めて思うのはいかに人は地域のさまざまな関係の中で生活をされているかという事でその事が今回の様子ですともうそれぞれが個々別々な所へ行ってしまうのでご近所というつきあいがないつまりおうちを1つ同じように提供すればいいかというと決してそうじゃない。
その辺りが考えるべきところだと思います。
ばらばらになってしまった人たちの支援というのは何か始まっているんでしょうか?社会福祉協議会などが個別に訪ねていって支援をしようというのを検討しているんですが個人情報の壁もありなかなか把握できるような状態でないのが今の現状です。
そうすると支援しようと思ってももちろんできない訳ですから。
先ほどの様子ですと個々の多様な課題が出てくると思います。
そうするとこれまでの災害の様子からすると例えばつらさの中でアルコール依存になるとかあるいはご近所が知らない中で亡くなっていらっしゃるような孤独死。
そういった事が非常に心配されると思います。
ではどうしたらいいんでしょうか?地域の中で人が生活するというところからすると一つはお引っ越し先を決めるだけじゃなくて行き先の情報をしっかりと引っ越される方にお伝えする事ですね。
同時に受け入れる側もしっかりと態勢をとる事。
それから転居される場合にお引っ越しをされたあとにあまり時間を置かずに個別訪問するなりして「いかがですか?」という様子をお聞きする事が安心につながるんじゃないかというふうに思います。
もう一つはお引っ越しをされたあとの地域で人が集う場所ですね。
例えばサロンの活動であるとかそういった機会をいかに提供しているかそういった情報をしっかりとお伝えする事が課題になってくるんじゃないでしょうか。
一つお聞きしたいのは転居してから早く声をかける事のメリット大事さというのはどういったところにあるんでしょうか?先ほど見て分かるようにやはり行って全く環境が変わる事でかなり不安を感じられます。
そうするとその先私はどうなるんだろうという事でいろんな思いを巡らされますし先ほど以前の住んでいた場所に通って胸を押さえてご友人の事を思い出すような場面もありましたがああいった事が起こっていますので早めにお声がけしてとにかく安心して頂くという事ですね。
取材をしていて山本ディレクターはどんな事を感じてますか?今回菅さんや藤森さんという私が取材させて頂いた方はまだこういう形であっても人とつながっているような状態の方まだ見えている方と言ってもいいのかなと思います。
これからももっと深い所に入り込んでいった方々見えてない方々はきっともっといっぱいいらっしゃるのかなと考えていてそういう方が一刻も早く支援が受けられるようにして頂きたいなと考えています。
まだまだそういう人たちがいるという事を社会もみんなも共有する事が大事だと思うんですよね。
「シリーズ広島土砂災害」明日もお伝えします。
今日はどうもありがとうございました。
2014/10/15(水) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ 広島土砂災害(1)「被災者が見えない」[字][再]

広島土砂災害から1か月半。高齢者や障害者など、避難の際や避難所での生活に支援が必要な災害時要援護者はどのように行動したのかを見つめ、支援のあり方について考える。

詳細情報
番組内容
8月20日に広島市で発生した土砂災害から1か月半。ピーク時に2千人を超えていた避難者は数十人にまで減少し、被災者の姿が急速に見えなくなってきている。中でも、高齢者や障がい者など災害時に支援が必要な人たちへの対策は十分だったのかどうか。また、避難所から被災者用住宅に移った高齢者は、今、どのような問題を抱えているのか。地域を去ることを余儀なくされた人たちの姿を見つめ、災害時の支援のあり方について考える
出演者
【出演】日本福祉大学准教授…山本克彦,ディレクター…山本裕里子,【司会】山田賢治,河野多紀

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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