クローズアップ現代「防犯カメラの落とし穴〜相次ぐ誤認逮捕〜」 2014.10.14

全国に設置されたおよそ500万台の防犯カメラ。
今、その映像をきっかけにした誤認逮捕が相次いでいます。
今や犯罪の捜査に欠かせない防犯カメラの映像。
しかし映像による思い込みが誤認逮捕という深刻な事態を引き起こしています。
あなたも突然容疑者にされるかもしれない。
防犯カメラによる誤認逮捕を検証します。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
身に覚えのない犯罪の容疑者としてある日突然逮捕され警察署に連れて行かれて取り調べを受ける。
自分は関係ないと繰り返し主張しても決定的瞬間が防犯カメラの映像に映っていると言われ聞き入れてもらえないとなったらこれはまさに悪夢のような出来事です。
無実の人を誤って逮捕することはあってはならないことですがこの誤認逮捕が犯罪捜査の現場で重要度を増している防犯カメラの映像が原因で起きています。
街に設置された防犯カメラは全国におよそ500万台。
設置が始まった当初は監視カメラといわれプライバシー侵害するおそれがあるとして警戒感を持って受け止められていましたが今ではカメラに映ることなく街やそして駅を歩くことは難しいとさえいわれています。
実際、映像が有力な証拠となって容疑者や犯人逮捕につながるケースも少なくありません。
最近では神戸市で小学1年生の女の子が遺体で見つかった事件でも逮捕の手がかりになりました。
映像が有力な証拠になる一方でご覧のようにコンビニエンスストアやそしてパチンコ店など身近な場所で撮影された映像がきっかけとなって誤認逮捕が起きています。
警察が誤りに気が付いて数時間で釈放された例もありますが中には何十日も勾留された人もいます。
防犯カメラの映像がなぜ誤って解釈され誤認逮捕を引き起こすのかどうすれば防げるのか。
初めに誤認逮捕の実態からご覧ください。
パート従業員の41歳の女性です。
ことし3月全く身に覚えのない窃盗事件の容疑者として逮捕されました。
突然、警察署に連れていかれ否認したにもかかわらずほとんど取り合ってもらえなかったといいます。
事件は山口県のパチンコ店で起きました。
男性客が台の上に財布を置き忘れ何者かに盗まれたのです。
店の防犯カメラの1つがこの台を捉えていました。
男性客のすぐあとに座ったのが女性でした。
席に着くと台の上のほうを触り1分後に別の台に移動しました。
警察は、女性が財布をとって立ち去ったと判断しました。
防犯カメラにはどのように映っていたのか。
実際に私たちが現場で女性と同じ動きを再現しました。
防犯カメラからは距離があり手元まではしっかりと確認できませんでした。
警察は従業員への聞き込みなども行いましたが事件翌日、防犯カメラの映像を決め手として女性を逮捕。
自白を迫ったといいます。
逮捕から7日目の朝女性は突然、釈放されました。
警察のずさんな捜査による誤認逮捕が明らかになったのです。
店の隅にあるごみ箱の裏から盗まれた財布が見つかりそこにある防犯カメラに別の人物が財布を捨てる姿が映っていました。
警察が犯行現場の防犯カメラを改めて確認すると女性が席を離れた1時間20分後にその人物が財布をとる姿があり真犯人だと判明したのです。
警察は女性に対し防犯カメラの映像を一部しか見ていなかった。
上司によるチェックが不十分でずさんな捜査だったと謝罪しました。
今、全国で相次ぐ防犯カメラによる誤認逮捕。
背景に何があるのか。
現役の警察官は防犯カメラの映像は思い込みを招きやすいと証言します。
一方で映っているものすべてを確認するには限界があるといいます。
防犯カメラの映像をきっかけに逮捕されて300日間勾留されその後、無罪となったケースもあります。
大阪・泉大津市に住む佑輔さん。
おととし、強盗事件の容疑者として逮捕されました。
深夜コンビニエンスストアのレジから現金が奪われた事件。
犯行の様子を防犯カメラが捉えていました。
マスクで顔を隠した犯人が現金を奪って逃走。
警察は犯人が自動ドアに触れていることに注目します。
指紋を採取したところドアの外側から佑輔さんの指紋が見つかりました。
従業員が目元が似ていると証言したこともあり佑輔さんは逮捕・起訴されました。
佑輔さんは犯行時刻とほぼ同じころ自宅で友人と一緒にいたと主張。
これですね。
友人はそのときに撮った写真を警察に見せましたが取り合ってもらえなかったと言います。
一方、裁判で検察は専門家に映像の鑑定を依頼。
佑輔さんの写真と防犯カメラの画像を比較し類似度が高いと判定されました。
ところがその後新たな証拠が見つかります。
佑輔さんの母親が弁護士を通じて防犯カメラの映像を入手し事件当日から1週間さかのぼって確認しました。
すると、事件5日前の映像に佑輔さんが指紋が検出された場所を買い物の際に触っている様子が映っていたのです。
結局、裁判では自動ドアの指紋が事件当日についたとは断定できないという結論が出され佑輔さんは無罪となりました。
今夜は、犯罪学がご専門で、警察の捜査の実態にもお詳しい、常磐大学大学院教授、諸澤英道さんと、そして取材に当たりました、大阪放送局の荒川記者と共にお伝えしてまいります。
諸澤さん、いくら言っても映像の証拠があるから、やったんではないかと、繰り返し、やっていないと言っても聞き入れてもらえないっていうのは、本当に怖いことですよね?
そうですね。
これ、つまりやってないっていう証明って不可能なんですよね。
皆さんご存じのアリバイって話ありますよね。
その犯行の時間に別の場所でいたとか、別のことやってたとかって証明すればこっちはやってないっていう、唯一これだけなんですね。
この場合は、特に防犯カメラの問題、映像がありますので、この時間、そこにいたじゃないかっていうことで、やってないっていう証明は全くない。
その中で、この被疑者になってしまった人ってどういう心境かなと思うんですけども、実は犯罪者を更生させるためにはどうしたらいいかっていう研究があって、やっぱりショックを与えて、…させなければいけないというのが大体共通認識なんですが、最もショックを受けるのは、最初に逮捕され、勾留されたところだとよく分かってるんです。
恐らく、この誤認逮捕になった、いわゆる容疑者になってしまった方も、ものすごいショックを受けたろうし、全く孤独の、周りに誰もいない、捜査官しかいないところで、ついつい取り調べを受けて、そして証明しようにも全く方法がない。
大変お気の毒な状態になりましたよね。
そうですよね。
今のリポートでも、もし財布が出てこなかったら、自分はどうなってたんだろうかっていう、パチンコ店で窃盗の容疑をかけられた女性は言っていたわけですけれども、相当追い詰められた心境になっていらっしゃいましたか?
そうですね。
取材をしてみると、パチンコ店の例以外でも、やはり誤認逮捕された方の人の中には取り調べを受けるうちに、罪を認めそうになったという人もいました。
それだけ映像という強い証拠を突きつけるということは、一般の人は逃れようがない、追い込んでしまうということが強いんだというふうに感じました。
それに誤認逮捕された人を取材してみると、本当に皆さん、普通の一般の方なので、たとえ釈放されたとしても、精神的な負担がかかったり、なので、今も病院に通ったりですとか、仕事を休みがちだという人もいて、本当に深刻な事態だと感じましたし、誤って逮捕してしまうというと、本当取り返しのつかないダメージを与えてしまうということを感じました。
今のリポートを見ますと、きちんと捜査をしていれば、誤認逮捕は避けられたはずではないかと思えるんですけれども、実際に映像に本当の犯人が映っていたりとか、財布が見つかったりってことがあったわけですけれども、映像があるがゆえに、捜査の傾向がずさんになるということはあるんでしょうか?
そうですね、例えば、ほかの誤認逮捕をされた件ですと、現場に設置された防犯カメラのこの設定時刻がずれていたと、しかし警察がその時刻をきちんと確認しないままに、結果的に、犯行時刻とは違う時間にたまたま映ってた男性を逮捕したという例がありました。
本来、防犯カメラのこの設定時刻を確認するというのは、本当に基本中の基本というか、当たり前のことなんですけれども、そういった基本の部分を怠ってしまったという、こういうずさんなケースもあったんですね。
なぜそうなってしまうのかっていうことで、取材をしてみると、今、捜査現場ですと、例えば聞き込みとかしても周辺住民への協力を求めたとしても、面倒なことに関わりたくないですとかね、なかなか協力を得にくくなっているというふうにも聞きます。
そうしたことがある中で、防犯カメラというのは比較的、簡単に集められますし、客観的な証拠としては、引き込まれやすいのかなというふうに感じました。
しかし、そうは言っても、捜査に活用しているわりには、扱いがずさんになってしまっている例もあるということを感じます。
今の協力が得られにくいという背景があるということでしたけれども、その思い込みが起きやすい背景というのを、諸澤さんはどうご覧になりますか?
そうですね、従来は人の目撃証言みたいなことがかなり有力な証拠だったんですね。
ただ、こういうものって本当は人の認知に対して非常にあやふやな部分があって、決定的な証拠にならなかった。
ところが、映像みたいなものになるとですね、そうすると、なんとなくそれを信じてしまうところがあるんですね。
実は防犯カメラの映像っていうのは捜査の手がかり、端緒でしかないんだけれども、なんとなく決め手になり、証拠になっていくという問題があって、これはかなり国際的な問題にもなってるんですけども、やっぱり私たち日本における捜査を見ましても、かつては指紋であったり、血液型であったり、足紋であったりうんぬんっていう、そういう歴史たどってますよね、今はDNAですけどね。
その時々の最先端の技術で、それを全面的に信用してた。
裁判官でさえもそれを信用して決め手にしてたということがあります。
今は恐らくこういった映像が最先端の非常に重要な問題になってて、これ、もっと科学的、客観的証拠に高めるための努力をしなければいけないということじゃないかと思いますね。
だから、映像はそこにいたということは、証明するけれども。
そうですね。
その時間に、そこにいたという証明でしかなくて、やってるところが映ってれば、多少、証明になりますけれども、通常はそうじゃなくて、逃げていくところの映像が圧倒的に多いわけですね。
しかも今、荒川記者の話にもありましたように、時間の設定がいろいろ問題になって、正確じゃない防犯カメラが非常に多いんですよね。
さあ、今の話を伺いましても、捜査の向上やミスをなくすっていうことが、非常に必要だということが分かるんですけれども、その上で、最新の技術によって、防犯カメラの性能を最大限生かす取り組みや、あるいは映像を理解する能力を養うことで誤認逮捕を減らそうという動きも出てきています。
警察と連携して最新技術の開発に取り組んでいる大阪大学です。
ここでは歩き方に注目した研究を行っています。
歩幅や姿勢、腕の振り方など無意識に出る特徴を調べることで個人を識別しようという試みです。
こちらはコンビニ強盗を捉えた防犯カメラの映像です。
犯人はマスクで顔を隠しています。
このような場合でも犯人を取り違えないようにするのがねらいです。
まず防犯カメラの映像を取り込みシルエットにすることで歩き方の特徴だけを際立たせます。
そこに容疑者が歩いている画像を用意してシルエットを重ね合わせます。
2つの映像の動きが一致した所が白。
それ以外は赤と緑で表示され類似度が判定できます。
この技術を使えば、マスクで顔を隠している場合だけでなく遠くからの映像でも歩く姿が映っていれば分析可能でより精度の高い捜査につながると期待されています。
一方、3000万台の防犯カメラがあるといわれているアメリカでは新たな課題が生まれています。
撮影された条件によっては映像と現実の間にずれが生じるのです。
きっかけの一つとなったのがこの映像です。
赤ん坊を激しく揺さぶっている姿が防犯カメラに映っていたことでベビーシッターが児童虐待の疑いで逮捕され大きく報道されました。
しかし映像は事実と違っていました。
撮影したカメラの性能が低く画像が粗くなり実際はあやしていただけなのに激しい動きに見えたのです。
これはアメリカのテレビ局が行った実験です。
逮捕のきっかけになったビデオと同じ種類のカメラで撮影すると動きが雑に見えることが分かります。
女性は釈放されるまで逮捕から2年がかかり大きな問題になりました。
こうした事件を受けてアメリカでは各地から捜査員を集め映像を分析し判断するスペシャリストの養成を始めています。
映像が拡大されたりスピードが変わったりすることでもともとの映像が間違って見えていないか確認するノウハウを学びます。
さらに映像の管理にも力を入れています。
原則、押収した防犯カメラの映像はすべてデータ化し撮影した正確な日時や場所使用したカメラなどの情報とともに蓄積する取り組みを始めています。
一元的に管理し証拠として間違った使い方がされないように専門の担当者がチェックするのです。
防犯カメラの映像がまず事実ではないことを教えると。
そうなんですね。
コンピューターグラフィックが発達したこともありますしね、一方ではすごく古いカメラがある、画素が少ないというのがありますね。
他方ではものすごく高性能なのがありますね。
特に高性能であれば、手を加えることができる。
ですから、映像っていうのは、むしろ、大変あやふやというか、信用しちゃいけないものなんですね。
むしろ、そういうことについて専門的な知識があって、技術を持っている人が、これを担当しなければいけないんですけれども、今の日本っていうのは、ほぼすべての捜査官が、見て、判断していると。
通常、指紋だったり血液型鑑定だったりは、ちゃんと鑑識なり、専門の所に持っていって、専門の人が分析しますよね。
なぜか映像だと、誰でも警察であれば、それを誰でも見て判断できちゃうっていう、こういう状態がありますね。
録画の段階で、加工されていた場合、例えば体格が違って見えたり、先ほどのようにあやしているのか、虐待しているのかっていうことで見え方が全く違って見えると。
こうなると、これは本当に科学的捜査手段の一つだとして、専門家を養成する必要があるわけですか。
そうなんですね。
今、残念ながら日本の現状は、各警察本部ごとに取り組んでいると思うんですけども、やっぱり全国挙げて、警察を挙げて、こういう分野についての研究開発をどんどん進めなきゃいけない。
そしてまた、捜査のうえで使うルールというものですね、どういう条件をそろえていれば、それはある程度の証明力ができているんだっていう、そういうレベルのルールを作っていかなきゃいけないと思いますよね。
最低限時間の設定は合ってたのかとか、どういう映像なのかってことですけれども、さらにデジタル映像になってきますと、今度、それを加工することも可能になってきますよね?
今、世界的にはコンピューターに取り込んで、データを加工しちゃうと、それ、いい点もあるんですね。
そして例えばいい点としては、映像を立体化させていくと、距離感が出てきますね。
普通、2次元の平らな静止画像がよくありますよね、そうすると、あるものの問題の前に映っている、それは犯人だろうということになりますけれども、実はそれは1メートル離れてるってこともあるわけですよね。
それをちゃんと読み取らなきゃいけない。
そうすると、この犯罪捜査の有力な手段にはなってきましたけれども、どういうその心構えで使う必要がありますか?
だからそれだけに、怖いってことですね。
2014/10/14(火) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「防犯カメラの落とし穴〜相次ぐ誤認逮捕〜」[字]

いま、防犯カメラをきっかけにした「誤認逮捕」が相次いでいる。撮影された場所はコンビニエンスストアなど誰もが訪れる場所。なぜ誤認逮捕が起きるのか?実態に迫る。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】常磐大学大学院教授…諸澤英道,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】常磐大学大学院教授…諸澤英道,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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